7.洞窟ダンジョンとトゥトゥ

「よし!!!!!ダンジョンにたどり着いたな!!!!」

勇者は大声を出した。


「ここだと...」

私は呟いた。


「カズサさん?...あっ」

レアは私の考えていることに気がついたようだった。


「ぜひ、君のチートスキルでボスをめっためたに焼き殺してくれると嬉しい!」


「洞窟の中で<オノマトペ具現化>を攻撃に使うことはできないよ」


「...はっ?何を言って」


「狭い奥まった洞窟で、メラメラ燃える炎は一酸化炭素中毒で死。


ザブザブと作り出した水で水責めしようものならこっちまで窒息死。


元からジメジメ水びたしの洞窟の中で電気を流そうものならビリビリ感電死まっしぐら!」


「っ...!!?」

勇者は顔を歪ませた。


「あ、その、ここじゃなくて、森林ダンジョンとか廃墟ダンジョンなら...ほら、こことか-」

そう言ってギルドでもらったマップを見せると...


「ここじゃなきゃダメなんだッ!!!!!!!」

温厚だった勇者は、突然すごい剣幕で怒鳴った。


「!?」


「きゅ、急にどうしたんですか?」

レアは心配して訊いた。


「...っ!」

勇者はうつむいて頭をぐしゃぐしゃかき乱した。

無理やり笑顔を作って、引きつった口で言った。


「洞窟ダンジョンじゃなきゃ意味がない...君たちの力量が測れないじゃないか...

もしかして君たちは...バカなのかい???」

勇者は大きなクマの上の涙目と、震えた声で言った。


「......っ!?まさかあなたがそんな、失礼なことを言う人だとは思いませんでした!」

レアは怒った。


「カズサさん、いきましょ-」

「いや、行こう。」


「カズサさん!?」


「私が超音波のオノマトペを出して、洞窟の中のモンスターの位置を炙り出す。

レアやみんなはそれを殴る。


オノマトペを直接攻撃に使うことはできないけど、その方法だったらできる。


レア、いける?」


「...まあギルドで、この攻撃力なら通常徘徊種ざこは一体一打撃で倒せるって保証書も貰いましたし...行けます!」


「うん」

私はうなずいた。


「よ、良かった...!!それじゃあ行こう!!」

勇者は笑った。


そうして私たちはダンジョンに足を踏み入れた。


... ... ...


「トゥトゥートゥトゥトゥ

トゥトゥトゥートゥー

トゥートゥトゥトゥー

トゥトゥトゥートゥトゥ

トゥ

トゥトゥトゥートゥートゥ」


私は超音波のオノマトペを出す。


私にだけ見える超音波のオノマトペが、モンスターの場所を示す。

そこに懐中電灯で光を当てる。


その瞬間にみんながモンスターを叩く!!!

叩く!叩く!叩く!


レアはポンポンとモンスターを殴り殺していく。


古武道家ナップル・パインは手からエネルギー波を出し、モンスターに風穴を開けた。

「ハアアアアアア!!!」


「わわっ!?!?」

流石にびっくりした。


「すごい!これが古武道スキルですか!?」

モンスターを殴りながら、レアが訊いた。


「いいや違う!これはパインだけの技!」

左手で糸を、右手で剣を振りながら勇者が言った。


「武道家が魔法使いみたいに波動を打ったっていい!!!!努力の成果だ!!

それが勇者パーティ!!!!」


死霊術師ジミー・カンオレンは、杖を地面にカンと打ち付ける。

すると死んだモンスターたちが起き上がった。


「おぉ...!」

オレンジ色のオーラを纏い目の前で起き上がったモンスターに、レアは詠嘆した。


「これが死霊術師のスキル...!?」


「エッ、ナニ...?ワタシナニカ、ヤッチャッテル...???」

ジミー・カンオレンは首を傾げて、理解していないようだった。


「ジミーは頭が悪くて自分が死霊術を使ったことを理解できないんだ!!!」

勇者が言う。


「えっ、ええええ!?」

蘇ったモンスターがこっちに飛びついてきたのでレアは避けた。


「だけど...!」


避けたレアが顔を上げると、そこでは蘇ったモンスターが別のモンスターの攻撃を食い止めていた!


「蘇ったモンスターたちはその恩を理解し、僕たちを助けてくれるッ!!

だから死霊術師がそれを理解していなくたってイイ!!!それが友情!!!!!」


モンスターがゾンビモンスターを押し切ると、ゾンビモンスターの体は脆く崩れ壊れてしまった...。

しかしその瞬間強烈な酸となって、生きてるモンスターの体を溶かした!!!


溶けかけ瀕死のモンスターを足が踏んづける。

それは盗賊王ザクロサ・ブラックだった。


彼女は突然「ガーッハッハッハーーーッ!!!!」と高笑いした。


「どうされたんです?」


するとモンスターは黒い消し炭となった。


「"盗賊王"のザクロサは、自分よりHP残量の低いモンスターを即死させることができる!!輝かしい勝利を掲げようッ!!!」


ザクロは向かってくるモンスターに対して高笑いを続けている。


「だけど-」


モンスターは一向に止まる気配がない。


「訳あってHP総量が低くなっちゃったから、そんなに有効じゃないんだ!!」

勇者はそこにやってきて、彼女に迫るモンスターを切り倒した。


「...ア、アリガトウユウシャ...チュ」

ザクロサは自分を守ってくれた勇者にキスにした。


「ワアッ、ズルイ!ワタシモ...チュ!!」

「ワ、ワタシモ...ベチャア!!」


「はーっはっはっはー!!!」

勇者は声をあげた。


「これでこの区画のモンスターは全員片付いたね。みんなお疲れ様!」

私はオノマトペを出すのをやめて言った。


「カズサさん、怪我はない?」


「うん。やったね、レア!かっこよかったよ!」


「はいっ!」


「特にね、17体目のモンスターが上から飛びかかってきた時--」

私とレアは笑い合う。


しかし...


「.........」

仲間たちにキスされながらこちらを見る勇者は、険しい顔で唸っていた。

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