第4話 凪宮時雨の思い
何事も無く話が.....進む筈が無い。
俺の部屋に行きたい、と凪宮さんが言ってくる。
慌てて俺は部屋を片付けに行きそして10分後の事だ。
凪宮さんを誘導して俺の部屋に連れて来てみた。
「わ。ここがリューキの部屋?整ってるね」
「.....ちょっとゴリ押しで.....片付けた。.....ゴメンね。それでも汚くて」
「大丈夫。全然整ってる。10分で整える様なお部屋じゃ無いしね。私の部屋は。リューキ凄い」
「.....」
目を輝かせてまるで絶景でも見てるかの様に反応する凪宮さん。
正直、ライトノベルとか置いてあったので.....嫌がるかと思って片した。
すると凪宮さんが予想外の事を言ってくる。
でもこれは残念だけどリューキの部屋じゃないね、と言う。
俺は?を浮かべて目を丸くする。
「リューキ。.....えっと.....貴方が読んでいる小説は?」
「.....しょ、小説って何?」
「いつも読んでいる小説。.....リューキ確か本当に色々な小説を読んでいたよね?だからその小説が無いからリューキの部屋じゃ無いなって思って」
「.....本来の部屋っていうのはそういう意味?」
「そう。リューキ。私は.....君の本来の姿が見たい。.....隠していると思うけど私は君の素が見たいの」
俺は赤面しながら凪宮さんを見る。
すると凪宮さんは俺に寄って来ながら、ね。何の小説を読んでいたの?、と直にそのまま聞いてくる.....。
俺はその言葉に逡巡する。
困った。
このまま恋愛もののライトノベルって答えたらドン引きされるんじゃ無いだろうか。
そんな事を考えていると凪宮さんが何かを見つけた。
そして手に取る。
「あ。これ.....」
それはまさに見つかってはならないものだった。
片付けが追いついてなかった様だ。
ライトノベル.....のつまりラブコメ.....まあその。
ちょっとエッチな感じのラノベだった。
俺は!と思いながら青ざめる。
そして、ちょ、と止めたが.....凪宮さんは内容を見てしまった。
しまった、と思ったが。
凪宮さんは俺を見てライトノベルを見た。
「?.....普通に可愛いだけだよね?.....それにこれぐらいの事で動揺するの?」
「え.....キモオタって思ったりしないの?俺を」
「え?逆に何で?まあ.....その。何というかあまり変な性に対する執着心はドン引きかもだけど.....」
「.....!」
俺はかなりビックリしながら凪宮さんを見る。
凪宮さんはペラペラとラノベの中身を見る様に捲っていく。
それから、アハハ、と口元に手を添えて笑う凪宮さん。
俺は?!と思いながら凪宮さんを見る。
「凪宮さん.....?」
「これ面白いね。.....ギャグが多くて.....とてもいーかも」
「.....え.....え.....?」
「そっか。みんながこういう感じの本に嵌るのが理解出来たかも。.....興味無かったわけじゃ無いけど.....忙しくて手に取れなかったの」
「.....凪宮さん?」
「やっぱり私はリューキに出会って正解だった」
そう柔和に言いながら。
凪宮さんはライトノベルを両手で置きつつ、ねえ。まだ面白い小説はあるの?、とワクワクした感じで聞いてくる。
俺はその言葉に、え、えと、と思いながら顎に手を添える。
そして考えてから率直に言うのはどうかと思ったが。
ここまで来ては仕方がないか、と。
「そ、そうだね。俺はラブコメ系のラノベが好きでそれが多いけど.....」
と素直にドン引きも覚悟で答える。
すると、その分野は私も好きになるかな?、と笑みを浮かべて聞いてくる。
俺は!と思いながら凪宮さんを見る。
そして目をパチクリした。
「言ったでしょ?私は君の事を知りたい。そして私は君の好きな物に注目したいって」
「で、でも.....これは君が嵌る様な趣味じゃないと思うんだけど.....」
「良いから。.....私は君が好きだから好きになりたい。そう思っている」
「.....」
本当に良い子だなって思える様な。
俺にとっては勿体無い様な。
そんな笑顔だった。
俺は胸に手を添えて意を決してから震える指で横の本棚に手を掛ける。
それからラノベを取り出す。
それは.....ラブコメのライトノベルだ。
50万部売れているヒット作。
すると凪宮さんは、それ?、と聞いてくる。
「う、うん。面白いライトノベル.....かな」
「ふむふむ。.....じゃあ読んでみよう」
「え!?今から!?つ、つまらなくない?俺の趣味って.....」
「君が好きなら私も好きになる」
「えぇ.....」
そして平然と俺のベッドに腰掛けてから読み始める凪宮さん。
それから俺もドキドキしつつ見守っていて。
5分が経過して、あ。お菓子持ってこよう、と思いながら俺はふと立ち上がり台所に向かってから帰って来ると。
パシンと本を閉じた凪宮さんに丁度当たった。
「面白い!」
「え!?」
「貸してくれる?これ。家で読むから」
「えぇ!!!!?」
「何?嫌なの?」
「い、嫌じゃないけど.....?でもこれは多少エッチだから.....?」
面白ければ良いの。
ヨシ、と言いながら俺に指でVサインをしてから。
そのまま屈託ない笑みを浮かべる凪宮さん。
それから俺の手元にあるお菓子を見てから目を輝かせて、あ。お菓子だ。わーい!お菓子!、と言いながら一つ摘んでモグモグと食べ始める。
小動物の様だった。
む、胸元が見えそうな感じでしゃがんだ。
これ保つかな.....俺。
俺自身が.....?
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