45話 ビーチフラッグ対決開始!!


 玉里の唐突(最悪)な提案に、あんぐりする俺たち四人。


「俺と、同じテントで寝る権……?」


 俺が聞き返すと、玉里がコクコクと頷く。


「実はこのキャンプ場、まだオープン前ということもあって貸し出し用のテントは3人用と2人用、一つずつしかありません!」


 玉里は無い胸を張りながら言うと、俺たちは凍りつく。こんなに暑いのに。


「い、いい加減にしろよお前……」


 俺は怒り心頭に発しながら握り拳を作る。


 ん? でもよく考えたら……。


「待て。俺が言うのもなんだが、三人用のテントに女子四人で寝ればいいんじゃないのか?」

「三人用は、文字通り三人でギリギリだから物理的に無理!」


 玉里の暴論に俺たちはさらに唖然とする。


「じゃあわたしたち四人の中の誰かが、大狼と……一緒に寝るってこと?」


 真顔の佐伯姉妹の隣で、町張はあわあわと唇を震わせている。

 そりゃ、誰だって男の俺と一緒のテントとか、嫌だろ普通。


「なあ玉里、そんな事情ならお前が俺と寝ろよ。それならそこまで問題ないし」

「きゃっ♡古徳くんったら大胆っ♡」


 玉里が照れていると、隣から舌打ちが(2重で)聞こえる。


「あなたたちが乳繰り合うのを、このまま見過ごすことはできないわ」

「左に同じく……テントの中で古徳のテントを張るのは不健全」

「不健全なのはお前の発言だ。訂正しろ」

「Kotoku's tent is a●●●●」

「英語にしろとは言ってないし、それとなくエグい下ネタを言うな」

「とにかく……私たち姉妹はその勝負、受けさせてもらうわ」


 いつも喧嘩してる佐伯姉妹がこんな時だけ最悪の同調をしたことにより、玉里vs佐伯姉妹の構図が出来上がる。

 さながらボクシングのタイトル戦前日の記者会見場にいる気分だ。


「町張さん、あなたも委員長なら、このキャンプ場の風紀を守る義務があると思うのだけど」

「ふ、風紀って……。道藤さんはなんだかんだでしっかりしてるし、大狼と二人で寝ても、何も起こらないと思うけど」


「ちっちっちっ。町張ちゃんお子様だなぁ。あたしと古徳くんって、もう何回もシてるんだよ?」


「「「は?」」」


 女子三人が口をポカンと開く。

 また思わせぶりな言い方しやがって……。


「"お泊まり"の話な。それも幼稚園の頃の」

「……そっ! そう、だよね!」

「あれー、町張ちゃん何だと思ったのー?」

「え、えーっと」

「んんー?」


 玉里がウザったらしく町張に迫る。

 やめてやれよ。

 いくら優等生の町張だってそういう勘違いは——。


「ちゅ、ちゅう、の……ことかなって」


 うちの学年一位、普通にピュアだった。


 ✳︎✳︎


 今にもポロリしそうなマイクロビキニの玉里は、わざとポロリしようとしてるのか、やけに身体をフリフリしながらビーチフラッグの準備を進める。

 見たら負けだと思い、俺はパラソルの下でスマホに目を落とす。


 すると、佐伯姉妹がこちらに寄ってきた。


「大狼くん……あなたの貞操は私が守るから」

「はいはい」

「古徳……私応援して」

「はぁ……頑張れよ」


 佐伯姉妹は、パラソルの下にいる俺に(無駄な)意気込みを残してから、パラソルから離れて各々ストレッチを始めた。


 小刻みなジャンプで上下に揺れる佐伯の真っ白な胸と、前屈でたぷんと垂れる美代のデカい胸につい目がいってしまう。

 海外のスクールではどうだったか知らないが、もし美代と佐伯が日本の中学にいたら、水泳の授業とかで男子たちは揃って前屈みだっただろう。

 それくらい、この美人姉妹の破壊力はヤバい。


 俺だって立派な男だ。

 態度には死んでも出せないが、内心、男の性には逆らえない……。

 このまま目を離さないと、美代の下ネタ通りになっちまう……それは絶対にダメだ。

 俺は必死にスマホに視線を移し、頭の中の煩悩を消し去っていた。


「なんか、大変なことになっちゃったね」


 俺が一人で煩悩と戦っていると、町張がそっと俺の隣に座った。


「キャンプの件もそうだし、こんな不毛な勝負にまで巻き込んでごめんな、町張」

「いいよいいよっ、楽しいし」

「あの三人もお前くらい常識力があれば良かったんだが」


 バチバチしてる三人の方に目を向ける。


 1位は俺と一緒のテントに……。

 仮に町張と一緒になったとしても、絶対に何も起きないだろうし、美代の場合は夜通しゲームに付き合わされるだけだろう。

 あと玉里はイタズラ半分で言ってるだけで、9時になると子供みたいに寝るから大丈夫に決まってる。


 でももし、佐伯と寝ることになったら……。


「……どうなっちまうんだろ」

「大狼?」


「はーい! みんなー! ルール説明するよー」


 玉里はぴょんぴょんと体を上下に揺らしながら、またしてもポロリを狙っていた。

 見たら負け、見たら負け。


 俺は参加しないが、ルール説明には参加させられる。


「今から総当たり形式でビーチフラッグをやって、1位になった人は、『テントで古徳くんと寝れる』権! 2位の人には、『この後古徳くんと青春砂浜デート』権! 3位の人は『BBQで古徳くん独占』権! 4位はなんにもナシ!」

「全部罰ゲームだろ。青春砂浜とか、BBQ独占とか特に意味が分からん」


「それでは、ビーチフラッグ開始ぃぃぃいい!」


 こうして、総当たり形式の誰得ビーチフラッグ対決が始まった。


————————

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