20話 limeに送られて来たのは佐伯の〇〇


「文化祭、お疲れ様でしたー!」


「「「「「うぇーい!!」」」」」


 文化祭が閉幕し、放課後にクラスで行われた打ち上げ。


 片付けしながら文化祭で余った飲み物や食材を適当に消費する目的で始まったが、一気に陽キャたちのパーティに変わりクラス中大騒ぎになっていた。

 どのクラスも同じような事をやっているらしく、18時を過ぎてもほとんどのクラスの電気が消えてなかった。


「…………帰るか」


 俺は隙を見てクラスから逃げ出す準備を進める。

 ちなみに、佐伯の姿は打ち上げの前から無くなっており、こうなるのを察して逃げたらしい。


「おーう大狼ぃ! お疲れー」


 いつも通り調子に乗ってる原田がジュースを片手に俺に声をかけて来た。


「悪いな原田。俺はもう帰る」

「マジかよ。文化祭の主役が居なくなったら寂しいぜ」


 俺は原田を無視してスクールバッグを肩に掛けた。


「片付けの方、頼んだぞ」

「おう……っあ、そうだ大狼」

「まだ何かあるのか?」

「佐伯さんにさぁ、アレを没収されちまって」

「アレ?」

「メイド服だよ。結構高かったから、返して欲しいんだけどさ、お前からも頼んでくれねーか?」


 佐伯のやつ、いつの間に没収なんて……。

 そういやクラスの様子を見に行った時、やけに帰りが遅いと思ったが、その時か?


「分かった。俺の方から言っておく」

「ありがとう大狼! マジサンクス!」


 原田の軽いお礼を適当に聞き流して、俺は下校するのだった。


 ✳︎✳︎


「ただいま」


 俺は自宅に帰ると、風呂に直行し、ゆったり湯船で文化祭の疲れを癒してから、自室に戻る。


 部屋に戻ってスマホを弄っていると、町張と玉里からlimeが入っていた。


『町張:文化祭おつかれ!売り上げとかをまとめた書類は明日以降、文化祭実行委員長に届けて欲しくて』


 文化祭終わったばかりだってのに、相変わらず町張はしっかりしてるな。

 町張から送られて来た業務連絡に『了解』と返しておいた。


 次に後回しにしていた玉里のlimeを開くと、案の定、加工しまくりのあざとい自撮りが10枚も送られて来ていた。


『玉里:古徳くんが大好きなあたしの自撮り写真集♡変な事に使ったら、め! だからね? するなよ〜するんじゃないぞ〜』


 俺は『しねーよ』とだけ送って、スマホを閉じた。

 玉里のウザいくらいにあざとい性格は、直して欲しいものだが……昔からこんなだし、直らないのだろう。

 クラスには玉里を姫のように扱うグループがあるようだが、少なくとも俺はその手の感情は無い。


 ただ、玉里の優しさみたいなものも、本当は分かっている。

 だから、あまり突き放すような事はしない。


「はあ……。なんでこう、俺の周りには変人ばかり」


 その時だ。


 ポロンっという通知音で、再びスマホが光る。

 玉里から追加で写真が送られて来たのかと思いきや、佐伯からのlimeだった。


 佐伯も返信しないと面倒だからな……さっさと済ませないと……ん?


『さえき から画像が送られて来ています』


 が、画像だと……?

 いつもなら『お疲れ様』とかなのに。


 俺は疑問に思いながらトークを開く。


 するとそこには……姿見の方にスマホのカメラを構えて立ち膝をする佐伯の写真が——って、はあ⁈


 なぜか原田が持参していたあのエロコスプレ風の黒と白のメイド服を着ており、胸元には綺麗なハートの穴がある。


「なんだ、よ、これは……!」


 普段なら絶対に見ることのできない、佐伯雪音の程よく育った胸元が、露出している。

 白い肌で艶があって、見るからに柔らかそうで……。


「……佐伯って、こんなに、大きかったのか」


 さらに、右手に持ったスマホでちょうど目が隠されているのも、何かイケナイ事をしているようで悶々としてしまうし、反対の手は、その魅惑の谷間に添えられているので、必然的にそっち目が行ってしまう。

 あとギリギリ下に写る太腿もい、意外と——。


「って……何をさっきから脳内で力説しているんだ俺は!!」


 生唾を飲み、呼吸が荒くなる。

 玉里のあざとさとは比べ物にならないくらいに、佐伯の破壊力は凄まじい。色んな意味で。

 ね、狙ってこんな事、やってんのか……?

 画像だけで他に何のlimeも来ない。

 

「何考えてんだか、本当に分からん……」


 その後も悶々とし続けてしまい、男のさがには逆らえない俺だった。




―――――――――――――

【あとがき】

20話まで来ました、ありがとうございます!


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