39話 ホームパーティが終わっても
「おーいお前ら、いつまでもゲームやってないで片付けするぞ」
俺はたこ焼きで使った皿を流しに運びながら、テレビの前にいる佐伯姉妹を呼ぶ。
「私たちは何をすればいいのかしら」
「……食洗機くらいは使えるよな?」
「美代、あなた使える?」
「……使えぬ」
「はぁ……」
期待はしてなかったので、そこまで呆れてはいない。
皿とかは俺が片付けることにして、佐伯姉妹にはテーブル周りのゴミ捨てと机拭きを頼んだ。
こうして楽しかった(?)ホームパーティも終わり、窓の外を見るとすっかり日も暮れてきたので、そろそろお暇することを佐伯たちに伝えた……のだが。
「古徳……今夜は泊まってけば?」
「泊まらねえよ」
「そうよ美代。大狼くんは泊まらせないわ」
珍しく佐伯姉妹の思惑がすれ違う。
「美代、あなたが大狼くんに何をしようとしているのか分からないけど、泊まりは許さないわ」
「私は古徳とミニモンしたいだけ。他意はない」
理由はよく分からないが、名前呼びに変わってから、美代に懐かれてしまったようだ。
男の俺が佐伯たちの親のいないこの家に泊まるのは色々とまずいに決まってる。
「俺は泊まらねえし、もう帰るから」
「大狼くん、たこ焼き器は?」
「持って帰るのダルいし譲るよ。お母さん帰ってきたら、今度はお前らが作ってやれ」
「そうね、ありがたく使わせてもらうわ。でも悪いからお土産に……美代、アレを」
「ぎょい」
アレ?
美代が冷蔵庫を開けると、両手で何か四角いものを持ってきた。
「燻製ベーコンブロックよ。お家で食べて」
「最後まで肉なのかよ」
✳︎✳︎
佐伯宅を出て家路に就いた俺は、スマホに送られてきた佐伯のlimeを確認する。
『さえき:あなたのおかげでタコパができて楽しかったわ。私も素直に言っているのだからあなたも素直な感想を聞かせて』
「素直に言ってる」とか自分で言うか普通?
俺は『楽しかった。色々とありがとな』と返信して、帰路を歩いていたが、すると急に電話が鳴った。
『へーい古徳くーん!』
「おいパリピ野郎、お前の方はもう23時とかだろ。お子様はさっさと寝ろ」
『なんで起きてるのか、気になる?』
「気になら」
『ワイハのビーチにいたムキムキくんにね、ディスコ誘われちゃってー』
「…………」
『あ、今、NTR妄想したでしょ?』
「してねえよ」
『あたしの小さな身体が、ワイハのムキムキ男子にいいようにされて、オトナ♡にされちゃうところ、想像したくせにー』
旅行中でテンションが高いからかもしれないが、今日はいつもの三倍くらいウザいな。
「どうせ両親がバーにでも行っちゃって、お前だけホテルに残されたから、話し相手がいないんだろ?」
『やっぱ分かる? もー古徳くんったら、あたしのこと知りすぎー』
「勝手に言ってろ。俺、今日は色々あって疲れてるからもう切っていいか?」
『ったく冷たいなぁ。でもまあ、古徳くんがお疲れならもう電話切ろっかなー』
「あぁ、じゃあまた」
『でさでさ、ワイハのねー』
「話始めんなっての」
玉里との電話が終わったら、ちょうど家に帰ってきていた。
暇だからって俺なんかに電話してこなくてもいいのに。
俺は家に帰るなり、ベーコンを冷蔵庫に入れたら風呂に入って一日の疲れを癒す。
熱いシャワーを顔から浴びて、汗を流す。
結局、佐伯姉妹に振り回された一日だったな。
あれだけの美少女二人なら、例え揶揄われているとしても、男なら悪い気はしない。
あの二人がポンコツじゃなかったら……という条件付きだが。
「はぁ……」
深いため息を吐きながら風呂から出ると、着替えの近くに置いておいたスマホがブルブル震えている。
また玉里かと思ったら、まさかの美代だった。
「げ……マジか」
ゲームやってる時にlime交換したけど、早速電話してくるとは。
「もしもし?」
『古徳、ミニモンしよ』
「しねーよ」
『……イジワル言うなら、姉さんに古徳から胸揉まれたって言う』
「マジでやめろ。佐伯の不満マシンガンを喰らうのは御免だ」
『なら遊ぶ。一緒にボスバトル行こ』
家に帰ったら、一人になれると思ったのに……。
俺の孤独は、段々とこの姉妹によって崩されて行くのだった。
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イラストはなんと!人気イラストレーターの千種みのり先生に担当して頂ける事になりました!
星野星野デビュー作になりますので、何卒よろしくお願い致します!
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