巻末 名前も知らない女性、そして...雪。



…ぐっ…!!

宏樹は怨魂「Alecto」からの攻撃を受け、反射的に頭を隠した。


しかし…。



………ん…?あれ………!?

宏樹が次に気がつくと、知らない場所に立っていた…。


…体が…動かない…

自分自身はただ立ち尽くしているだけで、体がまるで動かなかった。


…どこだここ!?……雪…が降ってるのか?

あたりには雪が積もっており、空にも雪がちらついていた。


もちろんさっきまでは雪など降っていなかったし、こんな場所はきたことも聞いたこともない。

しかし…。


…確か…なんだったっけ…!?こんなことが前にもあったはず…!

宏樹は雪が降っている景色を、どこかで見た覚えがあった。


そんな時…。


「こんばんは〜」

宏樹が雪が降る夜の中を歩いていると、誰かから声をかけられた。


「こんばんは、あなたは確か…日和の?」

「ええ、十一連隊れんたいの少佐よ」


声がした方へと振り返ると、そこには見たことのない女性が立っていた。

わかったことは、彼女が日和の「十一連隊」に所属している「少佐」ということだけだった。


…記憶だ…!これは俺の…!!?

何の脈絡のなく始まった知らない女性との会話と、この雪景色を見て宏樹はようやく思い出した。

今自分が見ているものが「前世の記憶」だということを。



それからも、記憶の中の自分と女性は、雪道を歩きながら会話を続けた。


「あなたの演説、聞かせてもらったわ」

「ありがとうございます!」


…演説…?俺は何かの権力者だったのか…?


「まだ少尉しょういだというのに、どの同盟国の重役にも引けを取らない、良い演説だったわよ」

「そう言って頂けると、光栄です」


…しょう、い?…もしかしてそれは軍隊の?

昔、海賊が出てくるマンガでその言葉には聞き覚えがあった。


…俺は昔…軍隊の少尉だったのか…!

女性の発言によって宏樹は前世で、どこかの軍隊の少尉だったことを知った。


…それはわかったけど…この女性は一体…?

宏樹は、前世の自分の横を歩いている女性のことも気になった。


…恋人…?それともビジネスパートナー…?

考えれば色々あるが、記憶の内容には自ら干渉することができないため、彼女が名前を言ってくれることに期待した。

しかし…。


「名前は…なんと言ったかしら?」

そう聞かれた前世の自分は立ち止まって、女性の瞳を見つめながら話した。


「あ、私の名前ですか?私は『ラシェニー第七十戦車大隊のーーーーー

…あ、え?え!?……途切れ、た……!!!?


なんとこの記憶は、彼女に名前を聞かれ答えようとしたところで途切れてしまった…。



             To be continued…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る