15.ぽとんと緊張ステータスオープン
海の家で人がごった返しながらも、探偵聖女は私とレア、そして白髪黒ケープの彼女を同席させた。
桃色髪の探偵聖女はトロピカルジュースをストローで吸うと、心底美味しそうに笑顔になった。
「あっ、そうだ。私がスキル<
なのでここで皆さんに見せますね。」
聖女はポケットからビー玉......いや、手のひらサイズの小さな水晶を取り出すと、透明の袋に入れた後トロピカルジュースの中に「ぽとん」と落とした。
すると海の家の天井に、ステータスが表示された。
———
名前:ピスカ=アラカルト=トーストレイズン
種族:人間
年齢:19
職業:聖女
カルマポイント:??? ※いずれかのジョブLvが300以上の場合閲覧可能
適正職業:
信徒(F):LvMAX
神官(D):LvMAX
魔法使い(D):未経験
探偵(C):Lv26
聖騎士(B):未経験
魔法戦士(B):未経験
聖女(S):Lv58
秘匿(C):??? ※いずれかのジョブLvが300以上の場合閲覧可能
秘匿(EX):??? ※いずれかのジョブLvが300以上の場合閲覧可能
保有スキル:
パッシブ:自己沈静化V、範囲沈静化V、聖なるベールX、豪運XXX、悪運XXX、優れた聴覚IV、光輝神ルミナスの祝福、論理神ロゴスの祝福、???
アクティブ:祈祷X、浄化X、鎮魂VIII、治癒IV、範囲治癒III、観察眼X、拘束V、Extra/心魂透視X、???XX、???XX、???XX ※いずれかのジョブLvが300以上の場合閲覧可能
———
「聖女Lv58!?」
「す、すげえ」
「す、すごい...ピスカさま、そう呼ばせてください...!」
驚く観光客たちが口走った。
「ふふん」
得意げになる聖女。しかし...
「いや、おい!カルマポイントとジョブが隠されてるの、怪しいだろ!」
「......えっ!?」
聖女は自分のステータスを見た。
「表示の???...これって、ステータスの秘匿よね!?
秘匿されている
「ねえレア、EXランクって何?」
するとレア...ではなく、突如現れた眼鏡の男が
「ならばこの」
眼鏡をクイッとして
「俺が説明してあげよう」
と答えた。
眼鏡の解説キャラ......
しかし得意げなその男の一人称は、僕ではなく俺。
実直なガリ勉君というよりは、自信家のエリートインテリキャラといった感じだった。
「全てのジョブにはSABCDEF...というようにランクが付けられている。これは当然だな?
ランクの認定は、レベルを上げることで手に入るスキルの強さや珍しさ、他にはレベルの上げにくさ等によって決められているが...
適性獲得条件が限定的すぎるあまり、ユニークスキルでもないのに習得者が世界中探しても1人や2人しかいないような極めて希少なジョブには<EXランク>の称号が与えられる。」
「へえ、そうなんだ。」
私が素っ気無い返事をした割に、眼鏡の男はふっと得意げに鼻を鳴らした。
「そんなのどうでもいいだろ!この聖女が犯人かもって話はどうなったんだよ!」
赤アロハ男が言った。
「そうだそうだ!秘匿しているステータスを見せなさいよ!ついでに...いますぐ服を脱いで裸も見せなさいよ!」
陰湿女。
「......」
聖女は左手を顎に当てて、そっぽを向きながら黙って何か思案していた。
「どうしてこうなったのか、わからないようだな。ならこの俺が教えてあげよう。」
聖女を見て狼狽していると思ったのか、エリート眼鏡は言った。
「スキル<ステータス秘匿>は本来、ステータスを秘匿していること自体が秘匿される。だから聖女サマ、あなたの計画通りいけば...」
眼鏡をクイッっとする。
「カルマポイントは0として表示され、EXジョブがあること自体、そもそも表示されないはずだった。
高レベルの探偵ジョブであることが知れ渡り、あなたはとてつもなく信用され、尊敬されるはずだった。何も考えていない、おバカな奴らにな。」
「なんだと!」
赤アロハ男が言った。
「だが、そうはならなかった。それは何故か、わかるか?」
「<観察眼>、ですよね」
聖女本人が返した。
「正解だ。まあ、これだけ説明すれば」
眼鏡クイッ
「想像がついて当然だろうな。
<観察眼>系統のスキルを持つ者が近くにいる場合、ステータス秘匿を使用していることが鑑定で看破されるようになる。
しかしそれにしても、Lv300以上でしか解けない秘匿を看破するとは...
秘匿されていることそのものを見破るだけでも、設定された制限Lvの9割が必要だと言われている。
つまり少なくとも合計ジョブレベルLv270は超えているということか、相当な手練れらしい。」
「そんなヤツがこの中に、いや、この世に存在するのかよ...!?」
観光客たちがざわざわと、周囲を見回し合う。
「そんなとんでもない達人...いや、とんでもない変態がこの中にいるということだ。
もしかしたら、そいつこそが<渚の殺戮者>かもしれないな?いや、ほとんどの確率でそうに違いない。」
眼鏡をクイッとした。
その一言で、あたりにゾゾゾッという緊張感が走った。
ピリついた空気感を味わいながら男が満足そうに、眼鏡をクイックイックイックイックイックイックイックイックイックイックイックイッする音もあたりに響いた。
「...と、とにかく、ジョブの合計Lvが300以上の人がいないと、ピスカさんの本当のステータスは見られないってことですね。」
レアは一言でまとめた。
「Lv270でも信じられないのに、Lv300以上なんているわけないだろ!どうしても隠したいらしいな!聖女さまよぉ!!」
「そうよ!はやく正体を現しなさいよ!こ、この...殺人鬼!」
「そうだそうだ!」
「Lv300以上...?」
私は引っ掛かった。
「カズサさん」
レアに声をかけられた。
「......あっ、私かぁ」
「わかってなかったんですか!?」
そうだった。私の漫画家レベルは192万8113レベルなんだった。
私が超天才漫画家であることはあまりにも公然の事実すぎるために、うっかり失念してしまっていた。
「いや、ごめんごめん。本当はわかってたよ。
言い争いを見るのが楽しくて静観してただけだから!」
「カズサさんのこと、嫌いになっちゃいそうです...」
「嫌いになってみる?」
「い、いえ......」
レアは顔を赤くして目を逸らした。
私はくすっと笑うと、椅子ごと持っていって、聖女様のすぐ真横に来た。
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