22話 文化祭打ち上げ


 大狼くんと話しながら登校していると、背後から「古徳くーん」という声が聞こえて来る。

 噂をすれば何とやら、道藤さんが後ろから私たちの間に割って入って来た。


「おっはよー」

「玉里……朝からうるせーぞ」

「ごめんごめん。あ、佐伯ちゃんもおはー」

「……おはよう」


 私がそう答えると、大狼くんが意外そうな顔で見て来た。

 大方、私が道藤さんとも話してるから驚いたのだろう。


 大狼くんったら、自分だけが私と話してる優越感にでも浸っていたのかしら? 可愛い所あるじゃない。


「ねえねえ古徳くんっ、昨日の自撮り見てくれた? 可愛かったよねー」

「……別に」

「えー! 正直に言って言って言ってー」


 ふふっ、残念ね道藤さん。私はもう彼に褒められたわ。

 ……と心中、私の方が優越感に浸ってしまう。


「あれ? なんか佐伯ちゃん朝からご機嫌だね?」

「別に……そんな事は無いのだけど」

「うっそだー。あーもしかして、古徳くんと一緒に登校してるからご機嫌なの?」

「は? あり得ないわ」


 私がキツく反応すると、なぜか大狼くんが安堵している。

 またムカつく反応して……どれだけ私がバスが来るのを待ったのか分かってないんだから。


「二人ってさー、文化祭から急に仲良くなってない? あたしが来る前からなんか距離が近かったしー」


 そう言われて私と大狼くんは肩をピクッと反応させる。


「……付き合ってる、とか」

「そんなわけないだろ」

「でもでも、孤独ぼっちの古徳くんと孤高の美女の佐伯ちゃんって意外とお似合いだしー」


 へ、へえ……道藤さんも、たまには良い事言うじゃない。


「お似合いなわけねえだろ。見当違いも甚だしい」


 見当違いはあなたよ、あ・な・た。

 あんな自撮り送ったんだから、少しは気づいて欲しいのだけど……。


 私は眉を顰めていると、道藤さんがまじまじとこちらを見つめて来る。


「……あー、なるほどぉ?」


 と、道藤さんは私の方を見て大狼くんには聞こえないくらいの声で呟く。


「古徳くんさぁ、昨日の打ち上げ途中で抜け出したでしょ?」

「そう、だが」

「佐伯ちゃんに関してはすっぽかしたよね?」

「え……ええ。そうね」

「……にしし。じゃあ、決まりっ!」

「決まり? おい玉里、何一人で言って」


 大狼くんが道藤さんに訊ねようとした時、道藤さんはバッグの中をゴソゴソと漁り、一枚のチラシのようなものを取り出す。


「文化祭の打ち上げも兼ねてここ行こっ!」


「「は?」」


 ✳︎✳︎


 ——放課後。


 玉里から渡されたチラシには、【期間限定! 高校生までのお客様が今だけ1000円食べ放題!】の文字があった。

 珍しく意見が合い、バックれようとした俺と佐伯だったが、放課後になると玉里に捕まってしまい、連行されるように店へ。


「さあじゃんじゃん焼こー!」


 普通、女子たちが行きそうな打ち上げと言ったら、スイーツバイキングとかカラオケとかだと思ったのだが。


「焼肉ってお前……」


 玉里によって集められた、俺、佐伯、そして町張。

 町張もあの打ち上げから抜け出したかったのか、佐伯や俺と同様に、昨日の放課後いつの間にかクラスから消えていたらしく、玉里に呼ばれたそうだ。


 4人掛けの席に俺と玉里、反対側に町張と佐伯が座っており、俺の前に座るのは佐伯。


「町張悪いな。玉里の思いつきに付き合わせちまって」

「構わないよ大狼。わたし焼くの好きだし」


 町張はトングをクイクイッとする。

 町張の性格的に、食べるより焼く方が好きなタイプか。


「……町張さん、そのお肉はまだひっくり返すには早いと思うわ」

「は、はいっ」


 さっきからキャベツ食べてばっかの佐伯が肉の方に目を落としながら偉そうに言う。

 なんか嫁と姑の確執みたいで見るに堪えんな。


「自分の肉くらい自分で育てろよ」

「…………」

「なんで無言になるんだよ」

「……なら、あなたが育ててくれる?」

「嫌に決まってんだろ」


 佐伯は目を細めながら、町張から貰った肉を食べていた。

 焼くのには興味が無いくせに、食べるのには興味がある、って言いたいのか?


 ほんと、こいつはいつもいつも……。


「古徳くんっ、こっちのお肉あげる〜」


 玉里が下に手を添えながら、箸で俺の口元に肉を運んで来る。


「はい、あーん」

「おい。そういうのはやめろって昔から何度も言って」

「あー、肉汁落ちちゃうー、はやくはやくー」


 玉里はそう煽りながら、肉をグイッと押し付けてくるので、仕方なくそれを食べた。


 佐伯と町張の前だってのに憚りもなくこいつは……。

 佐伯と町張が俺の方をじっと見つめている。


「……えっと、道藤さんと大狼ってそーいう関係」

「なわけねーだろ」

「違うよ町張ちゃん! 古徳くんが一方的にあたしの事好きなだけだよ?」

「だよ? じゃねえ。断じて違う」


 俺の前に座る佐伯が、俺の脛をツンっと軽く蹴って来た。


「……この、ロリコン」


 言うと思った。

 玉里といい、佐伯といい、マジでめんどくさい……。


 焼肉打ち上げはまだ続く————。


―――――――――――――

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