18話 大狼くんは……誰にも譲らない
大狼くんと、お友達になれた……。
大狼くんとお友達になってからずっと、私は彼に顔を見られないようにして、ニヤけそうになるのを必死に堪える。
お友達になるだけなのに、こんな緊張するだなんて……。
大狼くん、孤独が好きな割に私とお友達になってくれるなんて……意外とツンデレなのね。
「佐伯。そろそろ人も少なくなって来たし、一旦クラスの様子を見て来てもいいか?」
「ええ、別に構わな——」
待って。これはよく考えたら……。
大狼くんが様子見で教室へ行く→道藤さんや町張さんのメイド服を見て興奮する→良からぬ展開に。
……あ、あり得るわね。
「私が行くわ」
「え、佐伯が、行ってくれるのか?」
「……有難いと思いなさい」
「お……おう」
大狼くんは、素っ頓狂な顔で答える。
私、何でこんなにムキになっているのかしら。
できれば彼には、町張さんや道藤さんと仲良くして欲しく無い。
そ、そもそも大狼くんは、孤独が好きとか言っているのに女癖が悪いのよ。
大狼くんへの文句を頭の中で並べながら3階まで上がり、自分の教室の様子を見に来る。
すると、さっきと同じ猫耳メイド姿の道藤さんと、無理矢理着せられているのか、恥ずかしそうにはにかみながら、メイド服で接客する町張さんがいた。
そんな事だろうと思ったわ。
もし大狼くんが来ていたら……絶対ロクな事にならなかったわね。
私は心の中で安堵しながら、教室に入る。
すると私に気づいたからか、道藤さんが、私の方に歩いて来た。
「佐伯ちゃんっ、お疲れ様っ」
常に上目遣いのあざとい笑顔を見せる道藤さん。
良い子って事は分かってるけど、私とは違う世界の住人のように思える。
「あれ? 古徳くんはまだお仕事?」
私は小さく頷いて答える。
「そっかー」
道藤さんは明らかに残念そうな顔をして「あははごめんね」と言って、また笑顔に戻った。
あざとい質問ね……。ロリコンの大狼くんはこんな感じの子が好きなのかしら。
「なんで古徳くんなんかに執着するの? って顔してるね」
別にそんな顔してないのだけど。
「佐伯ちゃんが古徳くんの事どう思ってるか分からないけどさ、古徳くんって本当はお利口さんなんだよ?」
「…………」
「例えばー、この前古徳くんが佐伯ちゃんに送ったlimeとか! 実はあのlime、あたしが佐伯ちゃんに送るようにお願いしちゃったんだけど、ウザいくらいお節介みたいなlimeだったでしょ?」
私は強めに頷いておいた。
確かに彼のお節介limeはウザかったけど、それ以上に意外だった。
「古徳くんって昔からキザで捻くれてるけど、やる時はやるし、普段はツンツンしてるけど本当は優しいんだよ?」
知ってる。全部、知ってる。
大狼くんは、私が送ったlimeにもなんだかんだで必ず返信してくれるし、この前のカフェの約束だって、無視されると思ってたのに、彼は時間通りに来た。
だから、大狼くんが本当は真面目で律儀な人間なんて事、知ってるに決まってる。
「あたしは古徳くんにいっぱいお友達が出来て、少しは正直者になって欲しいって思う。だから古徳くんの側にいて、古徳くんにお友達ができるようにサポートしてあげたいなって。あたしは古徳くんの、唯一の幼馴染だしっ」
その眩しいまでのヒロインオーラが、私の冷えた心を溶かそうとして来る。
この子だけには……負けたく、ない。
「私も、そう思うわ」
「え……い、今、佐伯ちゃん、喋っ!」
「あなただけじゃ……ないから」
私はそう言い残して踵を返す。
教室は異常無し。
もう大狼くんの所に戻るわ。
「さ、佐伯さんっ!」
私が教室を出ようとしたら、道藤さんの後ろから、何かを持って来た男子に引き止められる。
この男子、確か大狼くんに実行委員の仕事を押し付けた……。
「お、お願いがあるんすけど!」
―――――――――――――
【あとがき】
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