ぬいぐるみ
僕は旅先で、よくぬいぐるみを買う。自分が可愛いと思ったものを買う。
自分用ではない。妹用だ。
近年、そのぬいぐるみ達で、部屋が圧迫されているのが悩みだ。
古いのを捨てればいいじゃないか、と言う人もいるだろう。
捨てられないのだ。
春ちゃんの本と一緒だ。皆がさねちーのように、ミニマリストではないのだ。まあ、彼の場合は、まず無駄な物を買わないのだろうが。
ぬいぐるみが積みあがった部屋に一人佇む。
「今年は兎年だから兎さんのぬいぐるみで~す」
ふらっと二泊三日、出雲旅行に行った際に買ってきたものだ。
「雪ちゃん、出雲大社には兎の像があちこちにあるんだよ~。ほら、写真撮ってきちゃった。見る? うんうん、可愛いよねぇ。ほら垂れ耳さんもいるよ~。出雲大社に続く参道にお土産屋さんが色々あってねぇ、楽しかったよ。勾玉ネックレスも買って来ちゃった」
「出雲大社の他に、玉造温泉にも行ったよ。良い湯だった~、美肌になりそう。源泉をテイクアウトで持ってきたから、後でお風呂に入れるんだ~。神社もあって、お守りも作ってきたよ。何を願ったかって? 秘密。旅館の料理も美味しかったし、本当よかったよ」
「松江のお城の方にも行ったんだよ。そこで堀川めぐりもしてきたよ。冬はこたつ付の舟で、船頭さんの話も面白かったなぁ」
「小泉八雲記念館にも行ったよ。八雲の散歩道とかも歩いたよ。八雲、春ちゃんにおススメされたんだけど、僕好みの怪談話で良かったなぁ。琵琶法師風に何か語ってあげようか?」
「やめてって? 雪ちゃんは怖がりだなぁ」
「松江は他にも、志賀直哉とか芥川龍之介とか文豪がよく訪れてた場所でもあるから、今度は春ちゃんも連れてってみようかな」
「ねえ、雪ちゃん。この部屋を片付けるって言ったら、どうする?」
「そうだよね。やっぱ寂しいよね? ごめんごめん」
やはり今日も片付けれそうにない。
山積みのぬいぐるみを見渡しながら、溜息を吐いた。
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