第15話 美咲その4

「この世界にもう一人、生まれ変わっているみたい。姫じゃなくて、誰かが覚醒したみたい。魔術師としての直感」

 ベッドに戻って、裸でまったりしていると美咲が急に難しそうな顔をした。

「え、まだ生まれかわりがいるの? どんな女の子だろ。まだ姫も見つかっていないのに」


 とたんに平手打ちを食らった。それもかなり本気の。頬がジンジンする。

「ばか、うれしそうな顔すんな浮気者」

 いきなり何するんだ、と言いかけたが、美咲の目に涙が浮かんでいるのを見てやめた。


 また新しい女の子とやれると思ったのは確かだ、よほどエロい顔をしたのかもしれない。今やったばかりの女の子の前でそれはないな、とちょっとだけ反省した。


「中土井のことはもうすんだことだから許す、ヘルム様も本妻だからあきらめる。でもあんまり調子に乗ると、私抑えられないかも」

 美咲の目がわずかに緑に変わった。先生とは違うがヤバいことには変わりなさそうだ。


「わかった、わかりました。美咲も大事にします。でもさ、触らないと姫が確認できないんだよ、どうすんのさ」

 美咲は黙ってしまった。

「まず触ればいいじゃん、違ったらやっちゃうことないでしょ。胸までは許す」


 下を向いてすねたように言う美咲が可愛くて、航は自分たちが裸なのも忘れて美咲を抱きしめた。

 やわらかい、触れているすべての皮膚が美咲の体温を感じる。当然体の一部分は復活してしまった。


 立て続けに三回となると、さすがに二人ともぐったりしてしまった。

 美咲ももう痛がることもなく、今までで一番、と言ってもたかが四回目だが、気持ちいいエッチだった。

 このまま眠れたら幸せかも、ついそんなことを思った。でも、たぶん美咲のおやじさんに殺される。

 航は重い体を起こしてベッドから出た。そろそろお母さんが帰ってくるころだ。


 帰したくなさそうな美咲をなだめ、ようやく玄関までやってきたが、美咲は手を離さない。仕方なく玄関でキスをしてたら、ハイヒールの靴音と、ノブをまわす音が聞こえ二人は飛びのくように離れた。


「あら、お久しぶり、元気だった。もう帰るの?」

 本当に危ないところだった。素っ裸のままで玄関まで来かけた美咲に、無理やり服を着せたのは大正解だった。

「昔みたいにもっとおいでよ。美咲ったらしょっちゅうあなたのことを」

「お母さん、何詰まんないこと言ってんの、やめてよ恥ずかしい、航が困ってるじゃない」


「あら、航ってよぶの、ふうん」

 お母さんはやけにうれしそうな顔をした。思いっきりやばい状況だ、航はまた来ます、と言って頭を下げると、一目散に逃げだした。いやな汗が出ている。


「お母さんによかったねって言われた、お父さんには黙ってくれるって。でも私を捨てたら殺されると思って」

 航が家に着く前に届いた美咲からのメールには、とんでもないことが書いてあった。

 当然のように母親の目は騙せなかったらしい、今度会ったらどんな顔をすればいいのだろう、気が重くなってきた。


 中土井はどうするのかなあ、直接先生の声が頭に届いた。そうだった、忘れてた。このままならやり捨てみたいになってしまう。美咲は好きだけど、中土井も。

「何を調子に乗ったこと言ってんの、知らないよ姫に会う前に誰かに刺されるんじゃない」


 背中に、ざわっとしたものが走る。もしかしたら、自分はとんでもないことに陥ってるのかもという気がしてきた。

「大事な話があるの、そのまま、うちに来なさい」










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