16.ぷるぷる驚異のカルマポイント

「おい、こいつが犯人だろ!」

「そうだそうだ!」「そうよそうよ!」


「うっ、うぐぐぐ...」

責め立てられ、流石に涙目になる聖女。


近くにきた私は、聖女がトロピカルジュースの中に入れたミニ水晶玉を覗いた。

すると...


<秘匿されているステータスを全て開示しますか?>

メッセージが表示された。


おお。


「はい。開示します。」


すると本来のステータスが表示された。


———


名前:ピスカ=アラカルト=トーストレイズン

種族:人間

年齢:19

職業:聖女

カルマポイント:2373361010310037


適正職業:

信徒(F):LvMAX

神官(D):LvMAX

魔法使い(D):未経験

探偵(C):Lv26

聖騎士(B):未経験

魔法戦士(B):未経験

聖女(S):Lv58

射倖への尽力者ホーリーギャンブラー(EX):Lv255


保有スキル:

パッシブ:自己沈静化V、範囲沈静化V、聖なるベールX、豪運XXX、悪運XXX、優れた聴覚IV、光輝神ルミナスの祝福、論理神ロゴスの祝福、娯楽神モカダイスの祝福

アクティブ:祈祷X、浄化X、鎮魂VIII、治癒IV、範囲治癒III、観察眼X、拘束V、Extra/心魂透視X、ステータス秘匿XX、感度上昇XX、範囲感度上昇XX


———


「きゃああああああああああああ!!!」


悲鳴が上がった。

その、でたらめなカルマポイントに。


「ににににに2373兆3610億1031万37カルマポイント!?!?!?!?

ここここんなのッ!?あああありえない数値だっ!!!!!」


取り乱した男は眼鏡をクイッとする手が激しく乱雑に震える。その振動で、そのままバキバキと眼鏡が割れる。


「カルマポイントって、凶悪殺人犯でも10とかだろ!?」


「100になったら邪神の依代になるとかって話なんでしょ!?

じゃあもう彼女は...邪神!?!?!?」


「こんなの絶対<渚の殺戮者>よ!みんな逃げないと!殺されるううう!!!」


「ま、待ってください!!」


「みんな聞いて、彼女は<渚の殺戮者>じゃないと思うよ!!」


ガヤガヤと騒ぐみんなの声よりも大きく、私は声を張って言った。

「まず、カルマポイントは強い罪悪感でも貯まる」


「人をたくさん殺したからだろ!!」


「これを見て。EXジョブ<射倖への尽力者ホーリーギャンブラー>Lv255って。

これのせいなんじゃないの?」


「ど......どういう意味だよ!」

「そうだそうだ!」

他の観客たちざわざわとする。


「Lv255に上り詰めるほどの、度重なるギャンブルのスリルでそうなったんじゃないの?」

私は聖女を見て言った。


すると聖女は唾を飲み、意を決して言った。

「........は、はい、そうです!そうなんです!!

私恥ずかしながら、ギャンブルにハマってしまいまして...その興奮が忘れられなくて、何度も何度も繰り返しているうちにこんなことに...


だから私、人殺しなんかやってません!!!

聖女スキル<聖なるベール>の効果で邪悪な存在は私に触れることができないから、邪神にもなってません...!!!


聖女がギャンブルにハマるなんて、罪深すぎますよね...ああ神よ、どうか私の罪をお許しください...」


聖女のその泣き顔を見ると、徐々にみんな、渋々戻ってきた。


「ふんっ、この俺は最初から、わかっていたがな」

取り出した予備の眼鏡をかけなおした男は、クイッとする。


「というか、聖女様がギャンブルに大ハマりしてるなんてさ、私は大好物かも。」

私は聖女に言った。


「そうですかね...?」

聖女は困り眉で訊いた。


「うん。」


「......」


彼女は少し目を瞑って、そして開けた。


「ふう、信じてくれてありがとうございます!それじゃあ推理を再開しましょうか!」

ピスカ=アラカルト=トーストレイズンはさっきまでの泣き顔はどこへやら、すっかり元の調子に戻って言った。


すると男が言った。

「じゃ、じゃあ訊くけどよ、そもそもその凶器の包丁、女子更衣室で見つかったって話だったけど、女子更衣室の具体的にどこにあったんだよ?」


すると白髪の少女がまた、ぷるぷると震え出した。


そんな白髪の少女を一瞥すると......聖女は正直に答えた。

「包丁はですね...のバッグの中から飛び出て、ころころと転がって来たのですよ。」


観光客たちはどよめいた。


— — —

おまけ

ギャンブル中毒の探偵聖女 ピスカ=アラカルト=トーストレイズン

スキル取得ルート


(S)聖女スキル

パッシブ:自己沈静化、範囲沈静化、聖なるベール、光輝神ルミナスの祝福

アクティブ:祈祷、浄化、鎮魂※、治癒、範囲治癒


(C)探偵スキル

パッシブ:豪運、悪運、優れた聴覚、論理神ロゴスの祝福

アクティブ:観察眼※、ステータス秘匿、鎮魂※、拘束


(EX)射倖心への尽力者ホーリーギャンブラースキル

パッシブ:豪運、悪運、娯楽神モカダイスの祝福

アクティブ:観察眼、感度上昇、範囲感度上昇、心魂透視ソウルウォッチャー


☆解説(システム的仕様)

・同じスキルを重複習得すると、効果が強化されます。


・<鎮魂>を聖女と探偵、<観察眼>を探偵と射倖への尽力者ホーリーギャンブラーで重複習得したことが条件解放となり、<心魂透視ソウルウォッチャー>を獲得しました。


☆解説(ピスカ本人について)

・聖女のパッシブスキル<自己沈静化><範囲沈静化>が常時発動しているが、ピスカはギャンブル中にはより強い<感度上昇><範囲感度上昇>をかけてスリルを味わう変態です。


・ピスカが初めてギャンブルをした日のこと。

聖女がギャンブルをやっている。ただ単にそれだけでは、娯楽神モカダイスはそこまでの興味を持たなかった。


"だって、そういうギャップのあるキャラなんか腐る程いるかも。そんな陳腐化した属性は、もはやギャップとは呼べないかも。"

"まあ嫌いなわけじゃないし、見てやるかも。暇つぶしくらいにはなるかも。"


そして娯楽神ダイスは目撃した。

今まで聖女として積み上げてきた賢さを、ギャンブルでより強いカタルシスを得るために惜しげもなくフル活用してみせたピスカの"射倖心を得るために尽力する"という矛盾した変態性。


聖女がギャンブルにまんまとハマってしまうなどという記号化された展開ではなく、ピスカ=アラカルト=トーストレイズン本人自身がまじまじと見せつけた"個の変態性"に、娯楽神モカダイスは大いに歓喜していた。


ギャンブルをすることで、通常ならCランクジョブ<ギャンブラー>の適正が手に入るところを、娯楽神モカダイスの介入よって、EXジョブ<射倖への尽力者ホーリーギャンブラー>の適正が入手されることになった。

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