32.ちょっと強い力でぎゅっと
「ユニークスキルを見ればわかる通り、彼女の種族はとても特殊な生態をしているんだ……!!
今までに殺してきた相手の血液を身につけることでのみ、生きながらえてきた。
だがその供給が切れると…パタリ!死んでしまう、ああ今更戻そうとしてももう遅い。
二度と生き返ることはない……………!
そしてそれは何よりも、ムシオデカズサ、あなたの腕の中で眠るその亡骸が証明している…!!!」
「それは嘘ですね」
意気揚々と語るホルダーに、探偵聖女ピスカは刺すように言った。
「ご存知の通り、私には人の魂が見える。彼女の魂がまだその肉体に宿っているのが見えます。
眠っているのは、無理矢理スキルを解除させたために起きた副作用でしょう。
ビーチで私が<聖なるベール>をぶつけた時と同じです。」
「それこそ嘘だな!魂が見えるのはお前だけだ!証明する術がない!」
「ならば俺も証言しよう。」
捜査官カキは眼鏡をカチャリと鳴らして言った。
「俺のユニークスキル【
そこの探偵は嘘をついていない。一方で、お前の言葉は苦し紛れの嘘まみれだ。」
「だったらなんだ!それも結局、お前自身が嘘をついていたら意味がないだろう!
バール・ゼ・ブーの疑似餌喰らいだ!
それよりどうだムシオデカズサ、お前の腕の中にいる小娘は寝息を立てているか?していないだろう!呼吸を!
それにおぼえているか!?そいつが今まで生きながらえてきたのは、大勢を殺してその血を身につけていたからだ!
何だっけ、お前言ったよな?人殺しになんかさせない?絶対に?フハハハハハ!!!そいつは最初っから人殺しの殺戮者なんだよ!!!!!!ハーハハハハアハハハハアアッハハアハハハ!!!!!!!!!!!
結局お前は、何も守れなかった!!!!お前らごときが!!!私に刃向かったからだ!!!!お前らレアスキル保持者は、私の道具として一生使い込まれるのがお似合いなんだよ!ですよねえ皆さん!!私は皆様に楽しい時間を過ごしていただくために、最大限努力いたします!」
「流石ホルダー!」「よっ!ジャスパーニャ大陸1のサーカス団!」「こんなリアルでシリアスなショー見せてくれるのはやっぱあんただけだよ、応援してるー!」
「どうもどうも、心より感謝申し上げます。これからもホルダーのサーカス団は更なる高みへと飛び上がっていけるよう、精進いたします!」
「飛び上がるだと?どうやってだ。
いくら民衆を洗脳して支持を集めようと、お前が逮捕されて牢屋にぶちこまれるのは変わらない。」
カキはそう言って睨み付けるが、男はニマニマと不気味な笑みを浮かべるだけだった。
「……十分にわかった。お前が話せば話すだけ時間をウンコに変える便所野郎だってことがな」
そう言いながらカキは手錠をかけようとする。
しかし手錠をかける場所がない。
「あ…ごめん」
私は言った。
「気にするな、まあ、どうにか持っていく」
捜査官はそう言ってレシーバーを手に取り、どこかへ電話し出した。
「カズサさんカズサさん、エクリちゃんのことなんですけど……」
レアがとんとんと私の肩を敲いた。
「最初に倒れた時も息はしてなかったのでー」
「ああ、うん。大丈夫。鼓動は鳴ってるし。わかってるよ、エクリちゃんは、ちゃんと生きてるって。……ふふっ」
「えっ、エクリちゃんがちゃんと…ふっ、はい、そうですね」
レアはにこっと笑った。
「あ、あとそれと、エクリちゃんのステータス見たじゃないですか。その時ついてたLv66の狩人ってジョブ、一度でも人を殺すとかなりの長期間弱体化してしまうものらしいんです。それであの俊敏性なら、人を殺めたりはしてないんじゃないかな…と、私は信じてます。そりゃ、絶対とは言い切れないですけど……」
「そ、そっか。教えてくれてありがとう。まあ、どっちだって私はエクリちゃんとレアと三人で行くつもりだったけどね!」
「ふふっ、はい!」
「本当にいいの?」
「っわあっ!?」
私はつい驚いた。エクリは起きたようだ。
「おはよう、エクリ。……もちろん!私はカズサ。ムシオデカズサ。これからよろしくね」
私は向き合ったエクリに、手を差し出した。
「……よろしく」
エクリは私の手を(本人はそのつもりはないのかもしれないけれど)ちょっと強い力でぎゅっと握ると、そう言った。
一見無表情に見えてほんのわずかに微笑むエクリ。それにレアも笑いかけた。
「私は………」
「ん?」
突然声が聴こえてきた。後ろを振り返る。
「私は………………ホルダー。
私の関係ないところで…笑うな、楽しそうにするな、盛り上がるな………!!」
男は達磨姿のまま、そう喚きだした。
「私はこのジャスパーニャ大陸一のサーカス団、ホルダーのサーカス団団長兼社長兼・営業兼・奇術師兼・調教師の、ホルダーだぞ……」
そして叫んだ。
「私は………………魔王軍四天王の一角【飼い殺しのホルダー】だぞ………………!!!!!!!!」
すると空がどこかからやってきた真っ黒い雲で覆われだし、ホルダーの身体は風船のように膨らんでいく。
そこに激しい雷が落ちた。
落雷を受けたホルダーは、巨大で禍々しい姿へと変貌を遂げていた。
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