33話 甘々でアツアツ


 佐伯が結構食べるのは知っていたが、妹も同じ胃袋だとは…………最悪だな。

 一発目のたこ焼き(24個)がいつの間にかプレートから消えていた。


「お、お前ら、せめて2個か3個は残してくれてもいいじゃないか。作ってばっかで食べれないって、あんまりだろ」


「「…………(もぐもぐ)」」


「だ、誰のおかげでたこ焼きが食べれたと思ってんだ?」


「「…………(もぐもぐ)」」


 口に物が入ってる時は、喋ってはいけない。

 これほどまでに、マナーを都合良く使われるとは……。


「もういい。こうなったら俺はもう作んねえ。勝手にしろ」

「……それは困る。大狼、口開けて」

「は? 口って? ……うむっ」


 俺が呆気に取られている隙に、妹が身を乗り出して、たこ焼きを俺の口の中に入れた。

 中がとろっとしたたこ焼きが、口の中に広がる。

 意外と美味っ————じゃなくて。


「きゅ、急に何すんだ妹っ!」

「そうよ美代、あなた何やってるのかしら」

「……さっきフーフーしたから、熱くない」

「そういう問題じゃないのだけど」


 佐伯はイラついた様子で、身体を震わせながら妹の方を睨む。


「あなた……なんだかんだ言って大狼くんに懐いてるじゃない。あーんなんて、嫌いな相手にはしないもの」

「それくらい……普通にする。もしかして姉さん、あーんは特別な人にしかしないと思った?」

「…………」


 佐伯は無言で眉間に皺を寄せると、こっちに怒りの目を向けて来る。


「な、なんだよその目は……もしかして、俺がたこ焼き貰ったから怒ってんのか? そんなに食い意地張るなよ」

「……違うのだけど」

「じゃ、じゃあなんだよ」

「…………ばか」


 佐伯はそう言って、俺がさっき机に置いたボウルを持つと、お玉で生地を流し込んだ。

 きゅ、急に利口になったなこいつ……。


「どんな風の吹き回しだ?」

「にっ、二度と美代があんな真似をしないように、ここからは交代でやる決まりを作るわ」


 勝手にこの空間にルールを生み出した佐伯。

 そもそも全部お前らが悪いと思うのは俺だけだろうか……?

 佐伯は慣れない手つきでお玉に生地を掬うと、プレートの上に流していく。


「佐伯、もっと生地入れたほうがいいぞ」

「うるさい……分かってるわ」


 佐伯はウザったらしく言いながらも、言われた通り足りない穴に生地を垂らす。


 食べる専門だった佐伯が自分から作るって言い出しただけ、良かったかもしれない。(理由はよく分からないが)


「じゃあ俺がタコ入れていくから、佐伯は上から生地をたのむ」

「え、ええ」


 俺たちがたこ焼きを作っていると、突然、妹が椅子から立ち上がり、スマホのカメラをこちらに向けた。


「おい妹。なぜ俺たちを撮る必要がある」

「……仲睦まじいのはいいこと」

「理由になってないし意味わからんのだが」


 妹はフラッシュまで焚いて、たこ焼きを作る俺たちを写真に収めた。


「お前の妹、色々と大丈夫か? 急に変な事するし……口悪いし」

「この子は名門の女子大附属高校に主席で入ったの……天才だから昔から空気が読めないの。許してあげて」

「ぴーす」


 妹は得意げな顔でピースしていた。

 こんなのが主席の女子校ってのもイメージ悪いな。


「ただの口悪女のくせに……」

「あ? ●●●●●●●ぞ」

「伏字必須のワードを出すな。口が悪いにも程があるだろ」

「……大狼、やっぱ嫌い」

「はいはい。じゃあたこ焼きが終わったら、さっさと帰る」

「……ダメ。ミニモンは教えて」


 言うと思った。



—————————

【あとがき】

佐伯ィィィィッ。


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🌸

イラストはなんと!人気イラストレーターの千種みのり先生に担当して頂ける事になりました!

星野星野デビュー作になりますので、何卒よろしくお願い致します!

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