第5話 当たり障りのない
この日、平谷はワイドショーに出演した。
コンビ内格差というのはどのコンビでも多かれ少なかれあるもので、それはラブアンドピースも例外ではなく張本がいわゆる「じゃない方」の人間だった。
なので2人一緒に呼ばれるということは、お笑い番組を除いてほぼ無い。
本人たちはスタンスも才能もお互い同じくらいだと思っているが、世間や周りの評価とは乖離があるようだ。
いちどだけ火曜22時放送の大人気国民的バラエティ番組である「唾飛ばしてもしゃべるの辞めれまへんでZ」に出演した事があるのだが、オンエアでは張本が収録で言ったことの8割がカットされていた。
今回のニューステーマは「体罰について」だった。
近頃教師が生徒に対して行き過ぎた暴力を働いた結果、生徒が大怪我をするという事例が相次いでいた。
今の時代、スマホは小学生でも持ち歩いているため、SNSで簡単に暴行の瞬間を撮影され、瞬く間に拡散されてしまう。
スタジオのモニターには生徒が撮影したと思われる教師による暴行の映像が流されており、その横で司会者である池谷
「……はいという訳なんですけれども、ではまず茶丸さんにお聞きしたいんですけれどね?どう思いますか体罰のー、意義というか、ねえ茶丸さんはどうお考えになってますか?」
今回のコメンテーターのひとりである落語家で今年62歳になる茶丸師匠に話を振った。
「いやあーーねえ!私らの頃はねぇダメなことしとったら竹刀持って角刈りの先生にバーンておもいっっきり叩かれてたからねえ!」
平谷は茶丸のすぐ隣にいたので茶丸が唾を飛ばした瞬間を見てしまった。不快に感じたが、顔には出さなかった。
「時代は変わったなあって感じだよね。でもいつの時代もやっぱ怪我はさせちゃどれだけ子供が悪いことしててもさ、先生が100悪くなっちゃうよねえ」
と、茶丸は教師に非があるとするようなニュアンスでコメントを締めくくった。
「そうですよねえ……じゃあ平谷君はどう思うかな!年齢的にゆとり教育を受けてきた人間だよね平谷君は、ね!?」
平本 守34歳。芸歴は15年だ。
「そうですね!カテゴリー名称で言うとなんていうんですか?あのー」
「かてごりい?」
茶丸が反芻する。
池谷は顔を一番前にする形で上半身を突き出し、目玉をまるで濁ったビー玉のようにまん丸にしてこっちを見ている。
「……スマホ世代?」
池谷が小声で助け舟を出してくれた。
「ああ!そうですそうです!スマホ世代!」
直前まで放送事故レベルに変な空気だったスタジオが池谷のファインプレーで明るくなった。
さて問題はここからだ……
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