第104話 創造者たち
翌日、俺たちはまたタイムシフト研究所を訪れた。
覚醒シーケンスが完了したタイムシフト遷移室だ。
「本当に生きてるんだよな? どろどろの生物とご対面とか嫌だぞ」
「ここまで来て何言ってんの?」とメリス。
「リュウがビビってる」とユリ。
とか言って俺の後ろに隠れてるユリ。
「リュウ、勇気を出すのじゃ」
ユリのさらに後ろに隠れているツウ姫が言う。
「あれだけチェックしたから大丈夫ですよ」と気楽に言う神岡龍一。
そういや、こいつらは共感エージェントで慣れてるんだよな?
「未来へ飛んで自分自身に憑依するとか信じられないことしてる人は気楽だな」
「確かにね」とメリス。
「超能力者だよ」とユリ。
「わらわから見ると全員超能力者なのじゃ」とツウ姫。ごもっとも。
「さすがに、共感遷移は経験してみないと分からないよね」と今宮麗華。
「そうそう。私も最初怖かったし」と上条絹。
「そうです。私は今でも怖いです」と夢野妖子。
「で、みんな後ろに隠れてるんだ」と神岡。
「だって、さすがに低温睡眠とか知らないし」と麗華。
「こころの準備がまだ」と上条。
まだなのに、来てていいのか?
「上条さんの後ろなら安心です」と夢野。
「じゃ、メリス先に……って、いないし」
見ると、いつの間にか一番後ろにいる。
「なんだよ。結局こうなるのかよ」
「当然でしょ。男二人なんだし」
「男女平等じゃないのかよ」
「私は平等だと思ってないし」
「そうなのか?」
「当然、レディファーストよ」
「じゃ、お先にどうぞ」
「おかまいなく」
「そこ! ギャグやってないで遷移室へ入ったら?」とユリ。
「分かったよ」諦めて、俺は神岡とタイムシフト遷移室に入った。
パンッパンッ パンッパンッ
「「歓迎しま~す。いらっしゃいませ~っ」」
「「「「「「「「 えっ? 」」」」」」」」
部屋に入るなり、いきなりクラッカーの音がして歓迎されてしまった。何これ?
見ると、そこには若い女が二人立っていた。
若い女というか瓜二つの女だった。たぶん双子かな。髪は銀髪で18歳くらいに見えるが、スペーススーツのようなものを着ていた。
「誰?」と声を掛けてみる。
「告知します。私は姉のレムです」
「告知します。私は妹のリムです。よろしくね!」
なんだろう。この、そこはかとなくハクっぽいノリは?
「あの、ご先祖様ですよね? 共感エージェントの。私も共感エージェントなんです!」
ふらふらと近寄って麗華が言った。
「回答します。その通りです。ここの全員に共感能力があることも分かります」とレム。
「質問します。あなたは私たちの子孫ですか?」とリム。
「はい、そうです。子孫の今宮麗華と言います。ようこそご先祖様。歓迎いたします」
麗華は満面の笑みで言ってリムの手を取った。
「私も子孫です~っ。ようこそ未来へ!」
夢野はレムに手を差し出して言った。夢野は満面の笑みどころか涙を流していた。
「告知します。子孫に出会えて本当に嬉しい」とリム。
これは、感動の場面だな。捨て身の作戦が千年を超えて今完結しようとしているんだと思った。
「質問します。あなたたちは私たちを目覚めさせてくれた人たちですか?」
しばらく喜びをかみ締めた後、レムが言った。どうも、俺たちのことは受付アンドロイドから聞いているようだ。
「そうだ。俺たちは創造者の一族を手助けするために、ここに来た」
「質問します。創造者とは?」とレム。
「ああ、すまん。君たちは、このタイムシフト研究所を作った人たちだよな? そういう意味だ」
「回答します。はい。その通りです」とレム。
「なぁ、ハク。お前が、彼女たちに言葉を教えたのか?」
彼女達の言葉使いが気になって聞いてみた。
「回答します。私ではなく私が伝えた情報を元に覚醒シーケンスで睡眠教育した結果です」なるほど。
あの歓迎の仕方とかも、ハクの教育にあったんだろうな。
「それを、教えたって言うんだ。分かった。そうだろうとは思ったよ」
ん? あの話し方って単なる口癖ではなくて、そういう文法なのか? それは、ありうるか。
「しかし、驚ろいたな。すぐに会話出来るとは思わなかった」と神岡。
「ほんとね。さすがご先祖様だわ」と上条。
「質問します。あなたたちも私たちの子孫ですか?」レムがこっちを見て言った。
「えっ? ああ、俺たちは違う。多重世界に飛び出した一族、神海一族に協力している者です。あ、これ言っちゃっていいのかな?」と神岡。
いや、神岡はもう神海一族な気もするが。
「そのくらいの情報は問題ないだろ」
「うん。そうだよな」と神岡。
「質問します。私たちのタイムシフト遷移は完了しました。この後は、未来の情報を持って帰る予定です。これより約一か月は情報収集の予定ですが協力して貰えますか?」とリム。
「もちろんだ」と神岡は言ってから俺たちを見た。
「どうだろ?」
「彼ら自ら情報を求めているならいいんじゃない?」とメリス。
「そうか。そうだよな。もちろん協力するよ。たぶんこっちも聞くことになるし」
「回答します。私たちに分かることならお答えします」とリム。
「それは有難い。じゃ、決まりだな」
それから、俺たちは『創造者の白球ステーション』にいるホワンや神海意次に了解をとってレムとリムを連れて帰ることにした。
これから一か月、面白いことになりそうだ。
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