41話 夏休みは終わらない!エンジョイ!(地獄)
「それで? 提案ってなんだよ」
俺は麦茶を入れてくると、ソファーでダラッとしている玉里の前にあるテーブルに、コップを置いた。
玉里の提案なんてロクなもんじゃないことは分かっている。
「そうっ! あたしの提案とは、これのことだー!」
玉里は無駄に叫びながら、またしてもサロペットの胸元にあるポケットから4つ折りの紙を取り出す。サロペット便利だな。
「じゃーん! あたしのお父さんが経営するキャンプ場に、古徳くんを誘ったげるー」
玉里は【海の見えるキャンプ場】と書かれたチラシを俺の方に向ける。
「海の見える、キャンプ……? って、お前の父さんまた新しい事業立ち上げたのか?」
「うんっ。ほんと忙しないよねー」
玉里の父親は、様々な事業を一手に担う敏腕起業家で、道藤家がハワイに行っていたのは、ハワイの方の事業を視察する目的もあったらしい。
ちなみに、玉里と俺の親同士に親交があるのは、無名だった頃の玉里の父親に、俺の父親が出資をした事がきっかけで、その経緯もあってか、玉里の父親は俺のことをえらく気に入ってるらしい。
玉里が俺にウザ絡みしてくるのも、父親の洗脳だと勝手に推察している。
「今ってキャンプ人気でしょー? それでお父さんがね、たまたま海の近い土地持ってたから、そこにキャンプ場を作ったらしいの」
「たまたまって……」
「それで、そのキャンプ場が来週からオープンだから、その前にあたしたちが貸し切りで使っていいんだって! ワイハに古徳くんを連れて行けなかったのが悔しくて、いじけてたらお父さんがオッケーしてくれたの!」
俺を道藤家に連れ込もうというこいつの父親の魂胆が見え見えなんだが……。
「そのキャンプって……俺とお前の、二人でか?」
「うんっ! 海に近いキャンプ場でぇ〜、あたしと古徳くん二人きり……もちろん夜は同じテントで……きゃっ♡」
「何も起こらないから安心しろ」
「テントが嫌なら海岸の岩陰でも……いいよ?」
玉里は照れくさそうに俺の股間へ問いかける。
このマセガキが。
「ねー、きっと楽しいからさ! キャンプ行こうよー!」
キャンプねぇ……。
仮に佐伯姉妹とだったら、四六時中肉焼く羽目になりそうだから絶対に嫌だが、玉里の場合は、日頃のウザい要素を取り除いたらストレスにはならないし……。
インドア派の俺とはいえ、たまには日光の下でのんびりしたい気持ちもある。
毎日クーラーの効いた部屋でゲームしたり本を読むだけの夏休みってのも、少し味気ない。
でも、玉里と二人ってのがネックというか。
「んん……」
「古徳くん、そんなに悩まなくても……。あ、もしかして! 佐伯ちゃんをキャンプに呼びたいとか?」
「断じて違う。神に誓って違う」
「絶対誘うなよー」
「誘わねえよ」
「誘ったらダメだぞー」
玉里は古くさいノリで、誘うように誘導してくるが、ただでさえソロキャンを希望したい俺があの激ヤバ肉食女子高生を呼ぶわけない。
「玉里、やっぱり俺」
「あ、ちなみに断ったらー、お父さんにある事ない事言っちゃうかもー」
「お前……ハナからそうやって脅すつもりだったな?」
「そんな事ないもーん、付き合ってくれない古徳くんが悪いんだもーん」
こいつ……。
俺は怒りで拳を作りながらもグッと我慢した。
「費用とかは全部お父さんが出してくれるし、ご飯も食べ放題、海にも行き放題なんだよ? 何の不満があるの?」
不満はお前だ、お前。
「古徳くんは昔からノリ悪いからなぁ。ワイハも来てくれなかったし」
「それは関係ないだろ」
「とにかく! 来るの来ないのどっちなの!」
「……はぁ。行きゃいいんだろ?」
「やったー!」
「その代わりお前の親父さんに変な事言うのはやめてくれ。うちの親にも伝わるし」
「うん! あたしの処女を古徳くんにあげたなんて言わないよっ」
行くと言って良かったと、心から思った瞬間だった。
✳︎✳︎
キャンプ当日。
キャンプ道具等々は、あっちで用意してくれるらしいので、俺は必要最低限のものをリュックに詰め込んで、家を出た。
どうやらキャンプ場へはバスで向かうらしいので、俺は集合時間にいつもの駅まできた……のだが。
「お、大狼、久しぶり」
町張……。
「古徳、遅い」
美代……。
そして——。
「あら大狼くん。遅かったじゃない」
「ど、どうして当たり前のように全員集合してんだよ……」
そして、楽しい(地獄の)サマーキャンプが始まろうとしていた。
—————————
次回からサマーキャンプ編に突入!
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星野星野デビュー作になりますので、何卒よろしくお願い致します!
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