第5話 腕試し

俺たちが次のエリアに行く道中、カルにこんなことを言われた。

 カル)ところで、今、確認しているところなんだよ。ちょっと待っとけよ。

 カル)早くしてくれ。

 アラビス)分かってるよ。えっと……。おっ、あるじゃん。ちゃんとあるな。

 カル)あるなら、最初から出せ。

 アラビス)う、うるせぇな。俺だって、たまにはミスくらいあるよ。

 カル)まあ、いいけど……。

 アラビス)よし、準備完了だ。行こうぜ。

 俺達は次のエリアへと足を踏み入れた。そこは、洞窟のような場所であった。

 アラビス)暗いな。

 カル)まあ、仕方ないだろうな。

 アラビス)そうだな。とりあえず、先に進もうぜ。

 カル)ああ。

 俺達は先に進むことにした。しばらく歩いていると、そこにはモンスターがいた。

 アラビス)あれは?

 カル)敵か?

 アラビス)多分な。

 カル)じゃあ、倒すしかないな。

 そう言うと、カルは敵の方へ駆けていった。

 アラビス)あ、おい! 俺も慌てて、カルの後を追った。

 カル)喰らえ! カルは敵に斬りかかった。しかし…… ガキンッ!という音が鳴り響いた。どうやら、敵の攻撃をガードしたようだ。

 カル)ちぃっ!硬いな。ならば…… 今度は連続で攻撃を始めた。だが…… ガンガンガン!!という音が鳴るだけでダメージを与えられていない様子だ。どうやら、この敵は防御力が高いらしい。

 カル)くそっ!

 アラビス)はあっ! そこで、俺はカルに代わって攻撃を仕掛けることにした。

 アラビス)はあっ! 俺は思いっきりジャンプをして、上から剣を振り下ろした。

 ザクッ!という音をたてながら、敵を切り裂いた。

 アラビス)やったか?

 カル)いや……まだみたいだぞ…… よく見ると傷は浅いようで、すぐに回復してしまった。しかも、こちらに向かってきた。

 アラビス)「黒炎王!!」黒く燃え上がれ!!

 俺が魔法を唱えると、黒い火柱が立った。

 ゴオオォオオッ! それは、みるみると大きくなっていき、やがて巨大な龍となった。そして、そのまま敵に襲いかかった。

 グギャアァアッ! 悲鳴を上げているようだったが、そんなことは気にせず、さらに追撃を仕掛ける。

 アラビス)いけええええええええっ!!! その一撃は見事に命中し、敵を焼き尽くした。

 アラビス)ふぅ……。なんとかなったな。

 カル)お疲れ様。いやー、強いね〜。

 アラビス)いや、それほどでもないよ。

 カル)でも、あの技凄かったね。あの、黒い龍みたいな奴。

 アラビス)ああ、あれね。実はあの技は……

 カル)実はあの技は?

 アラビス)俺が作ったんだ!

 カル)え?そうなの?

 アラビス)ああ! 俺は自慢げに言った。

 カル)へぇー。お前って、意外とすごいんだな!

 アラビス)まあ、な! 俺って、意外と天才かもしれないな!

 カル)うんうん!

 アラビス)はぁ……。

 カル)ん?どうかしたのか?

 アラビス)いや、なんでもないよ。

 カル)そうなのか。

 アラビス)うん。そういえばさ、さっきから思ってたんだが……。

 カル)なんだ?

 アラビス)お前、キャラ変わってないか?

 カル)え?そうか?

 アラビス)なんか、前より明るくなってるような気がするんだけど。

 カル)気のせいでしょ。

 アラビス)う~むまあ、本人がそう言っているのだから、気のせいなのだろうな。

 それからしばらく歩いていると、またモンスターが現れた。今度は、2体いる。1体は狼でもう1体が蜘蛛だ。

 アラビス&カル)!?

 アラビス)なんだよ!?これ!?

 カル)これは、ヤバいな……。

 アラビス)ど、どうすれば……。

 カル)ここは、俺に任せろ。

 カルは俺の前に出た。

 カル)はぁっ! まず、最初に襲ってきた狼を斬りつけたが、やはり効かない。

 カル)くそっ! 次に、蜘蛛の方にも攻撃したが、これもダメだった。

 カル)くそっ!なんなんだよ!こいつらは! カルは苦戦しているようだ。

 アラビス)カル!大丈夫か!

 カル)あ、ああっ!何とかな!

 アラビス)俺に任せろ!雷のごとく轟き痺れろ!「紫雷」!!

 俺の手からは紫色に輝く電撃が出てきた。それが、敵に当たると、敵の動きが鈍くなったように見えた。

 カル)ナイスだ! カルはすかさず、敵を攻撃した。すると、今度はしっかりとダメージを与えられたようで、敵は倒れた。

 カル)よし!次は……

 アラビス)待て!カル! カルは先に進みたがっていたが、俺は止めた。なぜなら、敵はもう一体残っているからだ。

 カル)な、なあ?もう、倒したんじゃなかったか?

 アラビス)ああ。確かに、もう一匹は倒した。だけど……

 カル)じゃあ、いいじゃん!行こうぜ!

 アラビス)いや、よく見てくれ。あいつ、様子がおかしいぞ。

 俺達が話をしている間にも敵はどんどん近づいてくる。しかし、その動きは明らかにおかしかった。まるで、操られているかのようにフラつきながらこちらへ向かって来ていたのだ。

 カル)おいおいおいおい!マジかよ!

 アラビス)どうやら、仲間を呼んだらしいな。

 カル)くそっ!仕方ねぇ!やるしかないか! カルは剣を構えた。

 カル)はあっ! カルは敵に切りかかった。だが、敵の皮膚は硬く、全くダメージを与えられていないようであった。

 カル)ちぃいっ!

 アラビス)喰らえ! 俺も加勢して敵を攻撃するが、それでもダメージを与えられていないようだった。

 カル)ぐおっ!

 アラビス)がはぁ! 俺達は敵の攻撃を食らい、吹き飛ばされた。

 カル)クソッ!

 アラビス)硬すぎる!

 カル)何か弱点はないのか!?

 アラビス)分からない!でも、このままだとやられるぞ!

 カル)そうだな!

 アラビス)こうなったら、あれを使うか!

 アラビス)奥義!「永遠の零度」魂ごと凍れ!

 俺は魔法を唱えた。その瞬間、辺りの温度は急激に下がり始めた。

 カル)おぉっ!?急に寒くなったな。

 アラビス)今のうちに逃げるぞ!

 カル)ああ。

 俺達はすぐにその場から離れた。しばらくして、後ろを振り返ると、そこには氷漬けになった蜘蛛の姿があった。

 カル)すげぇ……。

 アラビス)これで倒せたはずだ。

 カル)でもよ?これってどうやって帰るんだ?まさか、歩いて帰れとか言わないよな? アラビス)それは……。

 カル)ないんだな?

 アラビス)……はい

 カル)マジかよ……。

 俺達には帰り道が分からず途方に暮れていると……

 ???)あの…… 突然、声をかけられたので振り返ると、そこには少女がいた。

 ???)大丈夫ですか?

 カル)ああ……。なんとかね……。君の名前は?

 ???)私は、レイナです。

 カル)そうか。俺はカルだ。よろしくな!

 ??→レイナ)はい!よろしくお願いします!

 カル)ところで、君はどうしてここに?

 レイナ)えっと……。散歩をしていたんです。

 そうしたら、大きな音が聞こえてきたので来てみたら、あなた方がいて……。

 カル)そうか……。助かったよ。ありがとう。

 レイナ)いえ。そんなことないですよ。

 アラビス)それで、これからどうする?

 カル)う~ん……。とりあえず、ここを探索するか……。

 アラビス)だな。

 カル)よし、そうと決まれば出発だ!

 アラビス&カル)おおっ! こうして、俺達の探検が始まった。

 アラビス)それにしても……。この森は一体なんなんだ……。

 俺達は森の中をさまよい続けていた。

 カル)迷ったんじゃねえか?

 アラビス)いや、それは無いと思うが……。

 確かに、さっきから同じ場所をぐるぐる回っているような気がするが、気のせいだろう。きっと。

 カル)気のせいじゃない気がするけどなぁ。

 アラビス)うるさいなぁ。ほら行くぞ。

 カル)はいはい。

 アラビス)はぁ……。疲れた。

 カル)休憩しようぜ。

 アラビス)まだ、5分くらいしか経ってないぞ。

 カル)いいじゃん。休もうぜ

 アラビス)分かったよ。俺達は木陰に入り腰かけた。

 カル)なあ?アラビス。

 アラビス)どうした?

 カル)俺達、本当に帰れるのか?

 アラビス)それは……

 カル)あ、いや、ごめん。

 アラビス)そういえば残りの勇者は何人?神様のカルさん。

 カル)4人と聞いているが……

 魔王アラビス)そうか…… あと4人の勇者を殺せば...俺は死ぬことができるんだ……。でも、俺には、カルが……。どうすれば……。

 カル)アラビス……。

 その時だった。

 ゴォオオオッ!突然、地響きが起きた。

 アラビス)な、何事だ!

 カル)行ってみよう! 俺達が急いで向かうと、そこにはモンスターの姿があった。

 カル)あれは…… 次回:最終章

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