第6話 先生いたずらは
「へぇー、家に呼ぶの。頑張ったね。どうするの押し倒すの」
航はコーラを吹き出しそうになった。何度も言うが一応先生だ、もう少し生徒に対して言う言葉を考えてほしい。
「できっこないじゃないですか」
「なんで、親のいない日に来るんでしょ、できるに決まってんじゃん」
先生はフォークに刺したモンブランをほおばると、こともなげに言い放ってくれた。
ここ連日、航は学校の帰りに先生の部屋に来ている。モンブランは航が買ってきたものだ。気を遣わななくてもいいのにと笑われたが、毎日晩飯まで食べさせてくれるので、さすがに気が引けた。
もっとも食事は、どちらかというと無理やり付き合わされている。一人で食べたって、まったくおいしくないからというのが理由らしい。
なら彼氏と食べればいいでしょといった航に、いないよと先生はとびっきりの笑顔で答えてくれた。その笑顔の意味は、聞きかけてやめた。
「ほしいとも思わない。こっちの生活は嫌いじゃあないんだけど、男はなんかよくわからないんだ」
こっちの生活って、不思議な言い方だ、前世を覚えているってどんな感じなんだろう。航は前世のことは全く覚えていない、だから普通の高校生として生きていることに疑問はない。
でも先生は自分が魔術師だったことを覚えているし、現にどうやら魔法というか超能力を使えるとなると……。どんな生活をしてきたのだろう。
「なんていうか、頭の中に箱があってその中に詰まってる? だから知識だけ、でも体もその記憶がコントロールしているところがあって、よくわかんない」
「先生、ご両親は?」
「いるよ、普通に。だから普通の女の子なんだって、私も」
そうなのだろうか、普通の女の子は男の前でTシャツ一枚でいることはないはずだ。
大きめとは言っても、座れば超ミニだ。目の前にはオレンジ色のパンツが見えている。最初は下半身が凸したけれど最近は少しだけ落ち着いている。帰ってから思い出して何をしているかは秘密にしたい。
「ね、津村、私としたい? パンツ見るだけでいいの」
航はまたコーラを吹き出しかけた。何言いだしてんだこの人は。
「私、したことないんだ、津村ならあとくされないし」
先生の目が怪しく光る、いつもの黄色じゃなくてパンツと同じオレンジに。
「姫に怒られませんか」
自分でも声が上ずっている、もちろん拒否するつもりはないけれど、なぜか言い訳している。
「いいの、私は魔術師なんだから」
何か言いかける前に暖かい唇が唇に押し当てられた、カチッと歯が鳴る音がした。何の香りだろう、舌がゆっくりと航の口の中に入ってくる。理性が吹っ飛んだ。
抱きしめようとした瞬間にいきなり突き飛ばされた。
「ひどーい何すんの」
先生が悲鳴とともにいう。ちょっと待ってください、突き飛ばしたのは先生の方だ、っていう前に、先生も気が付いたらしい。
「えーっと、やっぱり姫がお怒りなのでは」
「おかしいなあ、そんなはずないんだけど、いやあきらめないから」
先生が何をあきらめないのかはあえて聞かないことにした、でも一言、俺の姫探しはどうなるの?
「ま、まずは中土井を押し倒してみて、どうなるか私も知りたい、あ、学校では二人の仲は秘密ね」
二人の仲ってなんだ、先生と生徒じゃあなさそうな。
彼氏と彼女? そんなわけない。
セフレ、考えるだけでドキドキする。
でも一番近いのは、主人と召使。いや女王様と奴隷か。
「何言ってんのこんなにしてあげてるのに、奴隷のわけないでしょ」
先生はTシャツをほぼ胸の下までたくり上げた。
リアルグラビアだ。うれしいけれど、見せつけて頭の中覘くのはやめてください。
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