夏休み編02

40話 玉里の帰還と謎の提案?


 佐伯のホームパーティから1週間。

 夏休みも中盤に差し掛かり、クーラーをガンガンに掛けながら自室のベッドに寝転がりながら本を読んでいると、電話がかかってくる。


『古徳……今日もミニモンやる』

「はぁ……」

『嫌そうにしない……次に嫌そうなこと言ったらしばく』

「はぁ……(2回目)」


 ホームパーティから1週間が経つのだが、毎晩19時になると、決まって美代から電話が掛かってくるようになった。

 最初の頃はそのうち飽きるだろうと思っていたが、飽きもせず毎日毎日……。


「お前さ、誰かとゲームやりたいなら、ゲームが好きな友達とか作れよ」

『古徳がいる』

「俺以外で」

『……嫌。友達なんて興味ない』

「どこぞの姉の真似すんな。どうせコミュ障なだけだろ」

『古徳に言われたくない』

「俺は友達を必要としていないだけだ」

『……嘘つき。姉さんとはイチャイチャしてる』


 またこいつは俺と佐伯がその手の関係だと思い込んでるのか。


「佐伯は……友達じゃない」

『……せふれ?』

「ちげーよ! 女子校の乙女がなんつーこと言ってんだ」

『……古徳のえっち』

「お前だお前!」


 相変わらずこいつのペースにはついていけねぇ……。


『古徳は、私とお友達なのが嫌?』

「そんなこと……聞くな」


 面と向かって嫌とか、誰が相手でも言えるわけねえだろ。


『ふふっ……やっぱり古徳はツンデレさん』

「そういうことじゃねえからな」


 こうして今夜も美代のゲームを手伝うのだった。


 ✳︎✳︎


 美代のゲームに夜遅くまで付き合わされ、翌日の昼までダラダラと寝ていたら、急に電話が鳴った。


 どうせ佐伯か美代のどちらかと思い、寝ぼけていた俺は「佐伯か? 美代か?」と質問を投げかけながら電話に出ると……。


『古徳くん?』


 と、玉里の声が聞こえ……って。


『佐伯ちゃんはわかるけど、美代って誰?』


 やっべ。


『ねぇ、またどこかであたし以外のオンナ作ったの? あたしの古徳くんなのに』

「おい、急にヤンデレるな。お前はそーいうのじゃないだろ」

『あ、バレたぁ? もー古徳くんったら、また新しい女の子と交友関係持つなんて、なかなかやりますなー』


 玉里は揶揄いながら『このハーレム男めー』と言ってくる。


「違う。美代って言うのは佐伯の妹で、ゲーム仲間というか」

『仲間……?』

「な、なんだよ」

『う、ううん。新しいお友達できて良かったね? それよりさ、今日ワイハのお土産渡しに行くから、ベッドの上も綺麗にしておいてねー』

「ベッドの意味が分からん」

『も、もー、オンナノコに言わせないでよっ♡』

「勝手にやましい関係にすんな」


 電話がポロンと切れる。

 玉里の冗談には付き合ってられないな。


 俺はベッドから身体を起こし、洗面台の前で寝癖を直しながら歯磨きを済ませると、食卓に置かれていたバターロールを咥えながらスマホを弄る。


 俺の夏休み、たこ焼きとかゲームとか、陰キャが極まってるよな。

 まぁ、陽キャなことがしたいわけではないから、全然嫌ではないが。


「平凡な日常、平穏な日々。これが大事なんだよな」


 しばらく1階のリビングで玉里を待っていると、インターホンが鳴った。


「はいはい。今行くー」


 玄関の鍵を開けた瞬間に外から、こんがりと日焼けしたロリっ子幼馴染が入ってくる。


「たっだいまー! 古徳くんっ」


 白の半袖トップスに、紺色のサロペットを着た玉里。

 見るからに夏休みを満喫しているようだ。


「で、お土産ってのは……?」


 見渡すが、玉里は両手に何も持っていない。


「お土産はぁ〜〜、わ・た・しっ」

「帰れ」

「もー、本当は喜んでるくせにー?」

「喜んでるわけねえだろ」

「うっほー、愛しの玉里たんが帰ってきたぜー、とりあえず脇ペロペロ……っていつもならなるのに」

「捏造満載の存在しない気持ち悪い記憶やめろ。俺はお前が想像するようなロリコンではない」

「ロリコンじゃん」

「断じて違う」


 玉里は「正直になればいいのに」と言いながら、玉里はサロペットの真ん中にある大きなポケットから外国製の菓子を取り出す。


「はいこれ。ワイハのチョコ」

「……い、意外と普通だな」

「なになにー? もしかして"ゴム"とかが良かった?」

「……なんか最近のお前さ、下ネタが多いよな」

「はい? ゴムが何のゴムかなんて言ってませんけどー?」


 うっぜぇ……。


「ま、ちょっと古徳くんが他の女の子と仲良さそうだから、嫉妬してる、かな?」

「はぁ……本当は嫉妬なんかしてねーくせに」

「どうかなー? でもね、古徳くんに友達が増えたのは、単純に嬉しいよ?」


 玉里はいつものあざとい笑顔ではなく、無邪気な笑顔をこちらに向けた。


「……あ、上がってくか? わざわざお土産渡しに来てくれたんだから、お茶でも」

「上がってく……? あ、今の笑顔で発情しちゃったー?」

「してねーよ」


 玉里は「おじゃましーす」と言って家に上がると、リビングのソファにだらっと腰掛ける。

「しーす」って何だよ。


「あ、そだそだ古徳くんっ、ちょっと提案があるんだけど」

「提案……?」


 嫌な予感がした。


—————————

もう40話かぁ……この作品書いてるの楽しすぎますね。

1万いいねありがとうございます!

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