勝負事

 昔から勝負事に、あまり関心が持てなかった。

 挑まれれば適当に、あしらってやるけれど、本気になったことはない。

 全てが遊びのようなものだった。



「という訳で、暇だから人生ゲームでもやろうか!」

「何が、という訳だよ。全く脈略もない」

「そう言いながら、やってくれるくせに」

 僕の部屋に、いつものメンバーが集まって人生ゲームが始まった。

「はい、雪兎農場大豊作で、3万ドルゲット~」

 今回はサイコロの出目が良く、中々順調に進んでいた。

「え~、僕はFXで全財産の半分を溶かす……」

「わぁ、さねちー可哀そう~」


「俺は息子が逮捕……」

「何で春ちゃんだけ異様に深刻なの」


「監督を殴り、自宅謹慎を食らう」

「わぁ、りっくん、ありそう」


 結局、大きな番狂わせもなく、人生ゲームは僕の勝利に終わった。

 本当の人生も、こんなに順風満帆なら、どんなに良かったことか。

 


 他にも、部活の皆で対戦系のゲームを何度かやったが、それで本気になる奴を、横でへらへら笑いながら見ていた。

 人狼では平気で裏切り場をかき乱すし、駆け引きのあるボードゲームでは交渉に乗っているようで乗っていなかったりもした。パーティを組んで冒険する系のオンラインゲームでは、他のメンバーが真剣にボスを討伐する中、僕は意味のない行動を取っていてブチ切れられたりと。

 何故ゲームで真剣にならなければならないのか。ただの遊びじゃないか。

 自分の人生でさえ、真剣に生きていない僕は、そう思うのだ。

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