異世界転生して私が授かったのは人形遊びのスキルでした〜可愛いぬいぐるみであっても、見た目で判断してはいけません!

神白ジュン

第1話 異世界

 疲れていたのかな?ぬいぐるみと子供を見間違えるなんて。きっとそうだ。そうに違いない。


 にしても、ほんとに異世界転生なんてあるんだね、おとぎ話かと思ってたなぁ…




 高校生だった私、逢川紗織は、交通事故で死に、気がつけばこの世界に来ていた。


 ここに来る前にいくつか転生に携わったという女神様が教えてくれた情報をもとに、ひとまず最寄りの街を目指していた。


 私のスキル、『人形遊び』は人形やぬいぐるみを好きに動かせる…といった感じだが、あまり詳しいところまでは教えてくれなかった。


 「でもこんな剣や魔法が当たり前で、おっかない人や魔物がそこらじゅうにいる世界で、通用するのかなぁ?」


 実際、ここに転生してまだ1日も経っていないが、街を目指し森を抜ける最中で何度も戦闘を見てしまった。盗賊や魔物だけでなく、複数のパーティー同士の乱戦にも危うく巻き込まれそうになってしまった。

 

 もうこの世界は散々だ。早く帰りたい。


 来てからずっとこれだ。


 私にはこういう争いは向いていない。


 女神様が言うには、この世界でとあるものを手に入れれば、なんでも願いが叶うとのことで、それを使えば現世に戻ることも可能らしい。

 

 街が見えてきた。


 もうこの森には近づかないようにしよう。


 


 「おっ、こんなところにひとりぼっちの嬢ちゃんはっけーん!」


 手に武器を持った賊のような男が三人。


 まずい。


 勝てない。


 また、死んでしまうのか?

 恐怖で顔が青ざめる。


 「おぉ、可愛い顔してるじゃねぇか。」

 「ここら辺じゃあまり見ない黒髪か、じゃあ転生者の一人かもしんねぇな、運の悪いことよ。」

 「転生者だったら訳の分からないものぶっ放してくるかもしんねぇから、一応気をつけとけよ。」


 男達は会話しながらも、ジリジリと迫ってくる。


 体格的にも逃げられそうには…なさそうだ。


 どうせ死ぬなら、やるだけやってみてからでもいいか…

 最初に女神が言っていたことを思い出しながら、身体中の魔力…のようなものを集め、さらに頭の中でイメージを練り上げる。

 

 やるしかない。

 「ええぃ、もうどうなでもなれ!スキル、人形召喚!!」


 どーんと変な音が土煙を上げながら響いたかと思えば、私の目の前には60センチ程度のぬいぐるみがぽつり。


 男達もこれには驚いたのか、口が空いている。


 「こいつ、私が見間違えた熊のぬいぐるみじゃんかぁ!!!」


 それは私がここに来ることになった原因と言っても過言ではない熊型のぬいぐるみだった。



 「何かと思えば、可愛いぬいぐるみじゃないか。」

 「そんなちんけなもので、三人に勝てるとおもってんのか??」


 三人は大笑いしながらも、距離を少しずつ詰めてくる。


 ついに、男の一人が炎のようなものをこちらに撃ってきた。


 ちょっと前に似たようなものは見た。魔法だ。


 「おいおい、せっかくのを燃やしちまったら俺らが楽しめないだろ?」

 「これは脅しだよ、お ど し!」

 「おいおい、笑わせんなって!」

 

 男達は楽勝モードらしい。


 すかさず私はこのぬいぐるみのステータスなるものを確認した。

 この世界は、自分だけが見えるステータス画面というものがあるらしく、本来自分以外は見れないが私が召喚したからなのか、こいつのは見えるらしい。


 『名前 まだ名前がつけられていません』

 『タイプ 魔法タイプ』

 『使える特技 大抵の魔法ほぼ全て』

 『性格 従順』


 …今の段階では全部見れないのか…


 どうやら、ゲームでいうレベルや実績が足りないのか、後半部分は?マークで詳細が見れなかった。


 「命令…してみるか!」


 えーっと…名前、どーしよう。悩んでる暇ないよねとりあえず最初の子だから1号でいいや!!!


 『システム 名前が承認されました』


 「1号!なんでもいいからこいつら追い払って!!!」


 そう言い放った直後、1号は先程男の一人が放った火球の数倍もの大きさの炎を放った。


 続けざまに大きな氷塊、水泡、雷、と連発し始めた。

 

 男達は先程とは打って変わり、表情は青ざめ腰を抜かしてしまっていた。防御魔法でなんとか防いでいるが、時間の問題だろう。防御しきれていない部分もあり、火傷や凍傷などがこちらからも確認できるほど、その魔力は強かった。

 

 もうすぐすれば3人ともここで死んでしまうだろう。何故なら1号はどうやら完全に仕留めるまで連射を止める気は無さそうだからだ。


 もはや防御魔法を張っていた一人を残し、二人は慌てて逃げようとしていた。

 

 私はただ唖然としてその光景を見守るしかなかった。


 「…あーもういいよ、ストップ。」


 私の命令はしっかり聞くようで、すぐに攻撃をやめた。一体どういう原理で魔法を撃っているのだろうか…?


 「ひぃぃ!!転生者は化け物しかいないのかよ〜!!!」


 取り残されていた一人も半泣きになりながら大慌てで逃げていった。



 どうやら私は能力で賊を追い払うことに成功したらしい。


 ここで私の中に一つの快感が目覚めてしまった。これがなければ、後にこの世界の争いごとに無理に首を突っ込むことも無かったかもしれない。


 「あぁ、外見で人を油断させておいてボコボコにするって、想像以上にスッキリするなぁ!」


 このレベルの使役人形をさらに作れるとしたら…


 何ならそれぞれ個体ごとに色々特技なんかも変えられるかもしれない。


 そう考えると、想像するだけでワクワクが止まらなかった。


 


 

 そうして彼女は、これまでとは見違えるほどの軽い足取りで、街を目指して歩くのだった。



 

 

 


 

 


 

 


 



 

 


 




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異世界転生して私が授かったのは人形遊びのスキルでした〜可愛いぬいぐるみであっても、見た目で判断してはいけません! 神白ジュン @kamisiroj

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