28話 夏休み・佐伯姉妹と一緒に〇〇


 待ち合わせ場所である駅前で、汗をかきながら佐伯の妹を待っていると、俺の前に現れたのは——まさかの"佐伯姉妹"だった。


 妹はこの前見かけた時と同じくショートヘアで見るからに気だるそうな目をしており、白の半袖カットソーの上につなぎのようなベージュのオールインワンを着ている。


 その隣の佐伯は、オーバーサイズの白Tに黒スキニーというシンプルな服装で、黒のキャップと小型のバッグを肩に掛けていた。


 "見た目だけなら"ただの美人姉妹なんだが、中身を知ってるとそう見えない。

 こいつら捻くれ美人に口悪美人だもんな。


 どうして姉妹で待ち合わせ場所に来たのかも分からないが、昨日の電話では妹が俺を呼び出したはず。


「おい佐伯妹さえきいもうと、これはどういうことだ?」

「……私は美代みしろ

「え?」

「佐伯妹って呼ばないで。私のことは、美代って呼べ」


 こいつも佐伯と同じで偉そうだな……。


「じゃあみし——」

「待ちなさい。美代のことを下の名前で呼ぶ必要は無いと思うわ? 佐伯妹でも伝わるはずよ」

「……姉さん、そういうのクソめんどい」

「あなたはカレのことキメェ陰キャとか言ってたのに、急に親密にならないで貰える? カレはお友達なの」

「友達? それって姉さんの一方通行なんじゃないの?」

「はあ?」

「おいお前ら……来て早々、しょうもない姉妹喧嘩始めんなよ」


「「…………」」


 急に意味のわからない喧嘩を始めた佐伯と美代を落ち着かせる。

 それでも二人は静かな睨み合いを続けていた。

 やべえ……もう帰りたい。

 この姉妹と一緒にいたらストレスで死ぬかもしれない。


「それで俺を呼び出した理由は? お前の雑用か? それともパシリか?」

「私はヤンキーじゃない」

「あーはいはい。分かったから、呼び出した理由を教えろ」

「それは——姉さんから」


 佐伯から?

 美代が佐伯の服を引っ張る。


「今日は大狼くんを……我が家の"ホームパーティ"に呼んであげようと思っただけよ」

「ほ、ほーむパーティ?」

「海外だとよくやる」

「そういやお前たち帰国子女だったな」

「姉さんがホームパーティに誰かを呼ぶのは初めて。光栄に思え」


 全く嬉しく無いんだが……。


「それならわざわざ駅前集合じゃなくて、佐伯のマンションに呼んでくれれば良かっただろ」

「これからホームパーティの準備をするために、スーパーへ行くの」

「今から準備? あんまり詳しくないが、この手のパーティって客人をもてなしてくれるものなんじゃ……」

「働かざる者食うべからず……大狼も手伝って」

「ええ……」


 美代は俺にエコバッグを押し付けてくる。


 こうして俺は佐伯姉妹のホームパーティに(半強制的に)参加させられるのだった。





―――――――――――――

【あとがき】

次回、狂乱のホームパーティ⁈


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