3.
5.
(喜んでくれるでしょうか?)
そんな期待を胸に抱きながらも準備を終え部屋を出るとそこに居たメイドさんに呼び止められました。
なんでも陛下からの呼び出しだそうです。
(一体何でしょう?)
疑問に思いながらも言われた通り陛下の元へ向かいました。
部屋に入るとそこには国王陛下だけでなく王妃様の姿もありました。
その光景を見て思わず固まってしまった私を見た陛下達は苦笑いを浮かべておりました。
その理由は至って単純明快でした。
「レイは君に、迷惑をかけていないか?」
その言葉を聞いて、思わず首を傾げてしまいました。
迷惑なんてとんでもない! 寧ろ感謝しているくらいですよ?
そう思いながらも首を横に振りました。
すると陛下達は安堵の表情を浮かべていました。
ですが私にはまだ分からない事がありましたので思い切って聞いてみる事にしました。
すると今度は国王様が答えて下さいました。
「ただ、王付きでは暇だろう、そこで、店を開く気は無いか?」
その言葉を聞いて私は歓喜に打ち震えました。
何故なら私は趣味でお店を開きたいと思っていたのでそのチャンスが巡って来たのですから!
なので私は二つ返事で了承しました。
ですがここで問題が発生しました。
何と店舗兼自宅を建てる土地がないと言うのです。
しかし、そこは抜かりありません。
何せ、私には既に当てがあったからです。
その相手と言うのは勿論あの方です。
早速連絡を取ってみると直ぐに返事が返って来ました。
どうやら向こうも同じ考えだったようです。
なので早速現地に向かう事にしたのですが……。
到着早々思わぬ事態に見舞われる事になりました。
なんとそこには先客がいたのです。
「あらぁ~もしかして貴女もこの物件を買いに来たのかしらぁ~」
その人物を見た瞬間全身に鳥肌が立ちました。
(何故ここにあの女がいるのですか!?)
彼女の名はマリアベル、この国最大の商会の会長にして大商人であると同時に、この国最強の冒険者でもあるのです。
「勇者様に成れなかった、百合様ではありませんか、少しは、この世界の事を学ばれたのですか?」
「えぇ、お陰さまで」
「そうですか、それは良かったですわ、それで本日はどう言ったご用件ですか?」
「決まっていますわ、この土地を買う為にやって来たのですよ」
そう答えると彼女はクスクスと笑っていました。
その様子に少し腹が立ったものの今は我慢することにしました。
「勇者に成れなかった貴女は、いわば、愚図でのろまな、世間知らずなお嬢さんがお似合いですわ」
「っ!」
その言葉に怒りが込み上げてくるけれど何とか堪えます。
「それにしても相変わらず貧相な建物ですわね」
「うるさいわね! あんたには関係ないでしょ」
売り言葉に買い言葉、ついついカッとなってしまい言い返してしまった後で後悔する私でしたが、時既に遅しです。
「平民風情が、王付きだからって、少し浮かれてらっしゃるのではなくて?」
「調子に乗っているのはどっちかしら? それにあんただって貴族じゃないくせに偉そうにしないでくれる? それとも何?
まさか王様にでもなったつもり? だとしたら滑稽ね」
「なっ! 私を馬鹿にするつもりですの! 良いですわ、そこまで言うのなら勝負いたしましょう! この店を賭けて、バザー勝負ですわ」
「望むところよ」
こうして始まったこの勝負の行方や如何に……。
この国には、月に一度、バザーが開かれるのです。
それに出店し、売り上げで競い合うと言う話になったのでした。
「それでは明日、楽しみにしておりますわよ」
そう言い残して帰って行きました。
しかし、この時の私達は知らなかったのです。
6.
あんな事になるだなんて……。
翌日私達は朝から会場へとやって来ました。
そして驚いた事に私達以外にも大勢の人達が集まっておりました。
そんな中私達はと言うと……。
『絶対に負けられない!』
二人揃って気合を入れていると不意に声を掛けられたので振り返るとそこには……。
「おや、これは奇遇ですね」
そう言って声を掛けて来たのは先日知り合ったばかりの青年だった。
しかし、よく見ると他にも見知った顔がちらほら見受けられます。
「皆さんも参加するんですか?」
「あぁ、折角の機会だからな、それと君の方は一人なのか?」
「いえ、一応連れが居るんですけど……」
そう言って周囲を見渡していると丁度良く本人がやって来ました。
「お待たせしました」
そう言って現れた人物を見て全員が驚きました。
何故なら現れたのはこの国の王子様だったのですから!
「あれ? お知り合いでしたか?」
そう言って首を傾げた彼の姿に萌えつつ全員を代表して私が答えました。
すると何故か彼が目を輝かせていたのですが一体どうしたのでしょうか?
不思議に思いつつも彼の紹介を終えるといよいよ始まる時間になりました。
最初の方は順調な滑り出しを見せましたが途中から雲行きが怪しくなってきました。
原因は言わずとも分かると思いますが、あの女のせいです。
最初は小さな小物から始まり徐々に大きな商品へと移っていきました。
それに比べてこちらは未だに小さいものが中心です。
このままでは不味いと思い焦りを感じ始めた時、ふとある事を思い付きました。
(そう言えば昨日作ったアレを使えば一気に逆転出来るかも)
「レイ、マナ・ポーション作るわよ」
そう声を掛けると彼は一瞬戸惑ったような素振りを見せたもののすぐに頷き返してきました。
それから数時間後、遂にその時を迎えました。
それは他の皆も同じようで、誰もが緊張した面持ちで結果発表の時を待っていました。
暫くして集計が終わったのか、係の方が戻って来ると大きな声で言いました。
「今回の売上はこちらになります!」
その瞬間周囲から歓声が上がる中、私はその結果に愕然としていました。
何故ならそこには圧倒的な差を付けて勝利していたからです。
しかも驚くべきことにその金額は金貨百枚分に相当したのです。
因みにこちらの世界では銅貨一枚で一円の価値があります。
「うそ、出来過ぎじゃ無いの」
「本当だよね」
隣を見ると彼も同じ意見のようでした。
そんな私達の様子を見ていた周りの人達が話し掛けて来ました。
「お二人共凄いですね」
「本当に凄かったですよ」
「流石は百合様だ」
そんな賛辞の言葉を掛けられた私達は戸惑いつつもお礼を言ってその場を後にすることにしました。
「レイ、一つ聞きたいんだけど」
「何、百合」
「お父様に、呼ばれるよね」
「今度は、貴族に成らないは流石に無理だと思うよ」
功績は自分が成らない拝命しないが王国としては認める訳には行かないので必然的に呼ばれてしまうのだそうです。
(ですよねー)
そんな事を考えていると陛下からお呼びが掛かりました。
(あ、やっぱり……)
そう思って肩を落としながら陛下の元へ向かうと案の定予想通りの展開になってしまいました。
「百合、此度は、大儀であった、で、褒美を取らせたいのだが、そろそろ、貴族になる気は無いか」
(来たーーー)
もうこればかりはどうすることも出来ません。
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