守り神とぬいぐるみ

ハスノ アカツキ

守り神とぬいぐるみ

 僕は守り神だ。

 僕はここのことなら何でも知っている。

 ここで1番暖かい場所も、美味しいものが閉まってある場所も、痛いことをされるときに入れられる箱の場所も、何でも知っている。

 知っていることは場所だけじゃない。

 ここには動くやつがあと1ついる。

 家来だ。

 家来は僕に美味しいものをくれる。

 ふかふかの寝床も準備するし、僕の毛づくろいもしてくれるし、掃除もしてくれる。

 たまに遊んでほしいのかおもちゃを僕の目の前でいっぱい動かしてくれる。

 家来と遊んでやるのも守り神の仕事だ。

 家来は僕が好きで好きでたまらないのだ。

 それなのに、たまに僕から遊んでやると言っても邪魔そうにすることがある。

 本ってやつを見ているときだ。

 そういうときは何をやっても邪魔そうにする。

 まず、本に乗るとどかされる。

 めげずに僕が家来の目の前でにゃーと鳴いても、家来の腕にすりついても、本をずっと見たままだ。

 家来にも気分があるのだろう。

 僕は優しい守り神だから、そんな家来を許してやっている。

 でも本を見るのをやめたら、今度は家来から遊ぼうとしてくる。

 僕が休んでいるときもお構いなしだが、せっかく気分がかわったならと思い切り遊んでやる。

 家来はここにいる時間も短い。

 外が明るい内はいないことが多いのだ。

 でも美味しいものを持ってくることもあるので、ここにいなくても僕は許してやっている。

 僕は優しい守り神なのだ。

 家来がいない間は僕が直々に家を守っている。

 歩けるところは全部歩いて、おかしなことがないか確認するのだ。

 ある日、ここに新入りがやってきた。

 ねこのぬいぐるみというそうだ。

 僕と似たような色で、似たような大きさのやつだ。

 新入りに声をかけてやったが、新入りは挨拶1つしない。

 それどころか僕を見ようともしない。

 僕が少し肩を叩くと、反撃もせず倒れた。

 家来は僕には目もくれず、新入りを起こしてやっていた。

 守り神の僕にはやらないくせにと思ったが、僕は優しいからそれも許してやった。

 次の日、家来がここを出ていったときだった。

 ここを歩き回り方を教えてやろうと誘ってやったのに、それも無視をした。

 さすがに態度が悪過ぎる。

 優しい守り神の僕もついに怒ってしまった。

 前の日より強く叩くと、ことんと床に落ちていった。

 僕はさらに新入りの上に乗って、顔をひっかいてやった。

 それでも何もやってこないので、さらにひっかくと硬いものが出てきた。

 新入りの目の部分みたいだった。

 やり過ぎたかと思っていたら家来が帰ってきた。

 いつもより早い。

 とりあえず新入りから遠ざかって、まるで新入りが自分で身投げをしたように見せた。

 家来はぬいぐるみの様子に気付くと、一瞬きゃと言った。

 そしてぬいぐるみを拾い上げると、さらにきゃと言った。

 ぬいぐるみの目の部分を触り震える声で、カメラと呟いた。

 その後は警察というやつらがきて、いろいろ話をしていった。

 警察は新入りも持っていった。

 証拠品、というらしい。

 その後、僕と家来は棲家をかえた。

 引っ越し祝いという新入りもやってきたが、そいつも初日に顔をひっかいてやったら家来からめちゃくちゃ怒られた。


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守り神とぬいぐるみ ハスノ アカツキ @shefiroth7

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