第14話 美咲その3
一家全員をいけにえにしようとまでいうほどの怒りは、どうやって収まったというのか。
「キサムさまが代わりに巫女になるとおっしゃったの。条件として私が魔術師になることになって」
「先生が姫の代わりに巫女に? 俺たちと一緒に死んだとか言ってたけど」
「噓よ、津村が罪悪感をあたえて、ヘルムさまを探すように仕向けたんだと思う」
なるほど、よくよく自分は操られやすいのだと航は思う。
「じゃあ美咲は?」
「私も結局、魔術師として人生を終えた。処女のまま。あ、先生もね」
「じゃあ、美咲も先生も俺よりずっと年寄りってことか」
前世を覚えているということはそういうことになるんじゃないか、妹が自分よりはるかに人生経験が長い、航は何が何だか分からなくなってきた。
少なくとも彼女にはできそうにない、今でさえ上から目線なのにより一層。
「うーん、ところがそうでもないみたい。なんかそうだったということはわかるんだけど、何も思い出さない、消えちゃってるみたい」
それが本当なら付き合っていけるかもしてれないが、航にとっては一抹の不安が残る話だった。
「気にしなくていいんじゃない、もともと航は私から見ればガキだし」
カチンときたが、今までの人生思い起こすと確かに美咲の言うとおりで、航は言い返す言葉が見つからなかった。
「ね、そんなことより、私かわいそうじゃない? 兄さんのこと好きだったのに、兄さんのせいでずっと処女」
知るか、という前に美咲が飛びついてきた。
美咲の熱い手のひらが航の両ほほを包み美咲の唇が航の唇に押し立てられた。ついこの前までは、女の子とキスなんて考えられなかった航だったが、もう三人目。
さすがにちょっとばかり余裕が生まれてきている。
先生の時はいつも向こうから強引に、中土井さんは二人ともがちがち。
美咲は、抱きついてきたはいいけれど、その先どうすればいいかわからないようだ。唇を押し当てたまま動きが止まっている。
航は、ガキだと言われた仕返しをしてやろうという気になった。少なくともエッチに関しては自分の方が先輩なのだ。
「あ、だめだ、ゴム忘れた」
いよいよという寸前で、航は美咲の体を離した。避妊せずにするのは、絶対にだめって何かに書いてあった
姫を探すなら美咲には一層無責任なことはできない。ういうところは律儀なのだ。
「大丈夫だよ、私、女の子の日きっちり来るから。今日は絶対に大丈夫」
美咲は航の顔をじっと見つめ言った。
「大丈夫か」
「ん、痛いかも」
「やめる?」
「だめ、もっときて」
美咲はよほどつらいのかもしれない、声が今にも消え入りそうだ。
「航、大好き」
美咲は航の背中にまわした腕に力をこめ、耳元であえぐように言った。
「うわ、シーツが」
終わった時航は思わず叫んでしまった。中土井の時とは異なり、ベッドのシーツにはくっきりと初めての証があった。
「中土井の時はなかったんだ」
「中土井は私と違ってアスリートだから」
風呂場でお互いの体を洗いながら美咲はいった。スポーツで膜が破れるということらしいが、航にはよくわからなかったというのが本音だ。
でもそれを言うとまた馬鹿にされそうなので、黙ることにした。
「ね、もう一回しよ」
「ここでか」
「だって洗い流せばいいじゃないここなら。それにほらもう」
女の子って積極的だ、中土井の時も思ったが。
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