9.爆弾ムカデとジュワジュワ

砂埃を切り裂いて向かってくるムカデの尾。

レアは私をお姫様抱っこしてそれを避ける。


「よくもパインちゃんを!」

レアは私を地面に下ろすと、ムカデに向かって走った。


勢いよく拳を突き出すが——


プシュ〜っと危険な音がする。

導火線で火花が散っている。


「離れて!」

私はレアに言った。


レアはすぐさま方向転換して、地面に着地する。

レアが避けきったギリギリのところで、ムカデの節が「ボカアアアアン!!」という音と共に爆発した。


「ゴホッ、ゴホッ!」

煙が辺りを覆う。


勇者は失意の中で落胆していた。

その時、ぐさっと嫌な音がした。


煙が晴れると、ザクロサだった綿が、勇者の目の前でムカデに突き刺されていた。


「え...?

はあっ、はあっ、はあっ...?」

勇者は地面に崩れ落ちて、過呼吸になる。


それと同時に、私の方にも真っ赤な節爆弾が飛んできていた。

「チートスキル:オノマトペ具現化発動!」


<発動シークエンスを開始します。>

<デンデン!デンデン!デンデン!デンデン!>


「カズサさんっ!!!」

私に駆け寄るレア。


だけど私は彼女に、右手を突き出して静止した。


<システムオールクリア。チートスキル:オノマトペ具現化発動可能です。>


「ジュワア」

狙いを合わせ、出来る限り冷静に、的確にオノマトペを発射する。


節の切断面を入り口に、水が入り込む。

一瞬にして節爆弾をしけらせ、不発弾にした。


節は「ボト」っと地面に落下した。


それとは別にジミーがトントンと床を鳴らし続けていたが、倒したモンスターたちは既にザクロサによって消し済みになってしまっている。


「レア!」


「はい!」

レアは頷いて、ムカデへ走った。

そして飛び上がる。


ムカデは当然鋭い尾を向けてくる。

しかしレアはそれをくるりと避けた。

洞窟の壁を蹴り、空中で回転し、そして自分に向かってくる尾さえも足場にして飛び上がった。


そして洞窟の天井に、レアの足裏がついた。


「ズンズンズンズン...!」

私はオノマトペで洞窟の天井に重力を付与する。

その瞬間だけ、0.4秒にも満たない瞬間だけ、天井は踏み締めることのできる大地となる。


そして、つけた弾みの勢いで、レアは真下のグレネード・センチピードへ向けて拳を繰り出す。


ムカデは爆弾の節をレアに向かって飛ばしてくる。


しかし

「ジュワジュワジュワジュワ!!!!!!!!」

私が放った水のオノマトペが、レアの拳に腕に付与される。


レアは水のスクリューとなって、爆弾節を無効化させながら破壊していく。

砕け散った爆弾節の欠片が小さな流星群となり、洞窟の中に降り注ぐ。


「いけえええええええええええ!!!!」

「うりゃああああああああああああ!!!!!」」


ムカデは鋭い尾を落下してくるレアに向け待ち構えていた。


その尖った先端にレアの拳がぶつかる。


すると...

次第に「ピキピキ」と音を立てて、その尾は盛大に砕け散った。


そのまま水のスクリューとなったレアは地面へと直進する。

燃えなくなったただのデカイムカデは、お尻から頭まで全身を貫かれる。


「グシャああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

ヒビが入り、頭までが真っ二つに割れた。


ムカデは大きくのけぞり、そして地面に倒れた。


そして長い沈黙。


「.........動かない。勝ったああああああッッッッッ...!!!」

私が叫ぶと、レアは私に飛びついてきた。


「カズサさん!」

「レア、怪我はない?」

「はい!!ですが...」


ジミーが杖を地面にコンコンと打ち付ける音が虚しく響いていた。


「クソっ!!!なんで...なんでこうなるんだ!!!!!!!!」

勇者はジュワジュワと号泣しながら、地面に拳を打ち付け続けていた。


パインとザクロサは綿の残骸になってしまった。

レアはそれをひとかけら拾い上げた。


しかし直後、レアの手から綿はこぼれ落ちた。

するとまるで自ら動いたかのように、勇者の方へと転がって行った。

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