立夏の備忘録

雪兎と立夏  ~中二病でもチョコが欲しい!~

二月。

 クリスマス程の浮かれムードは無いが、街を歩く人々が何処かそわそわしているように感じられる季節。

 酒のつまみを買いにコンビニに入ると、入り口付近のコーナーには例年通りバレンタインのチョコレートが並べられていた。

 可愛らしくラッピングされたそれらを見ると、ある苦い思い出が頭に浮かぶ。

「あれ、立夏じゃん」

 聞き覚えのある声がして振り向くと、同じチームの東条睦月が立っていた。

「チョコ、買うのか?」

「いや、俺は酒のつまみを買いに……」

「ふうん。一人?」

「まあ」

 さきいかとアーモンドを手に取りカゴに入れる。

「じゃっ、一緒に飲まねえ?」

 俺の答えを聞く前に、ポテトチップとサラミを追加で入れる。

「ちょ、お前の分は払わねえぞ」

「じゃあ割り勘で」

 睦月と飲むのはこれが初めてではない。宅飲みも何度かしている。

 俺は控えであっちはスタメンの違いこそあれ、同じチームで同い年、不思議と馬も合った。

「これもいい?」

 無邪気に問いかける睦月の手にはワインの瓶が握られていた。

「まあ、いいけど」

 睦月はよくワインを飲むらしい。酒も多分、俺よりか強い。

 会計を済ましコンビニを出る。ここから俺の家までは徒歩で五分とかからない。

「そういえば、お前は何を買いに来たんだよ?」

「だから酒だろ。ちょうどワインのストックが切れちゃって」

「ああ、そう。ていうか、明日午後練あるからそんなには飲まないぞ」

「分かってるよ」

 マンションに着く。

「階段で行く?」

「おう」

 俺の部屋は五階にあるが、運動のため普段は階段を使うようにしている。

 階段を黙々と上り部屋に到着する。

「相変わらずいいとこ住んでんな~」

 俺は2LDK、睦月は節制して1DK。

 親は3LDKの高級マンションを勧めたが、それはさすがに持て余しそうなので遠慮した。

 家に入り、リビングのソファに睦月を座らせる。

「そういえば、もうすぐバレンタインだな」

「そうだな」



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