スーパー☆オノマトペ無双〜追放された宮廷画家は、転生特典の『口からオノマトペが出るチートスキル』で無双する。お宅のお姫様も連れて行きます。戻ってきてと言われてももう遅いんだからねっ!〜
13.祈りと昇天、行こうよ喫茶店、クルクル回るる鋭利な凶器
13.祈りと昇天、行こうよ喫茶店、クルクル回るる鋭利な凶器
ブルーシートに包まれた死体の前で、桃色髪の聖女は祈りを捧げた。
息を吹き返した人たちは魔法の救急車で運ばれ。
殺され死んでしまった人たちはブルーシートに包まれて、魔法の霊柩車に運ばれていった。
レアは力持ちなので、死体を運び入れるのを手伝っていた。
私は聖女と死体の前にいた。
聖女は言った。
「しかし人の命を吹き返させるとは、素晴らしいですね。
私には祈ることしかできませんから...」
「こっちこそ。私が祈ったって意味なんかない、どうにもならないよ。
でも聖女スキルで祈れば、人の魂はアンデッドやゴーストにならずに昇天できるんでしょう?」
「まあ......そうですね」
得意げなのか気まずいのか、あるいはそれらが混ざったみたいな声色で聖女は言った。
「私のスキルは、私は、全員は助けられなかった。私にできることは...」
私は自分の手のひらを見た。そして無意識に、ペンを握る動作をしてしまっていた。
「いえ、そうですねじゃないです!あります、意味!祈ってください!
祈りは、気持ちは、決して自分自身心の中だけで完結するものではありません。
気持ちは必ず自分の外にもはみ出てしまっていて...ですから、祈りは死者の安らぎへと変換されますから!」
私を勇気付けようとするあまりか、聖女はちょっと慌てて不器用に言った。
でも、それは私を慰めるためだけに急場しのぎで出した優しい嘘のお言葉って訳でもないように思えて...
本当にこの聖女が普段から思ってること...
それこそ彼女の言う"気持ちは必ず自分の外にはみ出てしまっていて"というヤツなのかなと思った。
...まあ、そうやって良いように思わせることも、計算かもしれない。
けど、計算じゃなくても、計算だったとしても、どちらでも面白い。
「...そうかな?」
「ええ、もちろん!ですから祈りましょう。祈ってください、祈りなさい...」
そう言って聖女は手を組み目を瞑った。
私も祈った。
...
数分後
私はレアと合流し「着替えたら、どこか喫茶店でも行こうか」と誘った。
せっかく海に来たのに、結局こんな目に遭うなんて災難だったな...
不謹慎だけど、漫画のネタにできると言えばそうだ。
仮にも人に殺されて転生した私が、私に直面してもパニックになったりしないのは、(これも漫画のネタにできるなあ?!)と思っているからだ。
だけど...レアは漫画家じゃないから、だからこそ落ち込んでいるのがわかった。
...
更衣室で着替えていると
「あの子も誘っていいですか?」
レアは白髪黒パレオの少女のことを言った。
「うん、もちろんいいよ」
ちょうど私もレアも着替え終わった。
白髪の少女も着替え終わり、黒いフード付きケープを被っていた。
そこにレアが声をかける。
「ねえ、この後喫茶店に行くんだけど、一緒に行かない?」
少女が自身のバッグをロッカーから引っ張り出したその時だった。
上が空きっぱなしになっていたバッグから、鋭い何かが飛び出し落ちてきた。
レアが危険を察知しそれを避けると、銀色の鋭利な物体はクルクルとスライドし、扉の前にやってきた。
そこにちょうど聖女が入ってきた。
「あの、喫茶店と聞こえてきたのですが、聞き間違いではないですよね?
私もご一緒させてはいただけませんか?トロピカルジュースを飲み直したいので...」
鋭利な刃物の先端が、聖女に向いた。
聖女はそれに気が付き下をみた。
そして目を見開いた。
更衣室にいた他の人々も、流石にそれに注目した。
赤い血がべったりとついた包丁が、そこにはあった。
更衣室で、観光客の「キャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」という大袈裟のようでも大袈裟だとは言い憚れる、そんな悲鳴がこだました。
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