ぬいぐるみのお医者さん

夕暮 春樹

第1話

私のお父さんはお医者さんです。

でも、普通のお医者さんとは違って、ぬいぐるみ専門のお医者さんなんです。お父さんの所には、汚れていたり、ぬいぐるみが破れて綿が飛び出ていたり、毎日たくさんのぬいぐるみがやってきます。

私は時々そんな汚れたぬいぐるみを洗ったり、お父さんのお仕事のお手伝いをしています。

お手伝いを始めたきっかけは、私が大切にしていたぬいぐるみの腕がとれちゃって、悲しくて泣いている時にお父さんが綺麗にぬいぐるみを治してくれました。その時のお父さんが私にはとてもかっこよく見えて、私もいつかお父さんみたいになりたいって思って始めました。

それから、お手伝いをするたびにお父さんは、


『ぬいぐるみ一つ一つにも心があるんだ。だから、丁寧に優しくしてあげないといけない。そうすれば、ぬいぐるみもお客さんも喜んでくれる。』


って私にいってきます。

私は最初はお父さんが言っている意味がわかりませんでした。そんな私をみてお父さんは、まだ難しかったかって笑いながらいいます。お父さんが言っていることがわからなくても私は、お父さんの言うとおりに丁寧に優しくしました。そうしていればきっとお父さんの言っている意味がわかると思ったから。

するとある日の夢に、今までに治してきたぬいぐるみ達がでてきて一緒に遊んでくれる夢を見ました。

そのことをお父さんに話したら、きっとぬいぐるみ達がありがとうって恩返しに来たんだよって言いました。私はその言葉を聞いて、お手伝いするたびにお父さんが言っていた意味が少しわかったきがしました。

それからも時々、夢にぬいぐるみが出てきて、私はそれが嬉しくて、前よりもぬいぐるみを洗う時も、傷を治す時もよりいっそう心をこめて、丁寧に優しくするようにしました。

大人になった今では、お父さんの言っていたこともわかって、お父さんのようなかっこいいお医者さんになれるように頑張っています。

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