第6話 えいようほきゅー

「んで?.....どうなのかな?今は」


「.....ど、どうとは?」


「それは勿論.....凪宮さんと。上手くいっているの?」


「それは.....うん。まあ上手くいっているよ」


ほほう、と言いながら顎に手を添える律子。

俺はその姿を見ながら苦笑いを浮かべる。

それから妹が作った弁当で食事をしながら背後をチラ見する。

そこにはパンを食べたりしている凪宮さん。

何時も通りの感じで食事をしていた。


「うーん.....上手くいっているではちょっと不安だねぇ」


「な、何が.....?」


いや。そういうのって別れる前兆だよね、と律子が首を傾げる。

何て事を言うんだ.....。

俺は青ざめながらワタワタする。

すると律子が、でもまあ貴方だからねぇ、とニヤッとする。

それから律子は、きっと君なら凪宮さんを幸せに出来るよ、と笑顔を浮かべる。


そうしていると背後から、ねえねえ!最近.....時雨、男と付き合い始めたんだよね!聞いたよ!、と声がした。

同じギャル友である.....市谷リコ(いちがやりこ)。

まあこのクラスの女王の様な存在のスクールカーストトップの少女。

正直関わりたくはない.....が。

その噂には興味が湧いてしまう。


「ふえ?.....あ、う、うん」


「そんなの黙ってないで言ってよ。.....誰?もしかしてサッカー部の副部長?!」


「あ。違うよ。.....全然関係ない」


「え。じゃあ誰々さん?アハハ」


市谷には全く関連性は分からないだろう。

俺と凪宮さんの関連性は、だ。

思いながら耳を立てていると律子が、浮気の心配かい?、とヌッと出てくる。

うわ!?ビックリだ。


「ち、違うよ!俺にとってはどうでもいい.....」


「またそうやって取り繕っても無駄だよ。アハハ」


「う、うーむ」


「でも気になるのは当たり前だよね。.....私も気になる」


「.....律子.....」


すると凪宮さんは頬を朱にして答えた。

どんな人であっても。

私は.....その人が大好きなの、と。


俺はボッと赤面しながら箸が止まる。

律子はニヤニヤしながら俺を見ていた。

困ったもんだ。


「え?そんなに良い人なら今度紹介してよ。どんなイケメンかな」


「.....!?.....え。あ、いや.....彼はシャイなの.....だから」


「?.....え?でもヤッたんでしょ?それはシャイって呼ばない.....」


「ううん。彼はそんな事は望んでない。.....彼は本当にシャイなの」


「え!?あり得なくない!?普通はやってからだよね!?」


市谷。あり得ないぞそれは。

思いながら箸を何とか動かして食べる。

すると凪宮さんは、でもその理由は分かったんだ。私を大切にしてくれている。そんな想いなんだって、と胸に手を添えて赤くなる。

俺はドキドキしながら飯を食い終わってから弁当箱の蓋を閉める。


「エッチしてからだと思っていた。.....この恋は。.....だけど彼はそんな事より私を見てくれた。.....だから心から気になる。彼が」


「.....はー.....安っぽい恋愛じゃないんだ。何だか.....もっと知りたくなっちゃうな。その彼の事」


「う、うん。でもダメ。今は会えないな」


それから俺をチラ見してからそのまま目線を戻す。

俺はその姿を見ながら心臓をドキドキドキドキさせる。

何であんなに可愛いのだろうか。

必死に俺を守ってくれて.....、と思いながら前を見る。

律子が飽きた様にスマホで動画を観ていた。

えー.....。


「何でかな律子」


「だってあまりに腹立つしね」


「応援してくれるんじゃないの!?」


「そう思っていたけど塩を撒きたい気分になった」


「.....」


俺はジト目のその顔を見ながら盛大に溜息を吐いた。

それから俺は教科書を取り出していると。

ちょっとトイレ行って来るね、と凪宮さんの声がした。

そしてトイレに行く際に俺の机に紙を放ってくる。

それは、屋上で、と書かれている。


「.....律子。屋上に行ってくるね」


「おう。勝手にしたまえ」


「.....お主.....」


ふんぞりかえる律子。

また俺は額に手を添えて盛大に溜息を吐く。

それからそのまま教室を後にしてから。

屋上に直ぐに向かう。

そしてドアを開けると.....直ぐにガチャリと音がした。


「.....エヘヘ」


「な、凪宮さん.....?」


待っていたぞ?君を。うふふ、と凪宮さんは赤くなって笑顔になる。

俺はその姿を見ながら赤くなっていると。

凪宮さんが飛んで来た。

それから俺に抱き付いて来る。


「.....うん。やっぱり安心する香りだ」


「.....ちょ.....凪宮さん.....」


「何だか.....急に抱きしめたくなった。会いたくなった」


「.....凪宮さん.....」


さっきは困惑したよ、と汗を拭う真似をする凪宮さん。

俺はその姿に、そうだね.....、と苦笑い。

そして凪宮さんは俺を見上げてくる。

それから、話は変わるけど、と言ってくる。


「君の家に行ったし今度は私の家に来てよ」


「.....ファあ!?」


「私の好きなもの.....教えてあげる。想いを.....互いに繋ぎ合いたいから」


「し、しかし俺みたいなのが行っても良いの?」


「逆に何の影響が?」


是非来たまえ、と言いながら胸を張る凪宮さん。

それから俺を柔和に見てくる。

俺はその姿を見ながら少しだけクスクスと笑ってしまった。

凪宮さんは、ちょっと〜。これでも恥ずかしいんだから、と怒る。

だけどその姿が可愛らしくて.....仕方がなかった。

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