第3話 だから俺は…

「複数の男子生徒を障害が残るまで殴り続けた事件」

 その言葉を聞いた瞬間に俺は、彼女に歩み寄っていた。

「その言葉を喋るな‼︎」

「ほら…やっぱり成瀬さん。こんなに私と近いのに手の一本も触れていない。」

そう言われてハッとする。

確かに彼女との距離は、指1本にも満たない距離まで近寄っていた。

「‼︎」

「そんな人が殴れますか?それも『障害』が残るまでずっと…」


『障害』と言う言葉が手できた瞬間…当時の記憶が途切れ途切れになって出てくる。


丁度1年前に事件は起きた…クラスのいじめっ子3人の男子が、クラスで少し浮いていた宇崎という男をを殴っていたのを偶然俺が見てしまい…それから俺は…

「うるさい‼︎黙れ人殺し‼︎」

「違う…殺してなんか…」


「早く救急車を‼︎宇崎の脈が確認できない。」

「違う…」


「成瀬…お前自分が何したか分かっているのか!……黙ってないで答えたらどうだ!

宇崎は半身不在の障害を背負ったんだぞ‼︎」

「違う…違う…」


「あの人…昨日宇崎と飯田達をボコボコに殴って、殺しそうになったんだって…」

「え〜なにそれ…フツーに人殺しと同じじゃん…学校来ないで欲しいわ…」

「違う!…はずなんだ…俺は…俺は…何も…」


「なんで…アンタの為に私達が謝らなくちゃいけないのよ…人殺しと同じよ‼︎一人で生きて…もう我慢ならない…アンタなんか生まなきゃよかった‼︎」

    バタン

「まっ……」

言いかけたが、最後に見向きもしないで玄関を閉じて父親と共に出て行った。

「ど、どうして…誰も…」



周りの皆んなが口を揃えて人殺しと言う…

だから俺は

『初めて人を殺した自分という人間を』

その日から自分の気持ちを誰かに話す事もなく本音を隠し、ずっと一人で生きてきた…

そうして暮らしていくうちに一人でいる方が楽になった。誰もいない世界で一人孤独に

生きたいと思った…だって誰も自分の事を否定しないから。



「違う…そうですよね成瀬さん。」

「⁉︎」

ハッとする。

「学校の中では、成瀬さんの存在は煙たがれると思います。今日始めて話しましたけど私は成瀬さんは人を殴ったりする人では、無いと信じています。それに…成瀬さんは成瀬さんです!自分を殺す必要なんてないんですよ。それに、私は貴方を否定したり肯定もしません…だってまだ何も知らないから。」

「…ぁぁ」



彼女の言葉を聞いた俺は、色んな感情が混ざってぐしゃぐしゃになった顔を両手で隠した。

 (あぁ、この子は一体どこまで見抜けていて、どうしてそんなに賢いんだろうか…)



それからどれほどの時間が経ったのだろうか…俺は気がつけば泣いていた。

 体感だと1時間程この世界にいる気がする…

「さぁ…ここから出る方法を考えましょうか。」

周囲を見渡し、何かあるかと探した…その時妙な違和感を覚えた。

 「なぁあれ…」

指を刺し浅田さんと一緒に見る。

 駅の改札口奥にしま模様のような、もや状のものが宙に浮いてその空間だけが歪んでいるように見えた。

「シュリーレン現象?」

彼女がぼそっと言葉を発した。

「シュリーレン?一体何なんだ?その現象は?」

「透明な媒質の中で場所により光の屈折率の違いで、その部分がしま模様やもや状に見えら現象です。屈折率の差が大きいと肉眼でも見えるのですが…それにしては少し不気味と言いますか…異様な雰囲気を纏っていて…なんだか…」

「わかった一旦落ち着け。そのシュリーレン現象ってのもわかった。だけど今の説明だと、透明な媒質なんだろ?それが次元の裂け目みたいになってるんだが。」

「『次元の裂け目』…!あそこに行けば元の世界に戻るかもしれません‼︎」

「いくらなんでも本の読みすぎじゃ…」

「時には、本に出てくる知識も役に立つのですよ?」

「わかったよ。浅田さんを信じる。」

「ありがとう…ございます。それと今の時刻を覚えといてください。」

「あ、あぁ」

彼女に言われ腕時計の針を見る。

 時計の針は、5時55分を指していた。

「5時55分だ。」

「現実世界だと、18時5分程かもしれないわね、1時間程この世界にいるみたいですし」

 そう言い彼女は、スマホのストップウォッチを俺に見せた。

「抜かりないな…」

「3、2、1、のカウントダウンで一緒に行きましょう」

「わかった。」

互いに手を軽く握りタイミングがズレないようにする。

「3…2…」

彼女の握る力が徐々に強くなり緊張が伝わる。

「…1…行きます!」

互いに手を握ったまま、時空が歪んでいる所を目掛け走っていった…










「…」

「…⁉︎」

辺りを見渡す…

 明かりは無く太陽も消え月のみが空に出ていた。

ベンチ?ブランコ見える…ここは公園?

「……ん…」

「おい…浅田さん…起きろ」

「…んん」

浅田さんも目が覚めゆっくりと体を起こし辺りを見渡した。

「ここは?」

「分からない…ただ言えるのは、公園のベンチで眠っていたらしい。」

「…⁉︎ごめんなさい。成瀬さんの膝の上で…」

「気にするなそれぐらい…」

外はこんなにも暗いのか?そんな時間なのだろうか…

 腕時計を見る…

「‼︎まさか…」

「どうしたのですか?」

「時計の針が反対回りのままだ…」

「え?先程まで水たまりの世界にいたから時計がそのままになってるとか…」

「確かにありあるかもしれない…少し歩いてみよう」

「はい。」

この世界は現実か…それを確かめる為に歩き人がいるかを恐る恐る確認する



20分程周囲を歩き最初に目覚めた公園のベンチに座った。

 「車がない…」

「あぁ…動物も…」

 今の所人の気配もなく、家は建っているのに車だけがないなど…先ほどの世界と似ていた。

「こんなに歩いて人がいないなんて…」

「成瀬さん今何時か、分かりますか?私のスマホの充電がもう無くなってしまって…」

「わかった。」

何度も見た腕時計を見る……?

目を擦り本当かどうかを確認する…が結果は変わらない。それでも信じたくなく、今度は頬を自分でつねる。

「痛い…」

「どうしたのですか!急に」

腕時計を取り彼女に見せる…

「これは…そんなまさか…」

「あぁ、きっとそうゆうことなんだろう。」

腕時計は、1、5、7、11、と時間と分が

ぐちゃぐちゃに並べられ針もぐにゃっと曲がって、明らかに時間が見れる状態でなく時空がめちゃくちゃになっていることを時計一つで証明していた。




どうやら俺達はまだ水たまりの世界に迷い込んでいるらしい…


〜あとがき〜

成瀬の過去とこの世界一体どんな関係があるのか、そして浅田は何故この世界にいるのか…2人の共通点は?など明らかにしていきます‼︎

 賢いヒロインに参加させていただきます‼︎

コメント等してくださると僕が飛び跳ねて喜びます⁉︎

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