【掌編】僕のともだち~777文字で綴る物語②~

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

大事な大事な可愛い友達

 僕には友達がいる。

 誰にも代えがたい唯一つの存在で無口な友達が……。


「おはよう。ビスマルク」


 朝目覚めると必ず一緒に寝ている友達、ビスマルクに挨拶をするんだ。

 ビスマルクはキレイな目でただジッと僕を見つめてニコリと微笑んでいる、いつだって。

 だから僕は、可愛い可愛いビスマルクのフワフワの頭を撫でるんだ。


「ビスマルクはいつだって僕の傍にいてくれるね。ずっと一緒だよ」


 大事なビスマルクに消えてほしくない僕はそう話しかける。

 そしてをギュッと抱き締めると、悪夢を見ても怖い気持ちなんてどこかへと消えていって大丈夫になるんだ。


「マティアス~! 起きた?」


 部屋のドアがコンコンコンとノックされ、中へとママが入ってきた。


「うん! おはよう、ママ!」


 僕はビスマルクを抱っこし、ママのもとへと向かう。


「おはよう、マティ。おはよう、ビスマルク」


 そう言ってママは僕のオデコと、必ずビスマルクのオデコにもキスをしてくれる。


「ふふっ。今日も食卓に一緒に行くのかしら?」


「もちろんだよ! だってビスマルクを一人にしちゃったら寂しがっちゃうんだもの」


 ママは何故かちょっと驚いたような顔をして「そうね」と優しく笑いかけてきた。

 ママに連れられてダイニングに向かうとパパがコーヒーを飲みながら待っていた。


「おはよう、パパ」


「おはよう、マティ。今日も猫のぬいぐるみと一緒なんだね」


「違うよ、パパ。この子はビスマルクだよ」


「そ、そうだね。ビスマルクも、おはよう」


 そうして朝食を済ませるとパパはお仕事へと行き、ママはお掃除とか始めちゃった。

 また僕はビスマルクと二人だけ。

 外は危ないからダメってママに言われているからオモチャで遊んでいたけど……僕は次第に寂しくなってきちゃった。

 ママはまだ忙しそうだな。

 泣いていると不思議なことに腕の中のビスマルクが動き出し、まるで僕を慰めるかのように鳴き声が……。


「ニャ~ン」

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