第93話 二度目の試練③
今度飛んでくるのは黒い炎。
今までの赤い炎よりも一回り大きく速い。
「しゃおらああああ~!」
黒い炎の中に薄っすらと見える石をリリナが棒で叩き込む。
バギッと音を立てて、黒い炎が消え去って石が溶岩に落ちていく。
「二つ目も壊せる!?」
グルァアアアアア!
今度は火竜が暴れ始めた。
炎が俺じゃなくて、乱雑に放たれる。
「みんな! 気を付けて!」
飛んでくる炎の中心を目掛けて棒を振り回し始める。
赤は100ポイントで、黒は500ポイント手に入る。
四人が次々壊していくので、ポイントがどんどん貯まっていく。
あっという間に十連分を越えて百連分も貯まった。
『百連☆彡 百連☆彡』
『UR一発で引けよ~』
『フラグww』
前回は百連で引くことができたけど、通常の百連でURを引いたのは、リン以降一度もない。
こと百連に限っては
「百連引くぞ!」
急いで百連を引いて、筐体を召喚し、ハンドルに触れるとくるくる回ってガチャカプセルが大量に出てきた。
ほとんどが黒だが、中に白がちょいちょい混ざっている。
乱雑に放たれる炎の中に俺を狙った炎も混ざっていて、それらを避けながらガチャカプセルを開けて金の矢と棍棒を投げつける。
百二十個のガチャカプセルが全部出たが、R以上は出なかった。
『ちゃんとフラグ回収すんなよwww』
『ちゃんとやれ~エム氏~!』
「ちゃんとやってるわ!」
コメントのおかげで少し緊張がほぐれたが、だからといって現状がよくなるわけではない。
「このまま百連を引き続ける! みんな頑張ってくれ!」
「「「「了解~!」」」」
「終わったらちゃんと酒やるからな!」
「おっしゃあああ~! かかってこい~!」
「酒は私のものよ~!」
五人ともやる気になってくれて、どんどん石を壊していく。
百連が貯まってまた引いたけど、結局またRまでしかドロップしなかった。
それから三百連をさらに引いても赤色すら出てこなかった。
『五百連か……そろそろUR引きてぇな』
『みんな汗がやべぇよ』
『開始から十三分経過してる』
「十三分!?」
まずい。
周りの景色は本物で、下にある溶岩も本物の溶岩だ。当然暑さも本物だし、それによって大量の汗が流れるのも現実だ。
せめて飲める水や塩分が取れれたいいけど、全てリンの中にあるし、ここから遠くまで届ける方法もない。リンがいれば何とかなるかもしれないけど、リンは火竜の腹の中だ。
暴れているリンでも出てこれないってことは、前回同様何かに入れられているはずだ。
「エムくん! 私達は大丈夫よ!」
焦っていると、シホヒメが大きな声を上げた。
「だから焦らないで!」
「シホヒメ……」
満面の笑みを浮かべたシホヒメが見えた。
焦ったところで何も進まないし、俺にできるのはみんなが稼いでくれたポイントでガチャを引くだけ。
――――その時、火竜の頭が二つ取れて一つだけになった。
ギャアアアアアアア!!
爆音と共に凄まじい音圧が鳴り響く。
「み、みんなああああ!」
みんなが地面にうつ伏せになって吹き飛ばされないように地面を掴んで必死に耐える。
ガチャカプセルは全部開けてしまったし、百連分も貯まっていない。
十連を引く……? それともみんなが耐えるのを信じて待つか?
竜の咆哮は三十秒にも及んで、ようやく終わった。
「みんな大丈夫かあああ!」
「な、なんとか!」
シホヒメとマホたんは親指を立てて見せるが、しんどそうにしている。
他の三人は普段から身体能力が高いので、まだ何とかなりそうで鉄棒を振り回し始めた。
そんな中――――ものすごく大きい青い炎が放たれる。
赤炎が拳サイズ、青炎がサッカーボールサイズ、青炎はそれを遥かに超えて、一軒家くらいのサイズだ。
炎の中に入っている石も巨大で一撃で叩き壊せられないのが簡単に分かる。
その蒼い炎は俺を狙ってくるのではなく、まさかの一番左側にいるアヤに向かって飛んでいった。
いや、アヤというより、アヤが立っている岩の柱だ。
「ま、まずい!」
ちょうどギリギリ百連が貯まったので、急いで百連を引く。
こちらに石が飛んでくるが、それよりも回すことを優先する。
赤い炎が一つ俺の左腕に直撃する。
――――痛い。でもそんなことどうでもいい。
「た、頼む! UR出てくれ!」
そして出たのは――――全て白と黒のみだった。
「またハズレばかりっ!」
悔しくて地面を叩き付けた。
どうしてこんな時にハズレばかり引くんだ!?
その時、蒼い炎がアヤの岩の柱に直撃する――――直前。アヤがその場から全力で空高く跳び上がった。
ここまでは届かないけど、蒼い炎が及ばないくらいの高さに跳んでいる。
その間に巻き込まれそうな炎は鉄棒で叩き落とす。
元々身体能力が高いわけではないけど、兎耳のおかげで上昇した身体能力のおかげだ。
蒼い炎がぶつかった岩の柱は壊れることはなく、ぐらぐらするだけで、蒼い炎はその場で壊れて溶岩の中に落ちていった。
少なくともあの岩の柱に残っていたら、衝撃や振動によってその場から落ちてしまいそうだ。
蒼い炎は一回で百連が引けるようになったので、急いで百連を引いた。
――――が、百十連目に出たカプセルは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます