テイク13 闇世界

「ねえ、神様?」

『ああ、何じゃ?』

「そういえばずっと気になってたんだけど、俺がいるこの闇世界ってどこにあるの? 天国でも地獄でも現実でもないんでしょ?」

『うーん、そうじゃな。そこは死と生の狭間じゃな』


 なるほど、と嗣は画面の前で三度頷いた。


 ちなみに神は業者来るまですることがないらしい。なので神は悠長に神々しい椅子に鎮座している。作業も何もしていない神を見ると、嗣はとても安心する。


 いつ業者が来るかわからないから、早く次に行くとしよう。


「じゃあ行ってきていい?」

『ああ、そうじゃ。もうしばらくお前自身が自由に向こう《現実世界》に行けるようボタンそっちに送っておくわい。それを押したら現実世界に好きな時に行けるわい』

「えー、マジィ〜? あれ? でも俺のこと杖で現実世界に飛ばしてなかった?」

『あれはただの見栄えじゃ。それよりさっさとゆけい!』

「はーい、ありがと〜」

『うるさいわい!』


 満更でもない顔をする神。嗣にお礼言われて嬉しいようだ。

 最近より一層神の優しさが浮き彫りになってきた気がする。

 最初あれだけ二人の仲は険悪だったのに、普通に会話するくらいにまで至っている。

 

 いつか神と和解できる時はくるのだろうか。そうすれば嗣だって理不尽な罰を受ける必要はこれ以上ないだろう。


 しかし嗣は特に罰について突っ込むことはなく闇世界を後にした。


 何だかゲームから離れたくない自分がいた。これは何かの効果?




———




 現実に戻った嗣はすぐさま瞳のみを動かし、思考から敵である犯人を探した。椅子に縛られ動けないのと、探ってることを出来るだけ感付かれたくはない。

 犯人特定には至らないとしても、ついでに教室にいる生徒の位置関係を把握出来るので、そういう行動も無駄にはならないだろう。

 全てを見抜き抜け出す。それこそ嗣の求める結末である。


 流し目で一周見渡した。背後にいる誰かは確認できないが、視認出来る人だけで十分だろう。


 一体誰だ。


 生徒誰が犯人でもおかしくないのが現実だ。嗣は女子からモテるという理由だけで不満を買っているのである。

 思い当たる節がないな。例えば畔戸とか? あとは——佐々木校長先生とかか?


 いや、流石にあの人はないだろう。頭に薄らよぎるけど、あの人は信じていい人のはずだ。

 

(間違いなくあの人は——俺を導いてくれる人だ、信じてる)


「おい、誰かわかんねーが何が目的だ?」

「お前には言わない。好きです。付き合ってください」


 睥睨しながら誰がコソコソ喋っているかを確認とっていた。


「あ」

「やべ」


 教室の前の隅の方に一人の男がいた。紫? っぽいような。

 その犯人も嗣の顔の反応を見るためだったのかこちらをチラッと見ているところだった。ドジを踏んでくれたおかげで嗣には顔が一瞬見えた。

 どこかで見たことがあるようなそんな顔。


 いや、完璧何度か見た顔だな。どこかで、どこだ? 誰だ? 何の目的で?


 ……誰だったか。思い出せない。きっと記憶の中にいるはずなのだけど。 


【バーーーーーーーーーーーーーーーーー−ーーーーーーーーーーーーーーーーン】


 でもすぐに顔と名前が出てくることはなく、嗣は小さく爆発した。

 大きく前進したものの答えは出ないままである。

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