36.とっておき、ブワー

「はいはい、七番でも百番でも千万番でもご自由に」

私はにやつきながら言った。


「もう、それじゃあ始めますよ」

聖女は気を取り直して、私と手を組み祈った。


私は声に出してオノマトペを出した。私とピスカを中心として放射状にオノマトペを拡散するには、わざわざナレーションヲライトを使うよりも声に乗せた方が都合がいい。


「パーッ」


という文字が絶えず回り続け、光の環となり、私たちからカンキャクゾンビたちの方へと大きく広がっていく。


緑の腐乱霧は、光に浸食され晴れていく。


ゾンビたちは光から逃げるように観客席に戻る。が、そこでついに光に包み込まれる。

腐敗した肉体はさながらドクターフィッシュに食まれるかのように浄化され、彼らの肌に紅色の血液の循環を取り戻させた。


「お、俺たち何を」

「覚えてないのかゾンビになってたんだ」

「体ドロドロで視界も暗いし怖かった〜」


「歯アアアアアああああああああ阿亜合唖操!???」

コロシアム中央に鎮座する、汚いヴァンパイアは狼狽えた。


すると今度は荒ぶった。

「粉アッタら!!!!目障りな乱入者ど桃、騙され屋すい愚かな観客ド桃、使えない演者弩腿、全員会場ごと消えてグランドフィナ荒ダッッ!!!!!統べて餓鬼えた美しいエンディングを、世界で唯一私だけが見るこ咎でキルッッッ特別なエン泥ングをッッッ私だ汚ッッッ!!!!!!!」


大口を天に向けると、化け物は激臭のする呼吸をした。周囲の空気を、空の雲をも巻き込み、巨大な掃除機かのように暴風を起こす。そしてそこにあったのは、ドブのようにどす黒い色の、ばかみたいにでかい闇のエネルギー球だった。


カキはその場に倒れていたキャトル能力者のUFOメガホン娘を揺すった。


「おい、起きろ!全員をここから避難させるんだ!...くそっ、起きやしない」


「…私の力でも、あれを浄化するほどは......」


「私にいかせてください」


「レア」

レアは頷いた。


「浜辺で包丁を壊した時みたいに、ステータス移動で一撃にすべてを乗せます。」


「ま、待ってください!でももう、あなたには体力がちょっとしか残っていない。数値上は完全回復したように見えていても、肉体的ヒットポイントの値と魂の消耗はまったく別問題なんです!

今の状態でまたあんなハイリスクハイリターンな技を繰り出したら最後、あなたは………………」


身を案ずるピスカに、レアは笑って言った。

「私は、一か八かのギャンブルなんてしませんよ。とっておきの策があります。とびっきり安全で…………が。」


するとピスカは振り返って、大声で言った。


「皆さああああん聞いてくださあああああああああああい」


「な、なんだ!?」

観客たちはざわついた。


「今から私がこの拳で、あの球を打ち返して、空の向こうまでぶっ飛ばします!だけどそのためには、私だけの力じゃなくて......皆さんの力が必要です!


私のスキル<ステータス移動>で、皆さんのステータスを一時的に貸していただけないでしょうか!?

観客参加型ショーです!そういうの、好きでしょう!?」


観客たちは少し顔を見合わせた。そして直後。

「おおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」

「きゃああああああああああーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」

「どうやればいいんだ!教えてくれええーーー!!!!!!!!!!!!」


「他者からステータスを一部奪取!?恐ろしいスキルだな...あんたが悪人じゃなくて心底良かった。」

捜査官が言った。


「いえ、一方的に拝借できるわけではありません。"私に快くステータスを貸与する気があることを明確に証明できる"。

その上で、その人が私に渡したい分だけを流すことができる。」


「難しい話だけど.....レアになら、私はいくらでも貸す。レアは倍にして返してくれるから。パフェの桜桃も、砂のお城も。それがわかってるから貸す。わかってなきゃ貸さない。私はもう、わかってるのにわかってないフリなんてしない。」


「エクリちゃん…...!」


ピスカは嬉しそうに一瞬目を瞑って、そして目を開けた。


「......簡単にします!ピスカさん、水晶玉を貸してくださいませんか?」


「はい!」「ありがとうございます!」


レアは小さな水晶玉を、天に向かって掲げた。


「私とパーティメンバーになってください!そしたら、移動するステータスを決める表示が出るはずです!」


すると瞬く間にレアの目の前にステータスの奔流が表示された。


<アレックスがパーティに加入しました。ステータス値が45加算されました。>

<マリアがパーティに加入しました。ステータス値が78加算されました。>

<ルッコがパーティに加入しました。ステータス値が120加算されました。>

<エミリーがパーティに加入しました。ステータス値が99加算されました。>

<トーマスがパーティに加入しました。ステータス値が34加算されました。>

<ソフィアがパーティに加入しました。ステータス値が56加算されました。>

<ダニエルがパーティに加入しました。ステータス値が23加算されました。>

<イザベラがパーティに加入しました。ステータス値が67加算されました。>

<マルコがパーティに加入しました。ステータス値が89加算されました。>

<アナがパーティに加入しました。ステータス値が11加算されました。>

<オリビオがパーティに加入しました。ステータス値が90加算されました。>

<ルイがパーティに加入しました。ステータス値が33加算されました。>

<カミロがパーティに加入しました。ステータス値が22加算されました。>

<フィリップがパーティに加入しました。ステータス値が77加算されました。>

<エリザがパーティに加入しました。ステータス値が44加算されました。>

<アネットがパーティに加入しました。ステータス値が88加算されました。>

<マックスがパーティに加入しました。ステータス値が15加算されました。>

<ジュリアンがパーティに加入しました。ステータス値が66加算されました。>

<リネットがパーティに加入しました。ステータス値が101加算されました。>

<オスカーがパーティに加入しました。ステータス値が25加算されました。>

<サラがパーティに加入しました。ステータス値が150加算されました。>

<ルネがパーティに加入しました。ステータス値が60加算されました。>

<エリックがパーティに加入しました。ステータス値が200加算されました。>

<ナタリーがパーティに加入しました。ステータス値が37加算されました。>

<ルシウスがパーティに加入しました。ステータス値が82加算されました。>

<カロリーヌがパーティに加入しました。ステータス値が45加算されました。>

<アントがパーティに加入しました。ステータス値が300加算されました。>

<リュックがパーティに加入しました。ステータス値が19加算されました。>

<クララがパーティに加入しました。ステータス値が72加算されました。>

<セバスチャンがパーティに加入しました。ステータス値が88加算されました。>

<マチルダがパーティに加入しました。ステータス値が54加算されました。>

<フランソワがパーティに加入しました。ステータス値が99加算されました。>

<ルシアがパーティに加入しました。ステータス値が123加算されました。>

<エドワードがパーティに加入しました。ステータス値が77加算されました。>

<アデルがパーティに加入しました。ステータス値が34加算されました。>

<マーティンがパーティに加入しました。ステータス値が45加算されました。>

<カタリーノがパーティに加入しました。ステータス値が89加算されました。>

<フリドリッヒがパーティに加入しました。ステータス値が150加算されました。>

<エヴァンナがパーティに加入しました。ステータス値が23加算されました。>

<ルドルフがパーティに加入しました。ステータス値が300加算されました。>

<ソフィーがパーティに加入しました。ステータス値が12加算されました。>

<アリョーナがパーティに加入しました。ステータス値が67加算されました。>

<スイーティがパーティに加入しました。ステータス値が99加算されました。>

<イリーナがパーティに加入しました。ステータス値が56加算されました。>

<オスカーソンがパーティに加入しました。ステータス値が78加算されました。>

<リナがパーティに加入しました。ステータス値が34加算されました。>

<エリックがパーティに加入しました。ステータス値が101加算されました。>

<セリーヌがパーティに加入しました。ステータス値が19加算されました。>

<フランクがパーティに加入しました。ステータス値が72加算されました。>

<アナスタシアがパーティに加入しました。ステータス値34加算されました。>


「うおおおおおおおおおきたあああああああああ

力が、力がみなぎってきます!!」


その間も、ステータスの集積は絶えず続いていた。


「死ねえええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」

汚らしい吸血鬼はのけぞると、勢いつけて巨大な口から闇の球を吐き捨てた。


立ちはだかったレアは、自身の目の前を流れるメッセージの中に、友人たちの名前を見つけた。

レアは微笑むと、すぐに視線を的に移して、そのまま拳を繰り出した。


「私たちは、生きまあああああああああああああああす!!!!!!!!!!」

レアの小さな拳は、巨大なエネルギー球に激突。


そして、ぐぐっと押し返し、押し出していく。


「ぐぐぐぐググ愚具偶ゥこんなトコロ添消えるわけには..………….そ、喪だァ……………!!」

ホルダーはにやりとした。


「お前にい従兄弟をを教えテヤる、信じガ胎事実だろうガなァ?」


「なんですか、言ってみて下さいよ」


「オシロ城の元王女、レア・オシロ、お前の両親ヲ殺し、城を壊したのは、ほかでもナイ。

お前が恩人だと慕っている、ムシオデカズサ本人だあああアア...!!!!」


「………そんなこと...」


「ぷっ、ふはははハハハ母は!!!!!お前は騙されてい単だよ、せいぜイ苦しめ!!!!!!」


「そんなこと...…!!」


「フハハハ亜九九繰具軍偶愚ハハハハハ」

高笑いをする化け物。


「とっくに、知ってますよ!!!!!!!!」


「なんだとぶぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!!?!?!?」

拳によって突き上げられたエネルギー球とともに、ホルダーの身体も上空へと吹き飛ばされる。


空へブワーっと衝撃波が走り、暗雲は四方へと拡散。


レアは私に振り返った。

どこまでも澄み切ったきれいな青空が、広がっていた。

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