16話 文化祭02〜二人の寄り道、甘い思い出〜
階段の踊り場で猫メイドの玉里に絡まれ、理不尽にもロリコンと佐伯から罵倒され、仕事に戻るよう言われた俺。
俺は不満を抱えながらも、佐伯と一緒に見回りを再開する。
文化祭の賑わいとは反対に、佐伯はいつも通りクールな面持ちで俺の隣を歩いていた。
周りが文化祭で浮かれているからか、佐伯に視線が集中しないのはかなり助かっている。
普段からこれくらい注目を集めなければ、佐伯も生きやすいだろうに。
「……大狼くん、ちょっと待って」
佐伯は突然、俺の右腕を掴んで引っ張っる。
俺は咄嗟に足を止め、佐伯の方を見た。
「ど、どうした急に」
佐伯の雰囲気が、さっきと全然違う。
佐伯は2年C組の教室の方を睨みつけ、唇を少し噛んだ。
まさか、不審者を見つけたとか?
「不審者がいたのか? 佐伯?」
「私……」
俺が問いかけると、佐伯は重々しい口調で話し出した。
「あそこのあんず飴、買いたいわ」
「……はあ?」
佐伯が指差したのは、2年C組の
教室の中に、縁日のような数種類の屋台が設置されており、他のクラスと比べても賑わっている。
「あんず飴……実に興味があるわ」
こいつは一体何を言ってるんだ?
非常事態かと思って身構えていた俺の体が一気に緩む。
「それ興味とか関係なく、お前がただ食いたいだけだろ」
「……食べたい物に興味を示して何が悪いのかしら」
「開き直るな。俺たちは今、仕事中なんだぞ?」
「…………ばか」
「あ?」
「ぼっち根暗口悪ロリコン鈍感お節介」
「念仏みたいに悪口唱えんな!」
「……もういいわ。私一人で買いに行くから」
一人でって……。
もしかして佐伯は俺の事誘ってたとか……いや、そんな訳ないか。
意外と佐伯って自由人だよな。
休日にカフェでした会議も急に呼び出されたし、放課後の買い出しも急だったし……。
「お待たせ」
「買ったならさっさと戻るぞ」
俺が歩き出そうとすると、佐伯はまた俺の右腕を引っ張った。
「今度は何だ? フランクフルトか? それとも焼きそばか?」
呆れながら佐伯の方を向くと、佐伯は俺にあんず飴を差し出してきた。
「2つ買ったから、あなたにもあげる」
「え……?」
なんで……こいつはそんなこと。
俺が意外そうに佐伯の方を見ていたからか、佐伯は怪訝そうに睨み返して来る。
「な、なんだよ」
「あなたにはこの前のカフェでも奢ってもらったし、文化祭の準備もお世話になったから……これは、ちょっとしたお礼」
「お、おう」
俺は小鉢みたいなせんべい皿に載ったあんず飴を佐伯から受け取った。
「この私からのプレゼントなんだから、有難いと思いなさい」
必ず最後は偉そうになるのは何とかならないものか。
でも、佐伯がこんな事するなんて……。
「何をじっと見ているの? まさか、食べさせて欲しいだなんて言わないでしょうね?」
「言うわけねーだろ」
佐伯はムスッとしていた。
前までは無表情が当たり前だった佐伯だが、こうして話すようになってから、結構、感情が分かるようになってきた。
「歩きながら食べるのは良くないし、階段の踊り場にある実行委員用のパイプ椅子にでも座って食べるか?」
「え、ええ……そうしましょう」
佐伯と俺は階段の近くにある実行委員用のパイプ椅子に座り、あんず飴を口にする。
味は学生クオリティというのが率直な感想だが、隣に座る佐伯はさっきより機嫌が良さそうに食べていた。
いつもは何に対しても興味がない、の一点張りなくせに、この時だけは彼女の本心が垣間見えたような気がした。
「大狼くん」
「なんだ? もう休憩は終わりに」
「少し、話したい事があるのだけど——」
―――――――――――――
【あとがき】
佐伯の話したい事とは……?
合計"3000"いいね行きました!ありがとうございます!これからも頑張ります!
作品の【フォロー】と下にある【☆評価】【いいね】をお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます