第30話 不穏な帰り道…
一方その頃…。
博物館を後にし、ホテルへ戻っていた3人組。
“彼ら”は、博物館で体験した出来事を、互いに話し合いながら歩いていた。
「周遊コースの方はどうだった?」
前を歩く樹が、美咲に尋ねる。
「周遊コースはねぇ、結構ボリュームのある道だったよ!塹壕とかあったし」
同じく前を歩く美咲が、彼にそう答える。
その後も、彼女は自分たちが戦車で通った道が、いかにインパクトのあるものだったかを熱く語った。
「塹壕に泥道!?それは確かに走りがいがあるね」
美咲の語りには樹も強い関心を示した。
「でしょでしょ?普通のコースだと思って走ってたから、私も秋葉もびっくりしたんだ〜」
彼の反応に、美咲はとても上機嫌だった。
そんな、熱い会話を二人が続けていると…。
「あ!ホテルが見えてきたよ!!ほらあそこ!」
美咲が遠くの方を指差して言った。
彼女が指差した方には、前日宿泊したホテルがあった。
「後もう少しだね、ここまで長かったなぁ〜」
「だねぇ〜、今日も歩き疲れたぁ」
前を歩く樹と美咲が、体を伸ばしながらそんなことをぼやく。
そんなありきたりな雰囲気が場に流れていた時、ふとしたタイミングで美咲がこう呟いた。
「そういや、幸人君はともかく、なんで宏樹まで残ったんだろう?」
それは、博物館に残った二人に対しての疑問だった。
「…それ僕も思ってた、ちょっと妙だよね…」
彼女が感じた違和感には、どうやら樹も気がついていたらしい。
幸人がそれなりのミリタリー好きだということは、今回の旅行組の間では周知の事実だった。
だから、彼がもう少し戦車博物館に残りたいと言うのは、なんらおかしな話ではない。
しかし、宏樹に関しては少し事情が違う。
「別に戦車が特別好きって話は…聞いたことないんだよねぇ……」
美咲が首を傾げながらそう口にする。
「まあ、本物の戦車を初めて見て、何か目覚める“もの”があったのかもね…」
そんな彼女に対し、樹がやんわりと宏樹の心を汲み取ろうとする。
「えぇ〜、それはそれで…色々と“面倒”だなぁ」
そんな彼の考えには、美咲もどこか微妙な顔をした。
違和感を感じていた二人が、互いにその考えを言い合っていたその時…。
「…あれ…?秋葉ちゃん?」
二人の後ろでずっと黙っていた秋葉が、突然その場に立ち止まった。
「秋葉…?」
少しの間をおいて、美咲がそう声をかけると…。
「ごめん二人とも!ちょっと忘れ物したから取ってくる!」
秋葉はものすごい早口でそう言って、二人が残っている“戦車博物館”へと駆け出していった…。
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