第4話 されて嬉しいこと他人にするのも余計


 __という過去があった。

 その後「チーター」は張本の指摘通りの要素が原因だからなのかは分からないが、結果的に解散してしまったので余計張本に対してジェラシーや憎悪など複雑な感情を色々抱いているのだ。(複雑と言っても全て負の感情だが……。)


 実を言うと平谷も菅原の価値観には共感している。


 昨今の【人を傷つけないお笑い】という概念に違和感を抱いているのだ。


 どう違和感があるかと問われると言語化しにくいのだが、喉元にある魚の骨のように、なにか引っかかる。


 ・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「お笑いってさ、最近変わったよね」

 張本とは後日2人きりで飲み直した。

「変わりましたね。ここ最近で一気に」

 張本はビールをちょびちょび飲みながら言う。


「……言っちゃあれだけど、つまんなくなったかも」

 そう言った直後、誤魔化すようにビールを一気飲みする平谷。


「えー?クリーンになったんですよ?平谷さん。いい事しかないです」


 ここ最近のお笑いは、攻撃的な内容が減った。

 放送倫理の規制が原因かと思われる。

 他人の容姿をネタにしたり、行動や趣味趣向をバカにしたり。

 過去には同性愛者や特定の人種を揶揄したようなネタが山ほどあった。

 今テレビでそんな真似をすれば、間違いなく問い合わせ殺到だ。


 倫理というものは時代よって変わる。

 かつて良いとされていたものが、今は悪になるというのが倫理だ。

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