　この日、張本は廃れたレンタルDVDショップでお笑いの勉強をするため借りた、乱和時代のバラエティを見ていた。

　乱和は張本が生まれる前の元号だ。

　乱和時代は今と比べて放送規制は緩く、映画やドラマでは、女体の乳首が放送されるなど日常茶飯事だった。

　ちなみに今はまだ『京和』という元号だ。

　来年春からは新しい天皇が即位され、元号が『平和』となる。

　番組は牛乳を口に含み、ステージに上がった芸人のギャグで笑ったら牛乳を吹き出すといった内容だったが、張本にはそれのどこが面白いのか全く理解できなかった。

　自分の感性がおかしいのだろうか。

　自分がこの時代に生きていたならそう思っていたのかもしれない。だけど今そんな下品なことをすれば、たちまちネットで炎上する。

「時代が僕に追いついてきたんだ」

　張本はテレビを観ながらそう呟いた。

　その後DVDは内容を全部観ることなく返却した。

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