21.Question1ビーチでの行動
「砂浜に、一体何があるってんだよ...?」
うるさくしていた赤アロハは、怖がった様子で聞いた。
「何もない!」
私は言った。
「はあ?」
「何もない!じゃなくて、何もなくなった!!ですね」
「はああ???」
「事件が起きた直後は砂浜にあったはずのものが、今はなくなってるんです。綺麗さっぱりね」
探偵聖女ピスカは言った。
「事件が起きた直後に砂浜にあったもの...?それって-」
観光客の1人が訊いた。
私は言った。
「殺された人たちの血だよ。
赤黒く染まっていたはずの砂浜が、今ではすっかりなくなってる」
「ビーチ側の人間が掃除したんじゃないの?」
観光客の1人は当然の疑問を投げかけた。
「ビーチにずっと血をそのままにしておくのは、衛生的にまずそうだし...」
「そうだそうだ!」
うるさい男は便乗した。
「失礼しまーす特殊清掃ギルドでーす。どいてくだ———えっ?」
全身ゴムの装備をした集団がやってきて、そして驚いていた。
「あの...ここでその、殺人が起きて砂浜が血だらけって聞いたんですけど......合っ...てますよね?」
あたりを見渡しても、血はどこにもなかった。
せいぜい赤いビスカスの花飾りや、赤い髪の人、赤いアロハシャツなんかの類しか見当たらなかった。
無駄足になった特殊清掃ギルドの人たちは、とぼとぼと帰っていった。
「というわけで、
『砂浜に染み込んだ血が清掃業者の方に綺麗さっぱり掃除されてビーチの外に持ち出された』
という線は消えましたね」
「砂で掘って埋めた跡なんかも、どこにも見当たらないしね。」
「それじゃあ血はどこに...?」
「それはね-」
私がそう言いかけると
「いや、いやいやいや!いや、なんでみんな言わないんだよ!」
赤アロハ男は突然声を上げた。
「砂浜の血なんてそんなの、海に流されたに決まってるだろ!?」
「.........」
さっきまでと同じようにそうだそうだ!とは……誰も言っていなかった。
その場がしんと静まり返っていた。
「おい嘘だろ…ま、まさか.........お前らがっ、変なスキルでここにいるみんなを洗脳して、頭を悪くしてるんじゃ...」
赤は青ざめた。
「そうじゃなきゃこんな、ガキでも気付くようなことを、誰も言わないはずねえだろ!!!
やっぱり、お前が黒幕だったんだな!!!」
そう言って、探偵聖女を指指した。
「みんな騙されるな!こいつに洗脳されちゃダメだ!」
「………………」
叫ぶ男とは対照的に、未だその場は静まり返っていた。
「.........えっ?」
騒いでいた男は気がついた。ここにいる全員から、注目されていることに。
それも白い目や、疑いの目で。
それも当然だった。
このビーチに遊びに来た人なら、絶対に言うはずのない内容を口走っていたからだ。
「お、おい、嘘だろ?もう全員洗脳されて-」
「今ここにいる人は誰1人、洗脳スキルなんか持っていないよ。それは私が証言する。」
私は言った。
「はぁ?そんなの信じられるかよ!」
「それ以前に、問題なのはそこじゃないですよね」
ピスカは鋭く言った。
「はぁっ、だ、大問題だろうが!」
男はやたらムキになって訊き返した。
「では、ここで問題です。」
ピスカが言った。
「はあ!?」
「ビーチに遊びにきているはずなのに、本来ビーチではしないはずのことを自らすすんで行っていた、変わり者がいます。さあ、誰のことでしょうか?」
「そ、そんなの決まりきってる!てめえのことに決まってるだろ!!
こんなしょうもない探偵ごっこなんかに付き合わせやがって!!
早く帰らせろよ!!」
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