32話 タコパ開始ぃぃぃ!!!
生地作りすらまともにできない姉妹に手を焼いたが、俺の指導もあって、二人は生地を作れるようになった。
生地の作り方から教えることになるとは……小学生の調理実習かよ。
「……意外と、簡単だったわね」
「……うん。簡単」
生地を作っただけでイキる佐伯姉妹。
あのまま俺が長電話してたらどうなったことやら。
てかその前に、作り方分からないならネットで調べるとか、袋の裏側に書いてある作り方を見るとかして欲しいものだが、佐伯の場合『説明書には興味ないから』とか言うんだろうな。
永遠にボウルの中の粉を木べらでグルグルしてる佐伯姉妹を想像したら、滑稽で少し笑えてくる。
「大狼くん、何を笑っているのかしら」
「……な、なんでも、ねえ」
あんまりバカにすると、佐伯がキレそうだからやめとくか。
「ねえ大狼……生地できたけど、この後は?」
「そうだな。タコの方は生地作ってる間にキッチンで切っといたし、そろそろたこ焼き機の方を準備するか」
「……やっとたこ焼き食べれる?」
「あ、ああ」
さっきまでだるそうな目をしていた妹は、急にぱっちりと目を開き、口元を緩ませる。
どんだけ、たこ焼き食べたかったんだよこいつ。
俺はさっき鈍☆器で買ってきたたこ焼き機を食卓に置いて準備を進める。
俺が準備をする間に、佐伯姉妹には皿の用意させて、たこぼうずの作り方も教えておいた。
そしてたこ焼き機のセッティングが完了すると、佐伯たちの方も終わったらしい。
「たこ焼き粉をいじくり回していた時はどうなるかと思ったが、なんとか形になったな」
「「あれはボケ」」
「…………はいはい」
俺はたこぼうずで油を敷いて、スイッチをつける。
俺とは反対側に並んで座る佐伯姉妹。
まだ生地も投入してないってのに、流しそうめんで箸を構える
「大狼くん、早くしなさい」
「大狼はやく……姉さんには負けられない」
どうやらこの姉妹はタコパを早食い競争か何かだと思っているらしい。
俺は呆れながらお玉でボウルの中の生地をたこ焼き機に垂らしていく。
じゅわぁー、と音を立て、プツプツしながら生地が焼けていく。
「佐伯、タコ取ってくれ」
「ええ」
佐伯からタコの入ったボウルを受け取り、手際よくタコを入れていくと、さらに上から生地を流し込む。
そこからしばし、休憩しながら、頃合いを見てひっくり返していたのだが……。
「「…………」」
佐伯姉妹がひっくり返す様子は無い。
どうやら、食べる担当らしい。
佐伯はこの前の焼肉でもそうだったから容易に想像できたが、妹まで同じとは。
「はぁ……妹は違うと思ったんだが」
「勝手に期待して勝手に失望すんなよ」
また口が悪くなる妹。
この姉妹、興味があることとない事の温度差がヤバすぎる。
将来この姉妹を養う旦那は苦労することだろう……。
✳︎✳︎
「……お、美味しい」
「悪く無いわね大狼くん。少しだけ見直したわ」
「別に嬉しかねえ」
たこ焼きが完成すると、佐伯姉妹は待たされた分、ものすごい勢いでたこ焼きを食べ始めた。
面倒な準備ばかりだったが……こうやって家でたこ焼きするのも悪く無いな。
…………いや、なに楽しくなってんだよ俺。
最近の俺は、ほんとどうかしてる。
仲良くしすぎたら、その後面倒になるだけ。
だから俺は、ずっと一人でいるのを望んでいた。
実際、今日一日何度も帰りたいと思ったし、面倒だった……はず、なんだが。
「ちょっと大狼くん? さっさと次の生地を入れてもらえるかしら?」
「お、おう」
こんなの、面倒なはずなのに。
俺はずっと、こんな馴れ合いが嫌いだったはず、なのに……。
「大狼、さっさとして」
「え……あ、ああすまん」
「珍しいわね。あなたが考えごとなんて」
変に居心地よく感じてしまうのは、佐伯が他の人間と違って基本冷めてるから、なのかもしれない。
こうしてタコパしてても、黙々と食べてるし。
俺と佐伯って……気が合う、のか?
い、いや、それはないだろ——って。
「考え事しててスルーしてたがお前ら食うの速すぎだろ! 一発目の24個、もう全部無くなってんじゃねえか!」
目の前の美人姉妹は、クールな顔してリスみたいに頬を膨らませていた。
この欲張り姉妹め……俺にも一個寄越せよ。
こうしてたこ焼きを奪い合う戦いが始まったのだった(タコパとは一体……?)。
—————————
【あとがき】
明日18時更新になるかもです。
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イラストはなんと!人気イラストレーターの千種みのり先生に担当して頂ける事になりました!
星野星野デビュー作になりますので、何卒よろしくお願い致します!
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