スーパー☆オノマトペ無双〜追放された宮廷画家は、転生特典の『口からオノマトペが出るチートスキル』で無双する。お宅のお姫様も連れて行きます。戻ってきてと言われてももう遅いんだからねっ!〜
14.手錠は光る、容疑者集まる、聖女はスキルでカチカチチェック
14.手錠は光る、容疑者集まる、聖女はスキルでカチカチチェック
「おい、どういうことだよ!
こんな辛気臭いとこさっさと抜け出そうと思ったのによお!
変な光の柵があってビーチの外に出れねえじゃねえか!
しかもなんなんだよこの光ったブレスレットは!」
赤いアロハシャツを着た、観光客の男が手首を見せて喚いていた。
「知らないうちにつけてて、外し方もわかんねえし、意味わかんねえよ!」
「それは手錠です。」
「手錠だ〜!?」
「ふぅ。これで全員揃いましたね。」
そう言ったのは、桃色の髪の聖女だった。
「このビーチにいる全ての容疑者に光の手錠をかけました。私を含めてね」
自分にかけた光の手錠を見せた聖女は、探偵のような格好をしていた。
パイプを口にくわえていたが、煙は出ていなかった。
そもそもくわえているだけで、吸っていないようだった。
「先ほどの事件、皆さん知っているかと思われます。目の前で友人や恋人が死んでしまった方、後から野次馬に寄ってきた方、様々だと思いますが...」
「うるせえ、長えよ!結局何が言いたいんだよ!早く帰らせろよ!!!」
「この中に殺人鬼がいます。
以前から噂になっていた連続殺人鬼<渚の殺戮者>が。
その証拠に、先ほど女子更衣室で包丁が見つかりました。
この、血がべったりとついた包丁が。」
みんなざわめき、そしてキョロキョロと周りを見回し合っていた。
私はわざと、野次馬みたく大きな声で聞いてみた。
「でもその話、本当なのかな?
ここにいるのはみんな人間だし、犯人は魔物かもしれないよ?
ゴブリンやコボルトなら包丁も持てるんじゃない?」
「そうだそうだ!」
用意されていたかのように、想像通りの便乗ヤジが飛んだ。
「それに犯人が人間だったとして、もう帰っちゃってるかもよ?」
すると
「それはありません。」
聖女は答えた。
「例の事件発生後に、このビーチから出たのは救急車と霊柩車とご遺体だけですから。」
「なっ、なんでそう言い切れるんだ!」
「そうだそうだ!」
「チェックしていたからですよ、私のスキル<
「そッ、<
私はわざとらしく言った。
すると聖女はわずかに嬉しそうに「ふふっ」と笑った。
「生者の魂を視認できるスキルです。
本来はこのビーチにどれくらいの人が入るのか、カウンターをカチカチやって数えるバイトでここにいたのですが、心魂透視が使える私は、ビーチでくつろぎながら数えることができたのです。」
得意げに言った聖女だったが、数秒後、こほんと咳払いをする。
そして歩き始めた。
人差し指を立てて数えるように上下に揺らしながら。それに合わせて光の手錠の鎖がたゆたゆとなびく。
「それでこのビーチにちょっとでも、それこそ、足の小指の先っちょだけでも入ったような人間はすべて...
いいえ、なんなら人間でない魔物だったとしても、魂を持つ者全員を私はカウントしていました。
そして事件発生以降、このビーチから出た魂は誰一人いませんでした。
事件発生の前でも、42分遡らないと最後に出た人は見つかりませんよ。」
「じゃ、じゃあそいつが犯人だろ!あんたがこんな変なスキルを使って手錠を作ったりするくらいだ!
魔法でトラップを仕掛けておいて、42分前に逃げ出したんだろ!」
赤アロハ男のその言葉に、私はここぞとばかりに便乗野次を入れた。
「確かに、42分って数字も怪しげだしなあ!?
だって語呂的に『よん』と『に』...『しに』だぜえ...!」
「...そ、そうよ!怪しいわ!」
陰湿そうな女性観光客が野次馬に加わった。
「そうだそうだ!そいつが絶対犯人だろ!きっと凶悪な巨漢だろ!?1000ルコニ賭けてもいいぜ!」
「言いましたね!?その賭け、乗ってもいいですか?」
聖女は異様に目を輝かせて食いついた。
「えっ......」
そう言われた観光客は驚いた。
「最後に出たのは散歩に通りかかった5歳の子供と子犬です。それもどちらもカルマポイント0の。
私は彼らは犯人ではないと思います。どうですか?」
「...それなら犯人じゃないんじゃないか?」
「子供や犬にあんな酷いことが可能かしら...?」
他の観光客が口々に言った。
しかしそれは私には少し引っ掛かった。
だって、あんな殺し方をするくらいだ。
罪悪感を感じないどころか、むしろ悦びに打ち震えていそうな快楽殺人鬼。
それが犯人だとすれば、カルマポイントが0でもおかしくない。
体を変形させるありえないような殺し方。
自分自身の体を5歳児や子犬にするのも、不可能ではないのかもしれない。
そのため子供や子犬だからという理由で容疑者から外すことはできないんじゃないか......と私は密かに思った。
現時点の情報を、彼女に出してもらえるだけ出させるまで。そして犯人を刺激しないために、まだ言わないでおくけれど。
「どうですか?1000ルコニください!」
「そ.......いや...」
「やだなあ、冗談ですよ。
でもちょっと喉乾きません?飲み物でも買いに行きましょうよ!」
そう言いながら聖女は、ちらっと私...
レアにまだ背中をさすられていた少女は、ぷるぷると震えていた。
それもそうだ。彼女のバッグからあの包丁は現れたのだ。
怖くないはずがないだろう。
「...よし、私たちも行こうか」
私はレアと白髪の彼女に声をかけた。
他の観光客たちと大勢で、一斉に海の家へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます