第6話 誰も傷つけないように

「で平谷君はどう思う?」


池谷は再度真剣な表情になり、問いかけてきた。



炎上だけは避けたい



炎上はYouTuberだけの特権ではなく、テレビ番組でタレントやアイドルが発言した内容もYahooニュースで叩かれまくるのは日常茶飯事だ。そして昨今は価値観の変化が激しいため、何が炎上するか全く分からない。


記憶に新しい炎上としては、あるアイドルがバラエティに出演した際『レストランで彼氏と食事した際は、彼氏側がお金を出して欲しい』という発言をした事だった。


Yahooニューストップになり、テレビでも取り上げられるほど波紋を呼んだが、テレビで視聴した際、なぜ炎上しているのか平谷にも張本にも分からなかった。

むしろ真っ当な意見。女なら当然の価値観だろうと思っていたのだ。



「そうですね……」


当たり障りの無いこと

当たり障りの無いこと



それは世間と時代の空気を読むこと。


ニュースの声が世間の声だ。


そしてそれに忖度する意見が模範解答である。そう平谷は信じていた。

時代も世間も今は平等と平和。そして多様性を求めている。


ジェンダーやヴィーガン、反戦運動や貧困撲滅そして差別撤廃…。時代は他者との調和を、世間は優しさを求めている。


それを心情にして発言すれば絶対に炎上することなど無い。


最近炎上したアイドルの「男が奢るべき発言」は性差別にあたる。典型的な時代錯誤の地雷発言だ。


僕は話す内容を決め、息を吸った。

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