第2話 この世界は?
同じ制服の女の子が駅の改札口前に立っていたんだ…
そっとやり過ごそうとし、こっそりと歩いて去ろうと思ったのだが…
パシャ
床を見ると水溜りがそこにあった。
「誰⁉︎」
彼女が音に反応しこちらをじっと見てくる。
「同じ制服?って成瀬さん?」
「あぁ、江南校2年の成瀬だ…アンタは?」
「私は、同じく江南高校2年3組の浅田奈央です。」
「浅田さん…あ〜学年1可愛いとかって呼ばれてる人か。どうして俺の名前を知っていた?」
「貴方は、学校じゃ有名ですから…」
「そうだった…はぁ…」
「それよりもどうして貴方もここに?」
「それはお互い様だろう?俺の場合、水溜りを踏んだら気づいたらここに。浅田さんは?」
「私の場合は…友達と別れた直後に水溜りに踏んでしまって…気がついたらここで、駅に行けば誰かいるんじゃないかと思ってここにいたのですが…」
「なるほど…互いに水溜まりを踏んでしまって気がついたらここにいる。それだと、水溜まりを踏んだ人がこの世界にいてもいいのに、今歩いた感じ浅田さんと俺しか居ないのは気がかりだな…」
「それと、この世界?この場所少しおかしいと言うか…」
「あぁ、車も動物もいないからな。」
「いえ…そうじゃなくて、どうも向きが反対向きになっているみたいなんです。」
「どうゆう事だ?」
「例えば信号機は左から順に、青、黄、赤と道路交通法で定められています。それに歩行者の信号機も上が赤で下が青とされているのに、歩いてみてきた感じ信号機の順が左から、赤、黄、青となっているんです。同じく歩行者用の信号機も上が青、下が赤となっているんです。」
「詳しいな…流石学年一位の事だけはある。」
「は、はぁ…それはどうも…」
浅田奈央(あさだ なお)
容姿端麗で学年一位の学力を持つ。彼女が人気な理由は、学力だけでなく運動も人並み以上に出来ることだ。そして何よりどの人に対しても優しく接している。このことから男子ならず女子からも人気という…告白して振られた男の数は計り知れない。それ程この学校にいる男子生徒のほとんどは彼女と付き合いたいと考えているそうだ。
「なんだよ…悪かった少しからかっただけだ。そんな事より互いに知っている情報を話してこの世界をある程度理解した方が良さそうだ。」
「えぇ、そうですね。」
「さっきも言ったが、俺が持っている情報は車も動物もこの世界にいないこれぐらいしか分からない。」
「なるほど…私も先程話した通りしか情報を持っていませんが、成瀬さん。」
「ん?」
「教科書出してみてください。特に数学か国語どちらか一つを出してみてください。」
「わかった。」
彼女に言われ背負っていたリュックの中から国語の教科書を出した。
「やっぱり…」
「何かわかったのか?」
「はい…普通国語の教科書は右から左へと開きますよね。」
「あぁ、右から1ページと続いているからな…⁉︎」
表紙を見る…
「裏が部分に表紙が書いてあるんだ?」
そこには、言語文化と書かれている表紙、反対向きにすると表紙が書かれているところに表紙は書いてなく、代わりに鳥が飛んでいる絵が描かれていた。
「この世界…ひょっとしたら普通の世界と比べて、全て逆向きになっているんじゃないでしょうか?」
俺は、左腕についている時計を見ようとしたが腕時計が左腕になく、右腕についていた。
「本当だ…でもこれ…どうやって気付いたんだ?」
「あれです。」
彼女が駅の時計に指を刺した。
その時計の針は確かに、反対向きに針が動いていた。
「じゃ、じゃあ!利き手も反対になってるとか?」
「いえ、成瀬さんが来る前に確かめましたが、利き手は反対になっていませんでした。」
俺は、床にあぐらをかいて座り情報を一つ一つ整理し、嫌な言葉が脳裏に浮かんだ。
「水たまり…反対………みずたまりの世界?」
「えっ?」
「信じたくもないが、今俺たちがいるのは
水溜まりの世界らしい…それなら時計…教科書の向きの反対向きも納得する。だが、何故?俺たち二人だけなんだ?」
「それは…わかりません。」
「分からない事を考えてもしょうがねぇよな…そういや浅田さんは、人気者だよなその割には居心地が悪そうな顔してるけど、あれはどうゆう事だ?」
彼女は、びっくりしたような顔をしてこちらをみていた。
「どうしてそう感じたのですか?」
「移動教室の時にチラッと見えるから、その度無理してるように俺には見えたんだよ。
学年一の美女と成績優秀なのが足枷なのか?」
「いえ‼︎そんなことは…そんな…ことは…」
「悪かった…話さなくていい。」
「え?」
「何か事情があるのはその顔をと、動揺を見ればわかる。それに首突っ込むのはナンセンスだろ?」
「は、はぁ…」
話そうとしてる時の彼女の顔が今にも泣き出しそうで、それを見たくない俺が無理矢理に会話を終わらせた。
(クソ…あんな顔されたら止める他ないだろ…)
「成瀬さんは、嫌じゃないのですか?学校に行くの」
「俺は…嫌じゃない。もう嫌な顔されるのも陰口も慣れた。だから学校に行っても何も思わないし、何かをしようとも思わない。」
「やっぱり…じゃあ、あの事件は貴方がやったわけじゃないのですね?
複数の男子生徒を障害が残るまで殴った事件
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