第6話 笑う門には福来る?


「あはははは! 雪ちゃんのモテ期到来かよ」


 次の日、ホームルーム前の教室内に笑い声がこだまする。

 幼馴染みで親友の上杉流星(うえすぎりゅうせい)が腹を抱えていた。

 カブいた色を落ち銀髪とイヤリングをキラキラと揺らしながらご自慢の白い歯を披露。


「なんであんなことになったのかさっぱり分からん」


「ひっはははは! ちょっと待て、マジお腹がよじれる!」


 どうでもいいが俺の机から降りろ。  

 今度はバタバタと足を空中へキックするから揺れがえぐくなった。力作の弁当箱へダイレクトに影響するじゃないか。


「笑い事じゃないわ。一歩間違えれば大惨事だ。退学どころでは済まなかったぞ」


「相変わらずの巻き込まれ体質。遺伝やら父方母方の風習のせいでビュジュアルはもろチーマーだからな。正体は名家の御曹司なのに」


 昨日の喜劇を真面目に相談するも大いに笑われた。大爆笑だった。

 笑いは健康の元と言うが笑われる身としては釈然としない。

 イケメンチャラ男だがこれでも住職の息子なので、色々とためになることを知っている。

 というか、相談する相手がこいつしかいないのだ。

 隠れ陰キャラというか一匹狼という名のボッチだからな。


「また何かトラブルが発覚したら今度こそ連れ戻されるな俺」


「雪ちゃんの母ちゃん、北欧美人だけどおっかないもんなー」


 母親の顔が浮かぶと身震いしてきた。

 仕来たりとか格式とか、異国の血が混じった俺達ファミリーに厳しいあんな家戻りたくないから一人暮らしは何としても維持したい。

 だから竜石堂の誤解を早く解かないと……。


 それにしても相変わらず俺の席は舞台だ。

 これだけ騒げば注意してくる輩もいるもんだが。

 われ関せずまたはアンチの観客に囲まれて孤立無援。

 ならば嫌がらせにオペラでも歌ってやろうか? 

 小学の通知表に未来先取り過ぎて音楽評価が現代では追い付かないと書き込まれた逸材だ。

 さぞや感激のあまり逃走者続出だろう。


「でも、何者なんだ竜石堂って? 俺は聞いたことがない」


「女子高バスケ界じゃかなりの有名人だよ。まだ一年なのにオリンピックのメンバーに候補として上がっているとか。可愛いしスタイル抜群だから雑誌とかにもグラビアモデルで掲載されているし。知らない方がモグリ。学校でも隠れファンクラブが存在しているんだ」


「へー。俺もこれだけ好かれたいものだな」


「雪ちゃんを好きになるやつは気の毒だよ。相当な鈍感だからな」


 そうなのか?

 妹にもよく指摘されるけど、親の代わりの挨拶回りとかパーティーはそつなくこなしていると思うぞ。


 

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