テイク14 犯人
(いやー、誰だったかー。あー、わかんねー、もう一回見れたらわかる気がするんだけどなー)
見えたのもほんの一瞬だったし、特別記憶力がいい訳でもない。一秒にも満たないあの時間で犯人を導き出すのは困難だろう。
『ボタン来てるか?』
「ああ、そう言えば。ありがとう神様」
『お、おう。良いんじゃよ』
そう言えば、ボタン送ってくれてるって前回言ってたっけな。本当に送ってくれたようだ。嗣が立っていた足元に転がっていたので、それを拾い上げた。
そして嗣は自らの手で押す。
押したことで嗣は現実世界に転送された。
(おお、本当に自分の行きたい時にすぐ行ける。便利だ)
わざわざ神に行きたいと伝える必要はなくなったのである。助かる。
———
犯人を突き止める。
それがこのクソゲーをクリアするために課せられた使命なのだろう。きっと突き止めてその犯人をどうにか説得か何か対策しなければ嗣は教室から抜け出せないのではないだろうか。
二回抜け出せたのは様子見だったのか、それとも後から何か関係した? 恨まれるようなことを無意識にしてしまったってことか。そんなところだろうか。
流石にテイク13の時いた教室の端に犯人はいない。そんな馬鹿をするのは神くらいだろう。そもそも顔バレをしないため教室にいない可能性もゼロではないか。
一人腕組みをしながら考え事をしていると、フードを被った誰かが椅子に縛られた嗣に近づく。そして斎藤を無理に引っ張り嗣の前に突き出した。
「な、何?」
「ほら、秋。お前の好きな家泉だ。お前が告白してみろ」
「いいの? わーい、好きです。私と付き合ってください」
「しまっ——!」
「じゃあな、クソ野郎」
今回は告白されてもう間も無く死ぬだろう。しかしまあいい。犯人が判ったのだから。それだけで十分だ。
今まで慎重に行動していた犯人が突如動いた。そのおかげで嗣は犯人を自分で突き止める必要がなくなったのだ。らしくない行動。真意とは一体何なのだろうか。
嗣は死の間際に目を細めると犯人を注視する。絶対忘れない。
犯人も嗣に対抗するように嗣ときつい目線を交錯させる。彼の視線はあの時の嗣の視線に似た冷たいものだった。
「名前も顔、覚えたからな?」
「……」
「
「それはこっちのセリフだ。俺はお前を許さない。俺の彼女、秋を奪った罪は重いからな」
そう、彼の名前——犯人は飯島だった。
【バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン】
飯島が嗣に対立した理由は彼女を奪われたかららしい。やっぱり斎藤には彼氏がいたのだ。彼氏の名前は飯島遼。紫髪にピアスを開けたチャラ目の男子生徒である。
よく見て思い出した。嗣の斜め右前の席に座る生徒だ。
嗣を死に追い込んだ理由は分かるが、記憶あるなら許してくれても良いんじゃないかと思うのだけどな。何度も嗣を殺した。相当な憎しみがあるらしい。
今回の勝負は負けだが、次こそ勝って見せよう。
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