第3話 家にて

「.....」


「妹さんが居たの?リューキ」


俺の家に着いてから玄関を開けて迎えに来た固まるマイシスター。

そして愕然と凪宮さんを見る。

そうしてから、お、お兄ちゃん?どうなっているの.....、と青ざめて震え出す。

落ち着いてくれ。

まるで神様でも見た様な顔をしている。


「初めまして。私、凪宮時雨って言います!以後ヨロ!」


「.....は、初めまして。.....私は矢島優子(やじまゆうこ)です.....え?お兄ちゃん.....彼女出来たの?」


「そ、そうだね。彼女だ、よ」


「ヘァ!?」


変な声を出してからそのまま目を丸くする優子。

それから俺を見てくる優子。

そして何故か涙目になっていく。


何で.....?、と思いながら優子を見ていると。

優子可愛いね!リューキ!、と言いながら優子を抱き締めた凪宮さん。

胸に埋まる優子。


俺はその姿に少しだけ羨ましいと思ってしまった。

イカンいかんぞ。

キモいぞ俺.....。


「.....お兄ちゃん。嬉しい。.....お兄ちゃんの事、誰も貰ってくれないって思っていたから.....」


「あ.....そういう意味で.....ね。優子」


「え?私が貰う前提?何だか恥ずいな」


「そんなに恥ずかしがると俺も恥ずかしいよ」


「まあでもリューキとは永遠を共にするかもしれないしね」


なほ!?深すぎる!、と俺は考えながらボッと赤面する。

すると優子は、あ。すいません。引き留めてすいません。是非是非上がって下さい、と優子はニコッとする。

眼鏡の奥の顔は本当に嬉しそうな顔だった。

俺は頬を掻いてから優子を見ていると。


「リューキ」


「.....な、何?」


「私、来て良かった。君の家。.....楽しそう」


「そ、そう?.....よ、良かったけど.....」


「うん。.....有難うね。今日は招いてくれて」


正直.....俺は凪宮さんを誤解していた様な気がする。

何故なら凪宮さんはこんなにも真面目だ。

他人の家だからこそかもしれないけど。

靴も揃えて頭を下げる。

つまりこれ程、真面目な人は俺なんかには勿体無い感じがする。


「お兄ちゃん。お茶で良い?.....あ。それとも.....一緒のストローとか?」


「止めて.....それは止めよう。優子。ノリノリは良くない」


「え?私は別に構わないよ?だってカレピーだしね」


「へぇ!?」


「何?間接キスは.....嫌い?」


「.....」


この子マジか。

俺は思いながら煩悩が浮かんだが。

振り払いながら、でも今日は止めておこう、と提案する。

すると、そっか、と凪宮さんは納得して俺の指示に従った。

そして俺は凪宮さんを見る。


「.....凪宮さんは.....その」


「.....何?」


「彼氏.....居たの?」


「まあ.....居たけど。.....でも正直君みたいな人は本当に初めてだよ」


「.....」


麦茶を飲みながらニコッとする凪宮さん。

何だかモヤモヤする。

その元彼はきっと.....性格が性悪だったのだろう。


こんな良い子を切り捨てるなんて。

そんな事も思ったけど。

もっとモヤモヤするのは、こんな俺で良いのだろうか、と思った事だ。


「お兄ちゃん。私は洗濯物を取り込んでくるから.....うふふ」


「.....な、何かな」


「ごゆっくり」


「.....え.....いや!?」


そして俺と凪宮さんが取り残される。

何という事だろうか。

俺と凪宮さんだけになってしまった。

これは困ったものだな.....。

と思っていると。


「リューキ」


「.....な、何?」


「あの時、何で私を救ってくれたの?」


「.....!.....あ.....」


「.....私なんか救ってメリット無いよね。なのに.....」


それはメリットとかそんな問題じゃない。

俺は考えながら凪宮さんを見る。

凪宮さんはジッと俺を真剣な顔で見てきていた。

こ、これは.....。

可愛いんだけど.....。


「俺は困っている人を放って置けない」


「.....!」


「.....君がどんな人であっても.....君はクラスメイトだったから。.....だ、だから救ったんだ」


「.....」


そ、そう、と言いながら赤くなって俯く凪宮さん。

そして直ぐに笑顔になった。

はにかむ様な笑顔に。

俺はその姿を見ながら!と浮かべる。

リューキ。私。貴方と付き合って良かったかも、とニコッとする。


「.....まだ謎が多いけど.....でも君が私を好きになったのは事実。.....だから私は.....君に尽くそうと思う。.....まだ.....君自身には興味しか湧いてないけど.....ゴメンね。でも絶対に好きになろうって思う」


「な、凪宮さん.....」


そして俺の手に手を乗せてくる。

それから笑みをまた浮かべた。

その顔はマジに可愛い。

この子.....天使だな、と思う様な顔だった。

そうしてから俺はむず痒さを感じる。


「そういえば.....お父さんとお母さんは?」


「.....ああ。.....えっとね。俺と優子と父親と。.....父子家庭なんだよ。この家」


「.....え.....あ。御免なさい.....」


「気にしないで。俺が紹介しなかったのが悪いからね」


申し訳ない感じを見せてから俺を見る凪宮さん。

俺はその姿を見ながら、本当にギャルなのが不思議だな、と思ってしまう。

こんなに良い子はなかなか居ないだろう。

なのに何故切り捨てられた?

おかしいのだが。

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