30話 タコパ準備完了?


 スーパーで肉ばかりを買おうとする(アホ)姉妹の面倒を見るのに疲れながらも、なんとかたこ焼きの材料を購入できた。


 これがまだ準備段階だと思うと、ストレスで頭を掻きむしりたくなる衝動に駆られる。


 落ち着け俺……まだ買い物は終わってないんだぞ。


 俺は怒りをグッと抑えて、この近くでたこ焼き機が売ってそうな場所を探し、雑貨屋の【鈍☆器】という店に立ち寄った。


 お馴染みのテーマソングが流れる店内で、美人姉妹(問題児)を連れて歩く。


「……ねえ大狼くん、たこ焼きって専用の機械が必要なの? フライパンじゃ駄目なのかしら」

「そりゃそうだろ。普通のフライパンで、どうやってあの球体を作るんだ」

「……根性、かしら。こう手で丸めて」

「急に知性0になるな」

「……今の、ボケたつもりだったのだけど」

「ボケだったのかよ……お前のことだから本気で言ってると思った」


 そう言ったら、佐伯は無言で俺の腕をつねり、そっぽを向いた。

 あー、どうやら機嫌を損ねたらしい。


「お前の姉、色々と大丈夫か?」

「……夫婦漫才めおとまんざい

「は?」

「したかったんじゃないの?」

「い、意味が分からないし、俺と佐伯はお前が思ってるような懇ろな関係じゃない」

「……ちっ、陰キャのくせに贅沢言ってんじゃねえよ」

「急に毒を吐くな」


 不貞腐れる佐伯姉妹を連れて、鈍☆器の中を見て回る。

 そして、パーティグッズとかが集まってるいかにもなコーナーに、たこ焼き機があった。


「食材代は佐伯たちに出して貰ったし、この機械は俺が買うとしよう」

「え、わたしたちが招待したんだから、別にいいのに……大狼、カッコつけてる?」

「つけてねーよ」

「美代。大狼くんはそういう男なの、お言葉に甘えましょう?」


 だからなんでいつも佐伯は俺の理解者面してんだよ……。

 知り合ってまだ1ヶ月くらいだってのに。

 俺は買い物袋を佐伯姉妹に渡して、両手サイズのたこ焼き機を購入する。


「これでタコパの準備は整ったな……そういえば、聞くの忘れてたが、家に親御さんとかいないのか?」

「父親はずっと海外……普段は姉さんとわたし、母親の三人で住んでるけど、母親は夏休みだから父親の所に行った」

「へぇ……母親は行ったのに、なんでお前たちは行かなかったんだ?」


「「…………」」


 俺の質問と同時に睨み合いを始める二人。

 なんだなんだ? また姉妹喧嘩か?


「実は姉さんが——」

「違うわ大狼くん。美代が夏休みは部屋でミニモンをずっとやりたいって言うからっ」

「ミニモン?」

「ちょっと姉さん……やめて」


 ミニモンとは育成したモンスター同士をフルオートで戦わせる、全世界で人気の探索型育成RPG。基本一人でやり込めることもあり、実は俺も、かなりやりこんでいる。


「お前、ミニモンやるのか?」

「……やる、けど。何? 子供っぽいってバカにしてんの?」

「別にバカにはしてない。俺もミニモンやるし」

「へ? ……お、大狼も、ミニモンやるの?」

「おう」

「厳選とかする?」

「まあな。これでもネット対戦に潜ってるし」

「……っ!」


 美代は、急に俺の服をグイグイ引っ張って来る。


「色々教えて……ミニモン強くなりたい」


 謎の共鳴。

 まさかヤンキー気質の妹にこんな趣味があったとは。


「待ちなさい美代……なに一人で盛り上がってるのかしら」

「別に、盛り上がってないし」

「それと大狼くん。あなたもあなたで急に新しい趣味を出すのは卑怯だと思うわ」

「卑怯って」

「わ、私にも……ミニモンを教えなさい」


 佐伯はもじもじしながら呟く。


「前に姉さんはゲーム興味ないって言った」

「気が変わったの」

「そういう時だけ気が変わるのずるい」

「あなたこそ、今日は協力するとか言って横取りしようとしてたわ」

「してねーしっ、こ、こんな陰キャと手も繋ぎたくない」

「そんなこと言うならおとなしくして」


「あーあー、もう分かったから喧嘩すんなって」


 もうダメだ。こいつら顔が良くて胸ばっかデカいだけで、ほぼガキの面倒見てるのと変わらん。


「タコパの後で教えてやるから、さっさとお前らのマンション行くぞ」


 二人は同時にこくりと頷く。

 こういう所は双子なんだよな……。


 そして、ついに狂乱タコパが始まる。



——————

【あとがき】

オーバーラップWEB小説大賞銀賞受賞作の

『現役JKアイドルさんは暇人の俺に興味があるらしい。』が5月25日発売です!!!

🌸

イラストはなんと!人気イラストレーターの千種みのり先生に担当して頂ける事になりました!

星野星野デビュー作になりますので、何卒よろしくお願い致します!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る