34話 パーティの余興


 その後も、佐伯たちの食欲は止まることを知らない。

 3周目、4周目のたこ焼きもペロリと食す佐伯姉妹。


「たまには魚介も悪くないわね」

「……うん」


 魚介って……。まあ厳密にはそうなんだけど。

 さっき妹がデリバリーばっか食べてるとか言っていたが、母親が海外旅行に出かけてからデリバリーで肉ばっか食ってたのか?


「にしても、結構食ったな……」

「大狼くん、まだ食べたいのだけど」

「もうタコねえよ」

「……姉さん。ソーセージなら冷蔵庫にある」

「ならソーセージで5回戦と行きましょうか」

「お前らな……」


 そこからが凄かった。

 5、6週目になっても佐伯姉妹は平気な顔で、ひょいぱくとたこ焼き(ソーセージ入り)を食べる。

 いつしか俺は、自分から調理担当に回るようになり、黙々と食べる二人を眺めていた。


「いくら何でも食い過ぎだろ……」

「「…………」」


 佐伯たちは俺の作るたこ焼きを次から次へと口に入れる。


「お前ら、タコパなんだからもうちょっと楽しそうに食えないのか?」

「……食事中なのに、笑って話す必要は無いと思うのだけど」


 佐伯が言うと、妹もたこ焼きを頬張りながらこくりと頷いた。


「か、仮にもホームパーティをするつもりだったんだろ? それなのに、さっきからお通夜みたいに黙々と食いやがって」

「大狼は騒がしい方がいいの?」

「それは……嫌だが」

「……そういえば、ホームパーティの料理の傍らでやろうとしてたゲームがあるの。たこ焼きのせいで忘れていたけど」

「ゲーム?」

「美代、持ってきてちょうだい」

「ぎょい」


 妹が持って来たのは、手の形をしたよくあるビリビリ系グッズ。


「嘘発見器よ」

「急にそれっぽいの出てきたなおい」

「……大狼は、ツンデレさんって姉さんに聞いた。それで買ってきた」

「は?」


 俺が佐伯の方を睨むと、佐伯はスッと目を逸らした。


「俺のどこがツンデレなんだよ」

「……全部」

「また適当言いやがって」

「本当のことよ」

「このっ……」

「姉さんたち……仲良し」

「どこがだよ」


 俺が否定すると、佐伯はムスッとした顔をしながら、無言で俺の右手を掴んだ。


「さっさと置いて」

「い、嫌に決まってんだろ」

「置いてくれたら以前撮ったあなたの私服姿の写真、クラウドからも消してあげるから」

「交換条件になってねえ! ってか、あの写真まだあったのかよ!」

「……大狼はパーティぽいことしたいんでしょ? ウザいからさっさとやれ」


 妹は吐き捨てるように言う。

 まあ、こんなのちょっとした余興だ。

 ムキになってる方が、みっともないか。


「……わ、分かった。やってやろうじゃねえか」


 俺は右手を嘘発見器の手形に合わせるように置いた。


「じゃあ質問……大狼は私のこと好き?」

「はあ⁈」

「……大狼くん、答えなさい」


 よ、余興のはずが……なんだこの重たい空気。

 妹はニヤッと八重歯を見せ、佐伯はキュッと口を噤む。


「べ、別に……好きじゃない」


 俺がそう答えると、妹が嘘発見器のボタンを押し、デンドンデンドンと音楽が流れ出す。

 そして音楽が止まった瞬か——。


「いっ——!」


 電流が流れて、俺は咄嗟に手を離す。


「……ふーん。大狼、やっぱツンデレさん」

「こ、こんなの! 誰がやってもこうなるようになってんだよ」

「……姉さん、残念だったね」


 佐伯はジトっと妹の方を横目で見る。


「なにマウント取った気でいるのかしら? 別に大狼くんに好かれても1円の価値もないと思うのだけど?」

「羨ましいくせに」

「ふん……。どうせ大狼くんは、あなたのおっぱいが好きなだけよ」

「そうなの大狼?」

「俺は別に好きじゃないって言ってんだろ」

「……なら証明して」


 妹は無理矢理俺の右手を嘘発見器に押し付けてセットすると「大狼は私のおっぱいが好き?」と聞いてくる。


「だからちげーって————いっ! て、やっぱこれ、どれでも電気が走るようになってんだよ! 俺はマジでお前の胸なんか」

「……大狼サイアク。キモい、消えて」


 ああ……消えれるものなら消えたい。



—————————

【あとがき】

嘘だと言ってくれ!


オーバーラップWEB小説大賞銀賞受賞作の

『現役JKアイドルさんは暇人の俺に興味があるらしい。』が5月25日発売です!!!

🌸

イラストはなんと!人気イラストレーターの千種みのり先生に担当して頂ける事になりました!

星野星野デビュー作になりますので、何卒よろしくお願い致します!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る